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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十四章 司法都市ファランクシア編『ステイリィ英雄譚』
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『不完全』の目的

 ――それはアムステリアの呟きから始まった。


「そう言えば『不完全』も龍を集めようとしていたわね……。もしかしたら何か関係があるのかも」


 皆の意識が『セルク・ブログ』に集まっていた中、アムステリアの呟きは実によく響いた。


「『不完全』……?」


 唐突に出てきた、ウェイルにとっては忌むべきキーワード。


「奴らが、龍を……?」

「ええ。ウェイル、貴方自身も奴らの目的を直接聞いたはずよ? あの地下オークションでね」

「……そういえば……」


 思い浮かぶはマリアステルの地下オークション。

 ウェイルとイレイズの因縁の場所でもある。


「サグマールの秘書をしていた女から聞いたな」


 サグマールの秘書として、プロ鑑定士協会に潜りこんでいた女――エリク。

 奴は確かに、龍を集めることが目的だと高らかに宣言していた。

 それにエリクは、サラーの正体を知っていた。

 つまり『不完全』は龍についての情報を十分に得ていたということだ。


「真珠胎児の事件の時から、奴らの目的は龍であるサラーだったのかもな……」

「そういえば、サラー達がまだ『不完全』に手を貸していた頃って、『不完全』はどのくらいボク達()の存在を把握していたのかな?」


 フレスが指を折りながら、龍の存在を数えていく。


「ボクとサラーと、ミルとニーズヘッグと、そしてティア。ボクはウェイルとずっといたし、ミルも違うだろうけどさ。他の三体は一時期『不完全』にいたんだよね? どうなの?」


 フレスがニーズヘッグの方を向くと、頷き返してきた。


「サラーと、私、ティアも……。ティアの封印されていた絵は、私が手に入れたから……。でも解放されたティアとは、この前フロリアと一緒の時、久しぶりに再会したの」

「ティアの絵だと……?」

「…………」

「どこで手に入れたんだ?」

「…………」


 あまり思い出したくないことなのか、絵のことについて、これ以上話すことはなかった。


「……まあ今絵はどうでもいい。つまりティアと再会したのは『不完全』が潰れた後の話だよな?」

「……うん……」

「なるほどな」


 つまり『不完全』は目標達成にかなり近いところにいたわけだ。


「なぁ、ウェイル。僕は龍の話について疎いから、およそ感で喋らせてもらうけどいいかな?」


 テメレイアは一度そう前置きすると、ウェイルが頷いたのを見てから喋り出した。


「結局『不完全』の目的は何だったのかという話さ。奴らが龍を集めようとしていたのは判る。でもそれが最終目的ではないよね? おそらく龍を使って何かをしようとしたというわけさ」

「そうだろうな。龍をコレクション目的で集めるというのは納得できない。裏があるのは間違いないだろうさ」

「裏がある。じゃあそれは何か。それこそがこの話題の要点だよ。そしてその要点を、今の僕達は容易に推理できる。そうだよね?」

「……『三種の神器』に関係することだな」

「しかも『三種の神器』の中の最後の一つ、フェルタクスについてのことだろうね。アテナやケルキューレは現実に現れたが、その降臨に龍は関係なかったんだろう?」


 『セルク・ブログ』には龍についての記述は多いが、実際その大半が最後の神器、フェルタクスの周辺に出てくる。

 実際にケルキューレとアテナが出現した際に、龍が必要だったかと問われれば、それは違うと断言できる。


「奴らはフェルタクスを欲していた。フェルタクスには龍の何かが必要。だからその為に龍を集めていたと、そういうことか……?」


「――それはちょっと違うかなー」


 そこまで推理が及んだ時、唐突にフロリアが口を挟んだ。


「どういうことだ?」

「実は私も詳しくは知らないんだけどさ。でも、『不完全』がフェルタクスを欲していたのかと言われると、それはどうも違う気がするんだ」

「理由は?」

「理由はと問われてもねぇ。私下っ端だったし、本当の話は教えてもらってはいないけど。ただこれだけは言えるのが、『不完全』を潰したのは、プロ鑑定士協会でも治安局でも、他の誰でもない『異端児』なんだよ。そしてその『異端児』のリーダーは、ケルキューレを手に入れた。これってつまりそういうことだよね」

「「……そうか……!!」」


 思わずテメレイアと声が重なってしまう。それくらい判りやすい例えだった。


「奴らが『不完全』を潰して独立した理由は、フェルタクスを巡って……?」


 龍を集めていた『不完全』の目的は『三種の神器』、それもフェルタクスに関わること。

 『異端児』連中も『三種の神器』を手に入れることが目的であるのならば、本来であれば組織を裏切る目的にはならない。何せ目標が同じなのだから。


 ――元々考えが合わなかった。組織という体制に、異端と呼ばれるほどの連中とは肌が合わなかった。


 奴らが組織を離れる理由はそんな幼稚な理由である可能性はある。

 だが腑に落ちるような理由を考えてみると、出てきた可能性は二つ。


「――フェルタクスを巡って、内部で分裂を起こしたか。もしくは――」

「――そのフェルタクスの運用方法について意見が割れたか、だね」


 この推理に、フロリアも否定的な顔を見せなかった。


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