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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編『ステイリィ英雄譚』
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命に代えても。

「ねぇ、ウェイル。この封筒に何が入っているか判るかい?」

「『インペリアル手稿』の解読メモだな?」

「正解。流石だね」

「え!? あのインペリアル手稿を解読したの!?!?」


 しれっと二人は流したが、これにはアムステリアやフロリア、あのエリクまでもが口をあんぐりとさせていた。


「この娘、一体何者なの!?」

「想像を遥かに超える天才がここにいるよ!?」

「嘘でしょ……?」


 本人を目の前にして、そんな感想を言いたくなる気持ちはよく判る。

 なにせアレクアテナ大陸最大の謎とされる代物が、こんなにあっさり解読されているのだ。

 ウェイルだって最初聞いた時は驚いたものだ。

 そんな皆の驚く反応など一切気にせず、テメレイアは続ける。


「セルクはインペリアルに全てを託すと最後に書いている。だからウェイル達がエリクさんを連れに行っている最中は、このメモとブログを照らし合わせていたんだ。そうしたら一つ判ったことがある」

「……何が判ったんだ?」

「……これはね、正直僕も解読していてショックだったんだけどね……。信じられなかったけど、エリクさんの証言を聞いて理解したよ。思えば『不完全』はこのことを知っていたんだね。彼らの解読力も凄まじいものがあるよ」

「レイア、もったいぶらずに早く言ってくれ」

「判った。フレスちゃん、『セルク・ブログ』にはこうあったね。神たる龍を糧にして、と」

「……うん」

「この意味わかるかい?」

「……なんとなく判る気がするよ」


 ――糧。


 以前これを読んだ時も妙に気になった一文字だ。


「インペリアル手稿にはこうあった。フェルタクスの操作にはカラーコインと、そして龍が必要不可欠だと。龍の持つ無限の生命力を、フェルタクスに用いた時、フェルタクスは初めて真の姿を現すと。そしてこうもあった。フェルタクスを完全に制御するためには、龍を――永遠の眠りにつかせる必要があると」

「えい、えん……?」


 ウェイルは、その言葉の示す意味を、一瞬で理解する。


「つまりそれって……」

「判らない。これだけではね」

「だがもっとも判りやすく表現するなら――死ってことだろう?」

「判らない。直接的な表現ではないから。もしかしたらとても長い封印ということかも知れない。無論、永遠というのだから、数年、数十年どころの騒ぎではないと考えられる」

「……待てよ、『不完全』は龍を欲していたよな……。それにエリク、お前は噂で龍を集めるのは何かを制御する為と、そう聞いたんだな……?」

「……ええ、そうね」


 すでにこの場の皆は予想できている。

 どうして『不完全』が龍を集めていたのかを。


「『不完全』は、龍の魔力を使ってフェルタクスを制御するつもりだったんだ……!! ――龍を犠牲にしてでも……!!」 


 ――龍を犠牲に。それはすなわちフレスを犠牲にするということ。

 チラリとフレスの方を見る。

 ほんの少しではあるが、フレスの顔には不安の色が差していた。

 フレスを犠牲になんて、絶対にさせない。


「『異端児』はフェルタクスを操るつもりなんだな、フロリア!?」

「わ、わからないよ! イドゥは何も教えてくれなかったんだからさ!」

「だが、『異端児』とかいう連中がケルキューレを手に入れたということは、つまりそういうことなのだろうさ。……となると、そろそろ僕も危ないのかな……!!」


 テメレイアは今『アテナ』を操る鍵となる神器を持っている。

 もしフェルタクスの起動に『アテナ』が必要であるならば、テメレイアも非常に危険な状況にある。


「ははは……、変だな、命を狙われることは初めてじゃないのに、今回ばかりは寒気がするよ……」


 今回の敵は、あまりにも得体の知れない連中だ。

 いくらテメレイアが、これまでにも危険な状況を経験してきたとはいえ、決して恐怖を超越しているわけではない。

 全てに気付き、命を狙われていると自覚した時、彼女の身体は少し震えていた。


「大丈夫じゃ。レイアはわらわが守る」


 そんなテメレイアの身体を、ミルが後ろからギュッと抱いた。


「わらわはレイアに守ってもらった。次はわらわが守る番じゃ。命に代えても、必ず守り通す」

「…………」


 ――命に代えても。


 その一文に、妙な不安を覚えたテメレイアは、震えは止まったものの、素直に首を縦に振ることが出来なかった。


 ――そんな時。


 少し乱暴なノックがしたかと思うと、これまた乱暴に扉が開かれた。


「おい、ウェイル、いるか?」

「ウェイルにぃ! フレス! 例のブツ持ってきたよーーーー!! ……あれ? なんだか人がたくさんいる……?」


 緊張感の張り詰めた部屋に、ギルパーニャの呑気な声が響き渡ったのだった。



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