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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十三章 神器都市フェルタリア過去編『ライラとフレス』
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ライラの曲、完成!

 ――次の日の昼。


「か~んせいっ!」

「ライラ、おめでとう!」


 ――ライラの努力が実を結び、ついに渾身の一曲が完成した。


 手の痛みと、フレスへ心配を掛けまいとする心の葛藤との戦いの末に出来た曲だ。

 それゆえにライラ達の喜びもいつも以上だった。


「昨日までまだ半分くらいしか出来てなかったのに、一気に出来ちゃったね!」

「手の痛みがなくなって楽になったからかな。なんだか良いメロディが沢山浮かんできちゃって、一気に書き上げちゃった」


 フレスの魔力で傷を完全に治癒した後のライラは、誰もが目を見張るほどの速さで譜面に音符を描いていた。

 その鬼気迫る表情に、フレスも圧倒されたほどだ。

 曲の出来栄えは、ライラにとっても大満足のもの。

 

「早速弾いてみてよ!」

「まっかせて!」

 

 早く弾きたくてウズウズしていたのか、ライラはピアノの椅子に跳び乗った。

 

「いくよ!」

「うん!」

 

 そしてライラは、たおやかに、流れるように、優しく鍵盤を叩き始める。

 天才たる彼女から生み出された想像を絶するほどの素晴らしいメロディは、フレスだけでなく、部屋から漏れる微かな音を聞いた者すら、虜にさせるレベルのものだった。

 

「……おお……! 素晴らしい音色だな」

「あれ、おじさんだ!」

「鍵が掛かってなかったんで勝手に上がらせて貰らったぞ」

 

 右手に差し入れを抱えながら現れたのはシュラディンである。

 

「しかしライラ嬢ちゃん、……その、……大丈夫、なのか?」

 

 シュラディンの視線は、ついライラの手へ向かう。

 相当痛い筈であるのに、どうしてライラは笑顔で鍵盤を叩いているのか。

 昨日の夜のことを知らないシュラディンにとっては、目を疑う光景だった。


「フレス嬢ちゃん、ライラ嬢ちゃんは大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。ライラの手の痛みは、もうないからさ!」

「そうか。それなら良かった。…………いやいやいや、何故フレス嬢ちゃんが知っているんだ!? それに痛みはないって、どういうことだ!? 傷は相当酷い状態だったのだぞ!?」

 

 ケロッとフレスが答えたから、つい乗せられてしまったが、よく考えると意味が分からない。

 ライラの傷は、そう簡単に完治出来るような怪我ではなかった。

 それこそ一日二日で治るような代物じゃない。

 今までは痛み止めの薬で、なんとか凌いできたほどの大怪我である。

 医者は完治には何ヶ月も掛かると診断していたくらいだ。


「本当に治ったんだよ」


 いつの間にか演奏を終えて、ライラが傍へやってきていた。


「全部フレスが治してくれたんだ」

「フレス嬢ちゃんが? どうやって? 神器でも使ったのか!?」

「えーとね、ボクの力を使って!」

「……フレス嬢ちゃんの力か……。まさかそんなことが出来るとはな……」


 シュラディンはフェルタリア王より、フレスの正体を聞かされている。

 だから多少摩訶不思議な能力があったとしても驚かないが、まさかあれほど酷かった傷を癒やすことが出来る治癒能力があるとは思っても見なかった。


 想像を絶する龍の魔力。

 だが、それは諸刃の剣でもある。


「フレス嬢ちゃん。その力、むやみやたらに使わない方が良いぞ」

「え? なんで?」

「フレスの力を狙って、変なことをしてくる連中がいるかもってことでしょ」

「そういうことだ」


 ただでさえフレスが龍であることは最重要機密事項であるわけだ。

 その秘密を守るために、こうやってシュラディンが護衛兼監視をしている。

 龍とは、数多くの教会から敵視される存在だ。

 情報漏洩を防ぐことは、フレスの身の安全にも繋がるのだ。


「ねぇ、フレス。君の力は、ボクと君だけの秘密だよ!」

「ライラがそう言うなら、分かったよ!」

「二人とも、実は丁度差し入れを持ってきていたんだ。どうやら曲も完成しているみたいだし、そのお祝いも兼ねて、ささやかだがパーティーでもしようか」


 シュラディンは手に持っていた紙の箱を机の上に置く。

 中を見ると、中には色とりどりのフルーツが散りばめられたケーキが入っていた。


「わぁ! ケーキだ! ライラ、ケーキだよ!! おじさん、ありがとう!!」

「礼なら陛下に言ってくれ。ワシは陛下が用意したものを持ってきただけだ」

「へぇ、あの王にしては気が利くね」

「あ! ボク、このメロンの乗ったケーキもらうよ!」

「じゃあ私はイチゴのね! そうだ、紅茶の用意をしなくちゃ!」


 こうして三人は、ささやかなパーティーで新曲の完成を祝ったのだった。


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