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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十三章 神器都市フェルタリア過去編『ライラとフレス』
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届けられた歌詞

 夕食後、二人で仲良く皿洗いをしているところに、シュラディンがやってきた。


「なんだ、もう夕食は終わったのか。どうせならワシの分も残してくれたらよかったのに」

「おじさん、遅いよ! ボクがいるのに残るわけないじゃない!」

「フレス嬢ちゃんの食いっぷりも見たかったのだがな」

「それよりもおじさん、ちゃんと持ってきてくれた?」

「ああ、持ってきているぞ」


 シュラディンは石板の詩を翻訳した歌詞の入った封筒を、そっと机の上に置いた。


「ふぅ、フレス嬢ちゃん、水をくれないか? ここまで歩いてきて喉が渇いた」

「ダメだよ。封筒の近くで水なんか飲んだら、こぼしちゃうも知れないでしょ?」

「ワシは子供じゃないんだがな……」

「一応王からの配達物でしょ。大切にしなきゃ。水が欲しかったら台所で飲んで」

「はいはい」

「おじさんって、腰に敷かれるタイプかもね!」


 皿洗いを終え、濡れた手をハンカチで拭きながら、ライラとフレスは居間に戻ってきた。


「さて、早速拝見しましょうか!」

「しましょうかー!」


 封筒を開けて、中に入っていた紙を取り出し、文面を目で追っていく。


「う~む……」


 すらすらと読み進めるライラとは対照的に、フレスは最初の一枚目から動けない。

 ……何せ一枚も読むことが出来ないからである。


「うみゅう……。そういえばボク、フェルタリア語は読めないや……」


 復活して早々と言うことで、この時代の文字を読むことが出来ないフレス。


「……フレス嬢ちゃん、そういえばどうして文字は読めないのに、会話は普通に出来るのだ?」

「それはね、ボクの言葉と想いを、魔法で直接みんなの頭に伝えているからなんだよ。長い時を生きる神獣なら、みんなこの魔法を使えると思うよ!」

「なんと。初めて聞いたな、そんな魔法」

「そりゃボクだって意識して使ってるわけじゃないんだよ。自動的に発動しているんだからさ。魔法を使っているという自覚すらない神獣ばっかりだよ」

「ふむ、奥深い……。その魔法を何かの神器に応用できないものか……」


 ブツブツと妙な考察を始めたシュラディンは放っておこう。


「ねぇ、ライラ、ボクにも判るように読んでよ!」

「えー、音読するのって、結構恥ずかしいんだけど。いいけどさ」


 ライラが読み上げた、その歌詞とは――



 『時代の覇者は放たれる』


 『黄金の鍵は龍の手なり』


 『五つの円は滅びの歌に』


 『女神と剣から信仰集め』


 『創世の光が世界を洗う』


 『哭けや憂いや人の器ぞ』


 『畏れや崇めや神の器ぞ』


 『終焉は王の手によって』



「なんだか変な詩だね」

「そうかな。ボクにはこの詩、何か意味があるように思える。なんて言ったらいいのかな。普通の曲だって歌詞に意味はあるけれど、そのほとんどが人の気持ちについてなんだ。愛や友情、喜怒哀楽といった感情を言葉で表現している。でもこの詩にはそれが無い。酷く無機質な詩だ」

「え、えっと……ライラ、もっと判りやすくお願い」


 フレスには少し難しい話のようだ。


「う~ん、ボクだって上手く言えないんだけど。この曲はなんだか人工的なんだ。何か目的があって書かれた、そんな感じ。もっと深く考察すると、ボクにはこの歌詞、何かの説明書のように感じる」

「説明書……? 何かの神器の説明かなぁ?」

「それが正解だと思う」


 ライラは何度も何度も歌詞に目を通すと、少しずつ鍵盤を叩いていく。

 耳にはせていたペンを握って、一度くるりとペンを回し、スラスラと楽譜に音符を連ねていく。


「できそう?」

「多分ね。集中して一気に書き上げたいから、しばらく声を掛けないでね」

「見ているのはいい?」

「いつも通りでお願い。限度は24時間で」

「うん! 判ったよ!」


 詩を手に入れたライラは、水を得た魚以上に生き生きと目を輝かせて、作曲作業に取りかかっていた。


「は、早すぎるぞ……!? これがライラの作曲スピード!?」


 いつの間にか妙な考察から戻ってきていたシュラディン。

 ペンを手に取った後のライラの姿を見て、まず驚きのあまり呆然とし、そして彼女の姿に見惚れていた。 


「これは本物の天才だ……!」

「でしょ? ライラってば天才なんだからね!」


 ライラの作曲作業を初めて目撃したシュラディンは、その作業の早さと、試し弾きのクオリティの高さに、ずっと舌を巻いたままだった。


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