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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十三章 神器都市フェルタリア過去編『ライラとフレス』
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フェルタリア王家秘伝の神器

「シュラディンよ。この神器をどう考える?」


 ライラとフレスが帰っていった後、王はシュラディンに訊ねた。

 シュラディンは目の前の石版と、そして祭壇を見て一言。


「人の手には負えぬもの。そうとしか言えませぬ」


 この神器の正体が何であるか、シュラディン達は知らない。

 だが、この石版に書かれてある詩には、このアレクアテナ大陸の滅亡についてが書かれている。


「ここに書かれてある詩が、神器の発動に関わっているのならば、正しい手順で封印せねばならないでしょう。その為には曲の完成が必要不可欠です。曲を利用して正しく()()()()()()()なりません」


 ライラ達は気づいていなかった。

 この祭壇自体が神器であることと、これが()()()()()()()()ことを。

 神器について詳しいはずのフレスさえ、目の前の石版の詩に目を奪われ、そのことに気づけなかった。

 この神器がなんなのか、フェルタリア王とシュラディンは長い時間調べ続けていたが、その解答は未だ得ていない。

 これが稼働中なのは間違いない。

 だが流れる魔力の量は極僅かなので、待機モードか休止モードにでもなっているのだろう。


「我が王家に代々伝わりし、世界を破滅へと導く神器。これを覚醒させるも眠りにつかすのも、全てはライラの曲次第だ。この秘密は誰にも知られてはならぬ。シュラディンよ、あの二人の護衛と、この神器の調査、引き続き任せるぞ」

「畏まりました。お任せを」


 



 ――●○●○●○――





 フェルタリア王とシュラディンが出て行った後の隠し部屋にて。

 油のレールに、再び火が灯された。


「へぇ、こいつがフェルタリア王家秘伝の神器ねぇ……」


 誰もいないはずの部屋に声が響き、空間が揺らめくと、そこからメルフィナの姿が現れた。

 彼は右手にガラス製の仮面を持っていた。

 姿を隠す仮面型の神器である。


「面白い話、聞いちゃったな! もしかしたらこいつが例の神器かも。……とすると、さっきの女の子が作る曲っていうのは、こいつの鍵になる曲ってことだよね。なるほど……」


 何かに納得したのか、メルフィナは楽しげにウンウンと腕を組み頷いた後、右手の仮面を顔につける。

 その瞬間メルフィナの姿は虚空へと消え去り、そしてこの場からいなくなったのだった。





 ――●○●○●○――




 

「これ、結構面白い曲だよ」

「そなの?」

 

 王より曲を復元する依頼を受けたライラは、その日のうちにペンを片手に鍵盤を叩いていた。

 その様子を横で見守るフレス。

 こうしてライラの作曲作業を隣から見ているだけでも、フレスにとっては楽しかった。

 

「おじさんが来ないと詩が判らないから、現時点では面白いとしか言えないけどね」

「歌詞が来たらそんなに変わる?」

「そりゃ全然違うよ。この曲、石板が欠けていたせいで元の半分くらいしか残っていないんだよ。その欠けている部分の音は、歌詞から推測して埋めていかないといけない」

「歌詞が分かったら、音も分かるの?」

「ある程度の推測が出来るってだけだよ。前後の歌詞から曲調が分かることもある。歌詞と曲調が全く合わない曲なんて駄作だからね。それは王が求めている曲じゃない」

「へぇ、そうなんだ。それにしても王様、変なこと頼んでくるよねぇ。どうしてライラに頼んだのかな? コンクールの最優秀賞だからかなぁ?」


 古ぼけた石板に書かれてある、ところどころ欠けた楽譜の修復。

 フェルタリア王家にとって重要な曲だと言っていたけれど、それをこんな片田舎に住む一人の少女に任せるだなんて、普通では絶対あり得ないこと。


「多分ボクの御先祖様がゴルディアだからだと思う」

「……王様もゴルディアがどうとか言ってたよねぇ。どんな人なの?」

「ボクだって御先祖様と会ったことがあるわけじゃないからなぁ。どんな人かっていうのはよく分からないよ。でもアレクアテナ大陸史上、最も有名で尊敬を集める作曲家だって、そう聞いているよ」


 ――大音楽家ゴルディア。


 ライラは比較的簡単に紹介したが、ゴルディアの知名度はライラ達の想像を遙か超えたレベルのものである。

 音楽家として実力名声ともに彼の右に出るものはいない。

 それどころか彼の足下程度には及ぶかも知れないと評価されている音楽家さえ皆無なのである。

 範囲を広げて『芸術』全般で見ても、ゴルディアは画家の『セルク・マルセーラ』や、彫刻家の『リンネ・ネフェル』と肩を並べることの出来る音楽家だ。


「ボクがゴルディアの子孫だから、コンクールも最優秀賞もらったのかなぁ……」


 ぽつりと、そんな事を漏らすライラ。


「違うよ! ライラは、ライラだから最優秀賞をとれたんだよ! ライラの演奏は凄かったもん! ゴルディアがどうとか、全然関係ないよ!」

「うん。ありがとう、フレス」


 コンクールでライラが繰り広げた演奏は、まさしくライラしか出来ないパフォーマンスだった。

 ゴルディアの子孫だからとか、王の知り合いだからとか、そんな贔屓は一切無い。

 それは会場でライラの演奏を聴いた者皆が証明するだろう。


「まぁいいや。それより歌詞が来ないことには作業は進まないし、お腹も空いちゃったよ。そろそろご飯にしよっか」

「さんせーい!」

 


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