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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十三章 神器都市フェルタリア過去編『ライラとフレス』
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フェルトの暴落


 日も落ちて、夜が更け、そして空が白く染まり始める頃。

 「Zzz……」というフレスの可愛い寝息と、ライラの奏でるピアノの旋律が、朝を告げる鳥の鳴き声を差し置いて、家中に響き渡っていた。

 その清々しいメロディは、一晩中起きていたシュラディンの眠気を吹き飛ばしてくれている。


「……いやはや、凄まじい集中力だ。飯にも手をつけないとは」


 作業の邪魔にならぬ机の上に、彼女の夜食を置いていたのだが、結局ライラは一つも口にすることはなかった。


「ボクが食べるー! いただきまーす!」


 もぞもぞと起きて来たフレスが、朝食にそれを頬張っている。

 冷め切った料理を処理するのはフレスの役目だそうだ。

 二人にとって、この光景もいつものことだった。


「ライラってば、一回作業を始めたら水すら飲まないんだもん。凄い集中力だよね」

「よく身体が保つことだ」

「最初にライラが言ってたじゃない? いつも通りで、限度は24時間でって。これさ、作業が一日じゃ終わらない場合は、強制的に作業を止めてくれって意味なんだ。ライラってば、自分では制御出来ないみたいでさ。ボクが無理矢理作業に割って入って、ライラを止めるんだよ。ライラ、すっごく怒るけどね」

「結構損な役回りだな」

「ライラの為だもん! ボク、何だってするよ! それにいくらライラが文句を言ったって、心の底から言ったわけじゃないの、知ってるからさ!」

「お前達は本当に良きコンビなのだな」


 彼女達は、心からの親友なのだろう。

 それは見ていて微笑ましく、そして羨ましく思えるほどに。


 それからシュラディンは、作業を続けるライラとそれを楽しそうに眺めているフレスを見て、まるで二人が娘にでもなったかのような錯覚を覚えた。

 いつの間にか口元が緩んでいるのに気づき、そんな父親のような感情を覚えた自分に苦笑しながら、そっと二人を見守ったのだった。





 ――●○●○●○――





「ライラ、すとーーっぷ!!」

「ええい、今いいところなの! 離して! フレス、邪魔!!」

「ダメだって! それ以上続けると死んじゃうよ!!」

「これが終わったら死んでもいいから!!」

「ライラが死ぬのはボクがダメなの!! えいっ!!」

「ぐえっ!?」


 ポカッという表現をすれば嘘が過ぎるほどの、結構きつめな殴打音がライラの脳天に振り下ろされ、ライラは机に屈伏した。


「い、痛いなぁ……!」

「さあさあ! とりあえずまずご飯を食べて! それから寝て! ボクが食べさせてあげるよ!!」

「わあぁ、フレス! 自分で食べるから!」

「いいからいいから!」


 ありがた迷惑だが甲斐甲斐しいフレスの世話に、ライラは文句を垂れつつも身をゆだねていた。


「お休み、ライラ。早く寝てね!」

「う、うん。明日は曲完成させるから」

「楽しみにしてるよ!」


 すぴーっとライラが可愛い寝息を立て始めて、ようやくフレスも肩の荷が下りたとばかりに彼女の隣へ横たわり、ランプの灯を消した後、一緒に眠りについたのだった。





 ――●○●○●○――





 ――深夜。


 静寂なる夜の空気を引き裂くように、フェルタリア王宮は慌ただしく事件の対応に追われていた。

 その事件とは、以前から話題になっていた貨幣:フェルトの暴落事件。

 これまでフェルトの価値は、大陸の貨幣信頼度では第二位についていた。

 ハクロア、フェルト、レギオンの順に価値があり、その次にリベルテが位置していた。

 だがこの日、ついにフェルトの貨幣価値がレギオンに追い抜かれたのだ。

 下手をすれば数日中にリベルテにすら追い越される状況にある。

 ハンダウクルクスの中央為替市場やスフィアバンクにある為替銀行からもたらされたその情報に、王を始め関係の大臣、閣僚は対応に迫られていた。


「この度の価値の下落について、皆の意見を聞きたい」


 フェルタリア王は円卓に手をついて、皆に視線を送る。

 その中にはラグリーゼ侯爵の姿もあった。

 最近は娘の件で、あまり強気な発言は控えていたラグリーゼであるが、この都市の危機に瀕してはそうも言ってはいられないと、まずラグリーゼが発言を始めた。


「現在の王宮政治の影響ではありますまい。発行貨幣総数や、発行都市債は例年の通り。住民達の納税の滞りもなく、全て円滑に行われているように思えます」


 ラグリーゼの言葉に、一同頷いた。

 事実フェルタリアの政治力は、並の都市より優れている。

 政治が傾いて経済が混乱したなんてことは、歴史上一度も無いのだ。


「では、やはり原因はあの噂でしょうな」


 あの噂と聞いて、この場にいる者全員の顔が強ばった。


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