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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編『ステイリィ英雄譚』
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心臓も腰も、お大事に。

「ウェイルよ。まず最初に確認させてくれ。お前達はフェルタリアについて、どこまで知っている?」

「俺が覚えているのは、幼い頃のほんのわずかな記憶――音の無くなった都市の光景。知っていることは『不完全』に滅ぼされたということ。それだけだ」

「それと、三種の神器の一つがそこにあるということもね」

「……なるほど。確かテメレイアといったな。君は三種の神器について、どこまで知っている?」

「大抵のことは知っていると言っておきます。名前はそれぞれ『創世楽器アテナ』、『心破剣ケルキューレ』、そして『異次元反響砲フェルタクス』。外見や能力も調べています」

「かなり詳しく知っているということだな」

「ええ。それに『アテナ』は僕がコントロールしていますから」

「なんだとっ!? 三種の神器をコントロールしているだと!?」


 シュラディンは声を裏返して叫んでいた。

 三種の神器とは、とても人間の手に負えるような代物ではない。

 それを実体験から知っているシュラディンだからこそ、テメレイアの返答に心底驚いていた。


「冗談……ではないんだな?」

「本当の事だ。師匠はアルクエティアマインで起きた事件を知っているか?」

「あ、ああ。教会戦争中にデイルーラ社の戦艦が暴走したって奴だな」

「俺達はあの事件の当事者なんだ。あれはこの『アテナ』を巡って起きた事件でもあるんだ」

「なんと……!! お前さんはまた巻き込まれたのか……!? 不憫な奴だ……」

「せめて不運と言ってくれ!」

「まあ色々と事情がありましてね。あの事件の後、『アテナ』のコントロールはプロ鑑定士協会が預かることになったのですけど、結局僕以外の誰も扱うことは出来なかったんです。ですのでそのまま僕が預かることになったわけなんです」

「な、なるほど……。しかし三種の神器の制御とな……。ウェイルよ。実はこのテメレイアという男のことについて、噂程度には聞いていたのだ。史上稀に見る天才鑑定士が現れたと。だがまさか三種の神器を扱えるほどの実力だったとは思わなんだ……。驚いて心臓が止まるかと思ったぞ」

「驚くのはそれだけじゃないぞ。今の師匠の台詞には、非常に大きな間違いがある」

「……間違い? 何の話だ?」

「こいつは女だ」

「……へ?」


 こんなに間抜けな顔をしているシュラディンを、ウェイルは弟子入りしてから初めて見た。


「……ウェイル。お前はこの老いぼれをからかっておるのか? 止めてくれ。言っただろ、心臓が止まりそうだったと。師匠を驚かせて殺す気か? ……冗談だよな?」

「ウェイルのお師匠様。冗談ではありません。僕改め、私は女です。証拠をお見せしましょうか? ほら、ウェイル! 服を脱ぐのを手伝って」

「レイアさん! 変な冗談は禁止!!」


 妙に色っぽく服に手をかけたテメレイアに、フレスが抱きつく。


「……確かに男にしては艶やかで美しい顔立ちだとは思ったが……。なるほど、女だったのか。婚約どうこうというのは冗談ではなかったのだな」

「はい! ウェイル共々、末永くよろしくお願いします!」

「いや、そこについては冗談だ」

「そうだよ! 冗談だよ! レイアさん、調子乗り過ぎだよ!」

「しっかし驚いた……」


 ――驚くのも無理はない。

 プロ鑑定士協会に属する鑑定士の大半は、テメレイアの正体は中性的な顔立ちのイケメン鑑定士だと思っているはずだ。

 あまりにも可憐な顔だということで、一部の特殊な趣味の鑑定士から隠れた人気を誇っていたくらいだ。


「驚きすぎて腰が抜けそうだぞ。ウェイルよ、次はお前も女だった、なんてことは言わんよな?」

「馬鹿言うな。何年一緒に暮らしたと思ってんだよ……。隠し通せるわけがないだろう。話を戻してくれ」

「そうしよう」


 脱線した話を無理やり元の路線に戻す。

 テメレイアは「ちぇっ」と、可愛らしくこちらを見つめてウィンクしてきたが、軽くスルーしてやる。


「驚かせついでに言うと、俺達はケルキューレについても知っているし、実際に見たこともある。だから知らないのはフェルタクスだけなんだ。師匠は何か知っていないか?」

「無論知っている。だからこそお前はワシを呼んだのだろう。フェルタクスについて語るには、やはりフェルタリアのことを話さねばならない。フェルタリアの最後。全ての結末をな」


 シュラディンの目は真っ直ぐにウェイルと、そしてフレスに向けられた。


「二十年前。ライラという少女が死んだ日、フェルタリアは滅んだ」


 そしてシュラディンはゆっくりと語り始めた。


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