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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編『ステイリィ英雄譚』
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いざ、司法都市ファランクシアへ!

「というかフロリア、お前本当に何も知らないのか?」

「知らないよー。ウェイルだって知っているでしょ? 私はずっとアレス様に仕えていたんだからさぁ」

「仕えてた? 潜入していたの間違いだろ」

「いやいや、ちゃんと仕えていましたとも。最後に裏切る予定だっただけ!」

「さらっと酷いこと言ってるよ、この人……」


 フレスの目はフロリアに対する憐みの目である。


「正直な話さ、『異端児』が『不完全』を潰した事件に私は関わってないし、ニーちゃんとうだうだ遊んでいる間に組織が大変なことになっていたって感じでさ。未だに組織が無くなったっていう実感が沸かないもん。皆、死んじゃったのかなぁ?」


 フロリアは少しだけ特殊な立ち位置にいることを、ウェイルもよく理解していた。

 こいつはヴェクトルビア買収事件の時もアレスの傍にいたし、クルパーカー戦争後、一度も組織に帰っていないことを確認している。

 フロリアの供述はあながち全部が嘘ではない。


「『不完全』に生き残りはいないの?」

「さあ? いないんじゃないの? イドゥ達が手を抜くとは思わないしね」

「生き残りがいれば話を聞けるのになぁ……」


 そうフレスが漏らしたのを聞いて、ウェイルはピンときた。


「……そうだ、聞けばいいんだ」

「ウェイル?」


 自分の呟きが拾われたことにキョトンとするフレス。

 事情を知るウェイルとアムステリアだけが、互いに視線を交差させた。


「アムステリア、エリクの奴はまだ生きているのか?」

「生きているわよ。プロ鑑定士協会はエリクと司法取引を何度かしていたみたいだし。監獄の中にいるのは違いないけどね」


 ウェイルは『不完全』が龍を集めているという情報を、エリクという女から聞いたのだ。

 であれば当然エリクは、龍を集めている理由を知っているはず。

 それがこの案件の真相を暴くための、重要な鍵となるはずだ。


「ウェイル、もしかしてそのエリクって人に、会いに行くの?」

「ああ、そうしようと思う。『異端児』の目的を知るのにも、それが一番早いだろうからな」


 ここで数少ない情報からあれこれ推理するよりも、答えを知っていそうな人から直接話を聞いた方が、解決は早いに決まっている。

 その情報は、もしかすれば『セルク・ブログ』の意図するところを読み解くに必要なパーツとなるかも知れない。

 ならば善は急げ、だ。


「レイア、すまないが引き続き鑑定を任せていいか? 俺達は今言ったようにエリクという女に会ってくる。カラーコインのレプリカや『セルク・ラグナロク』のレプリカも、全てこの部屋に置いていく。情報を手に入れたらすぐに電信で伝える。頼めるか?」

「ああ、任せてくれ。少し一人で鑑定してみるさ。僕らはここに残るよ」

「すまないな。面倒な役目を押し付けて」

「気にすることはないさ。君の為なら何だってするよ。それに折角のウェイルの部屋なんだよ? むしろ外に出るのは勿体無いというものさ。のんびりと鑑定させてもらうことにするよ」

「……俺の枕を抱きながら言うと少し怖いぞ……」

「ちょっとぐらい良いでしょ? ああ、良い臭い。濃いウェイルの臭いだ」

「わらわ、今ちょっとレイアに引いておるのじゃ……」


 感情を隠さなくてよくなったということで、最近テメレイアからの露骨なアタックが多いのだが、たまに度を超えたセリフを平然と言ってくるものだから、背筋が冷たくなる時がある。

 隣を見ると、ミルも苦笑を通り越してドン引きしていた。


「ま、まあそっちも何か判ったら連絡くれ。定期的に支部の方へは寄るから」

「了解。う~ん、しかしウェイルのベッドに寝転べるだなんて、僕はなんて幸せ者なんだろうね。いくら大金を積んでも、この快楽は買えないね」


 ……聞かなかったことにしよう。


「フレス、旅の支度だ。アムステリアもついて来てくれ」

「ええ、判ったわ。出発はこれから一時間後。集合は駅でいいわね? イルアリルマにも連絡しておくわ」

「ああ、よろしく頼む」


 颯爽と出ていくアムステリアを見送って、ウェイルもすぐにバッグに旅行グッズを詰め始めた。


「ねーねー、ウェイル。ボク、次の行先がどこか判らないんだけど。まだボクが行ったことない都市?」

「そうだ。次の行先は――司法都市『ファランクシア』だ」


 ウェイル達の旅の目的地が決まった。

 それは運命のいたずらだろうか。

 ウェイル達がファランクシアを訪れたその夜に、ファランクシアでのテロ事件が発生するのであった。


 ――巻き込まれ体質と言うのは伊達ではない。





 ――●○●○●○――





「ううう、レイアが壊れたのじゃ……」


 後は任せろと豪語したテメレイアは、ウェイル達を見送った後。


「うっほー、ウェイルのベッド最高―っ!! ああ、なんていい匂いなんだ……!!」


 なんてしばらく鑑定を投げ出して、ゴロゴロとベッドに転がり悶えていたのであった。

   

「レイアが気持ち悪いのじゃあああああああああっ!!」


 ミルの雄叫びはサグマールの部屋まで届くレベルだったという。

 

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