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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編『ステイリィ英雄譚』
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事情聴取にはあれがつきもの


 ――次の日。


 大監獄のテロ事件について、ウェイル達は治安局から事情聴取を受けていた。

 事情聴取は、当初ウェイルの知らない担当が行う予定であったのだが――


「――ウェイルさんの事情聴取!? そんなの私がやるに決まってるだろ!? フフフフフフ……!! 私の欲しい情報を根掘り葉掘り聞き出してやるのだ……!! ハァハァ……!!」


 ――目は血走り、鼻息を荒くしたステイリィが、無理やり自分を担当に変えたらしい。


「さあ、ダーリン! もう観念して私へ愛の言葉を吐くのだ! 故郷のおっかさんもそれを望んでいる! さぁ!」

「俺の故郷は滅んだし、母の記憶もない」

「なんてこと!? 母の愛に飢えてるのね!? ステイリィお母さんがウェイルちゃんを癒してあげまちゅよ?」

「俺の方が年上だ。それと喋り方が気持ち悪い」

「……ちらっ」

「無い胸をちらつかせてどうする。色気の欠片もないな」

「どうだ? このかつ丼を食って全部喋ってしまえ――」

「――てい!!」

「――ふぎゅ!?」

「容赦ないな……」


 アホな尋問ばかりするステイリィの顔面に、ビャクヤの拳がぶち込まれた。

 もはやビャクヤは、ステイリィに一切遠慮する気はないらしい。


「……あ、あの、ビャクヤさん? 殴ることはないでしょうよ……? しかも顔面にグーだなんて……。女の子の顔は大切なのに……。痛い……」

「ステイリィ上官、真面目にやって下さい。それと()()()って一体何のことですか?」

「さあ? でも事情聴取するときは、これを言わなければいけない気がした」

「はぁ……、そうですか」


 ツッコミを入れるのも面倒なやり取りである。


「ステイリィ、さっさと事情聴取を進めろ。あまりお前の茶番に付き合う時間はないんだ」

「茶番じゃないのに! 本気なのに!」

「だったら尚更たちが悪いわ! さっさと進めろ!!」

「へいへーい。それでウェイルさん達はどうして犯人が『不完全』の残党だと知っていたんですか?」


 事情聴取が始まって三十分。

 ようやくまともな質問タイムが始まった。


「少し前に運河都市ラインレピアで、大規模な運河氾濫があったろ?」

「えっと、確か集中祝福週間中の事件ですね」

「うう……仕事で遊びに行けなかったのだ……絶対に行きたかったのに……!! ……モグモグ」

「それはステイリィ上官が有給休暇を全部使い果たしていたのが悪いんです。今度からはもっと計画的に使ってください」

「ステイリィの有給休暇の話は置いておくとして、あの事件の時ラインレピアでは同時にいくつか事件が発生していた。『アレクアテナコインヒストリー』というイベントを丸ごとを潰された事件があったり、時計塔で『三種の神器』に関する事件があったりしてな。それら一連の事件は全て今回のテロリスト達が引き起こしたことだ」

「なんと……!!」

「俺は偶然ラインレピアで仕事を抱えていてな。そこで奴らのことを知ったんだ」

「ななな……!!」


 ステイリィがかつ丼を食べる手を止めて、ふるふると震えている。


「ウェイルさんはどこまで巻き込まれ体質なんですか!? 狙ってるんですか!?」

「好きで巻き込まれているんじゃねーよ! 後口に物を入れた状態で叫ぶな! 飛んでくるだろ、汚い!!」

「今回だってまた巻き込まれちゃってますし! そのせいで私は無駄に出世してしまったんですよ!? 責任とれ! 責任とって結婚し――」

「――てい!」

「――ふぎゅ!? ……ビャクヤ、だから顔面を殴ることはないでしょうよ。痛い……」

「上官、真面目にやって下さい」


 こんなやり取りばかりであるためか、事情聴取が終わるまでに四時間も費やしてしまったのだった。

 ちなみにフレスの事情聴取に掛かった時間の四倍であったという。

 先にファランクシア駅で待っていたフレスには「遅いよ」と、腹音でぐーぐー文句を言われた。


「俺のせいじゃないんだけどな……」

「モグモグ……そう言えばこれ、返却ですってさ」

「こいつが無かったせいで結構危なかったな……」


 規制に引っ掛かって没収されていた『氷龍王の牙(ベルグファング)』も無事取り戻すことが出来た。

 事情聴取も終わり、必要な情報も全て手に入れたウェイル達一行は、新たにエリクを加えて本拠地であるマリアステルへと戻ったのだった。





 ――●○●○●○――





 ウェイル達がファランクシアを去って、三時間後のこと。


「ステイリィ上官……。やっちまいましたね……」

「う、うわああああああ!? な、なんなんだ、この状況はあああああああ!?」


 ステイリィの大声が、治安局内に響き渡っていた。


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