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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編『ステイリィ英雄譚』
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超エリート治安局員『ネクスト』


 ――ステイリィが心の中で助けを求める咆哮をした時。

 バタンと勢いよく扉が開かれたかと思うと、妙に仰々しいローブを羽織った三人の局員が、ズンズンと部屋に乗り込んできた。


 内訳は、男が二人に、女が一人。

 年齢もステイリィより少しだけ上のような、若い局員達であった。


「その決定、少しお待ちいただきたい!」


 この三人の着ているローブに、ステイリィは少しだけ見覚えがあった。

 無論、その印象は良くない方であるが。


「レイリゴア殿、いくら貴殿のご提案とはいえ、事が性急すぎます。何故彼女なのでしょうか」

「誰だね、君達は」


 しゃしゃり出たのは男二人のうちのイケメンな方。

 年齢は二十代後半だろうか。

 茶色い髪を伸ばして後ろで結んだ、意識の高そうなインテリ風の男である。


「まずは突然の乱入、お許しいただきたい。ですがこれは我々の将来にも関わる話」


 インテリ風の男は、恭しくお辞儀したのち、大幹部連中を見渡した。


「皆さま、まずは自己紹介をさせて頂きます。私の名はラクサールと申します。隣の彼はネイカム、彼女の名はアルセット。今しがたレイリゴア殿のおっしゃった十六人会議参加への条件であれば、我々も該当するかと存じます」

「……そうか。君たちは()()()か」

「その通りでございます。我々は十六人会議候補生。候補生である我々を差し置いて、彼女の様なポッと出の田舎者を優先される理由がどこにあるというのです」


 突如現れた三人組。初対面だというのに、思いっきりステイリィをバカにしてきた。


(ムカつく奴ら……でもあのローブって超エリート専用のやつだよね)


 その三人組は、治安局に在籍する局員のエリート中のエリート。

 最初から『十六人会議候補生』として治安局に採用された、学歴・経歴・家柄・表彰数、ついでに容姿も端麗という、何もかも全てが最高クラスという超エリート局員である。

 彼らは次世代の治安局を担う者という意味で『ネクスト』と呼ばれている。


「レイリゴア殿が仰ったのは、若さと功績。それは我々も持っています」


(――ラクサールかぁ。確かにイケメンだけど、ウェイルさんほどじゃないな、うん)


 バカにされ、邪魔をされている真っ最中だというのに、ステイリィの脳内では顔値踏みが行われていた。


「その通り。彼女程度の功績であれば、我々だって負けてはいません」


 次に出てきたのはスポーツ刈りの男。

 筋肉隆々なのが、その盛り上がった胸板から分かるほどの、さわやか系マッスル。

 彼がネイカムだろうか。


(――ケッ、筋肉が多すぎるのも問題なんだよ! ウェイルさんくらいのスマートさがいいんじゃい!!)


「私も、この子よりも評価が低いとされるのは納得いきません。私達は若さと功績に加えて、学歴もございます。何せ我ら三人は揃ってヴェクトルビア魔法律大学の主席卒業です。レイリゴア殿の後輩でもございます。どうか今一度、我々の事を含めてご検討下さいまし」


 最後は黒髪ツインテールの女、アルセット。

 法律書を抱いて、メガネポジションを直しながら、ステイリィを睨んでくる。


(何じゃこのブスは!! 私よりほんのちょっとだけ身長と胸がデカいからって調子に乗りやがって!! いつか殺す!!)


 ――という勝手な感想を脳内で叫ぶステイリィを尻目に、三人はレイリゴアに詰め寄っていく。


「「「どうか、再検討をお願いいたします」」」

「う、うむ……」


 三人の迫力に、レイリゴアの言葉が詰まる。

 事実、彼らは超エリートであるし、いつかこの会議の後継者として『ネクスト』に選ばれている存在なのだ。

 確かに彼らの言い分はもっともであると、レイリゴアも思ったようだ。


「そうだな、確かに君らの事を考えれば、この判断は早計かも知れん」


(え!? 出世取り消し!? や、や、やったあああああああああああああッ!!)


(この状況で喜べるのは上官だけですよ……)


 歓喜で破顔するステイリィ以外、しばし会議は沈黙していたが、幹部の一人が唐突に声を上げた。


「競わせるのがよろしいのでは?」

「……競わせる?」

「ええ、そうです。彼ら三人は非常に優秀で、誰が十六人会議に参加してもおかしくはない。無論、ステイリィ氏もね。ならば競わせましょう。この四人の中で、誰が十六人会議に相応しいのかを」

「……なるほど……」

「それはいいアイデアかも知れませんな」

「どの道全員はなれないのですし、そうしましょう」


 いくら『ネクスト』の三人が詰め寄ったところで、十六人会議に入ることが出来るのは、現状たったの一名。

 例えそれがステイリィでなかったとしても、この三人はこれから争わねばならないわけだ。

 つまり、元々この三人は戦争の火種を抱えていたことになる。


「そうですな。丁度良い機会ですし、そうしましょうか」


(……え? 何? もしかして出世する機会、出来ちゃった……?)


 意見はまとまったと言わんばかりに、レイリゴアが立ち上がり、三人の前に立つ。


「ネクストの三人、そしてステイリィ氏。この四人を十六人会議のメンバー候補とすることに異論のある方はおりますかな?」


 誰も声を上げる者は居ない。


「君らもそれで良いかな?」

「ええ、もちろん。我々三人は、正々堂々選んでいただけるよう尽力いたします」

「ステイリィ氏はどうかね?」

「え、えーと……」


 断りたいのは山々ではあったが、周囲の視線がもう首を縦に振ることを強制している。


「……了解いたしました」

「うむ。では満場一致ということでよろしいかな?」


 幹部達は皆頷いている。


(やっちゃった! これはもう……!!)


「ネクストの三人、並びに――」


(私出世しちゃうーーーーーー!?!?)


 ――そして前話の冒頭に繋がっていたわけだ。


「――ステイリィ・ルーガル支部長を――『十六人会議』のメンバー候補に加えることとする!!」


 レイリゴアの荘厳な一言によって、周囲から賛成の拍手が巻き起こったのだった。


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