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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編『ステイリィ英雄譚』
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やっと、気づけたよ。


「そんなことがあったんだ」

「あの時は私も若かったのさ! 毎日むちゃくちゃしてたしなぁ」

「今も殆ど同じなんじゃないの……?」


 任務中にウェイルに命を救われたエピソードを、ステイリィは懐かしげに語ってくれた。

 フレスにとって、昔のウェイルの話は貴重だ。

 ウェイルはあまり過去を話したがらないからだ。

 薄々感じていたことではあるが、フレスがこれまで共に過ごしてきたウェイルの印象と、ステイリィやアムステリア達から聞く昔のウェイルの印象は、大きく異なっている。

 フレスにとってのウェイルは、クールではあるが優しい性格だと思っている。

 でもアムステリアやステイリィ、ヤンクやルーク、そしてテメレイアの話では、昔のウェイルはもっとトゲトゲしていたように思えた。

 その点についてステイリィに尋ねてみたところ、何故か彼女はふてくされてしまった。


「へん、誰のせいでウェイルさんが変わったと思ってんだ……!」

「誰のせい……? ……あれ? もしかしてボクのせいなの?」

「……ち、違うわい!」

「図星なんだね……」

「そうだよ! フレスがウェイルさんの弟子になってから、ウェイルさんは少し変わっちゃったの! 昔のウェイルさんはとってもトゲトゲしてて、無愛想で、冷たくて、それはもう極寒だった! 私がどんなに近づいても逃げられて、しがみつけば吹っ飛ばされて、心臓まで凍り付いているんじゃないかと疑うくらいに最高だった!」

「……ステさんて変な趣味あるんだね……」


 むしろそこまでされても、諦めずアタックを続ける彼女の根性の方が恐ろしい。


「それが今や変に優しくなっちゃってさ。なんて言うかこう、昔みたいな冷たさは消えちゃったよ。うん、冬が終わり春が来たみたいに暖かくなった。……さらに好きになっちゃったよ」

「……………………」


 ステイリィはウェイルに好意を抱いている。

 そのことは百も千も承知だったが、実際に彼女の口から「好き」という単語が出てくると、フレスの心臓はドキリと跳ねた。


「ねぇ、フレス? 私にそんな事を聞いた理由ってさ。本当のところは違うんだよね?」

「……え?」

「まあ大筋は合っているだろうけどさー。……逆にどうして私がフレスにこの話をしたか、判る?」

「え、えーと、……わかんない」

「だろうね。うん、でもいいよ。教えてあげる」


 ステイリィは、ググイとフレスに顔を近づける。

 後数センチでキスしてしまいそうなほどの距離で、ステイリィは呟いた。


「――君の目が、決心した目だったから」

「決心……!!」


 バクバクと鳴り響いていた心臓が、さらに強く鼓動していく。


「自分の気持ちに気づいた。そうでしょ?」



 ボクの気持ち。


 うん。気づいたよ。


 ボクは気づくことが出来た。


 ウェイルに対する、ボクの気持ちを。


 テリアさんやレイアさん。そしてステさんを見ていって。


 フレスベルグに気づかされた、ボクの気持ちを。



「ウェイルさんのこと、何でも知りたいって思ったんだよね。その気持ち判るよ。私だって全部知りたいんだからさ」


 ススっと身を引いて、ステイリィは立ち上がる。


「うっしゃああ! 今日から貴様は、我がライバル! 敵じゃあ! ウェイルさんを賭けて勝負といこうじゃないか!」

「勝負……!?」


 ウェイルを賭けた勝負。


 ……うん、そうだね。望むところだよ!


 すでにテリアさんとは勝負を開始したし、レイアさんだって、そう思ってる。


「勝負だよ、ステさん!」

「敵は私だけじゃないけどな! 全く、手強い相手ばかりだぜ! ナハハハハハ!」

「にゃははははははは!!」


 腰に手を当て高笑いするステイリィに、フレスもつられて笑ってしまっていた。


(やれやれ、私がいること、すっかり忘れられていますね……)


 二人のラブコメ展開についていけなかったビャクヤは、柱の陰に隠れて大きく嘆息したのだった。


「お待たせ。師匠に電信を送っておいた。ついでにテメレイアにもな」


 数分後、電信を打ち終えたウェイルが帰ってくる。


「あ、ウェイル、お帰りー」

「お帰りなさい、ダーリン!」

「誰がダーリンだ、誰が。……あれ?」


 ――妙だ。

 いつものステイリィの冗談(と信じたい)は置いておいて、その冗談に毎回反応していたフレスが、今回は何故かニコニコと受け流している。

 それになんだか二人の仲が近い。

 これほど仲が良かったという記憶は皆無であるのに。


「そうだ、ステイリィさん、今度テリアさんやレイアさんと集まって、一度じっくりお話してみない?」

「そだね。そろそろ誰が正妻にふさわしいか、はっきりさせたいところだし!」

「へへん、負けないもんね!」

「こっちこそ!」

「……なんで急に仲良くなってんだ……?」


 さっきまでいがみ合っていた二人が、どうしてか今は肩を組むまで仲良くなっている。


「一体何があったんだ……」


 妙だ。妙すぎる。

 変に仲の良い二人を、半ば唖然とした顔で見ているウェイルの元へ、そそくさとビャクヤが近寄った。

 そして耳元で一言。


「――天然ジゴロ」

「また!?」


 そのセリフ、本日二回目であった。


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