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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十三章 神器都市フェルタリア過去編『ライラとフレス』
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手と手を繋いで


「ごめんね、フレス。傷のこと、隠していて」


 フレスが泣き止み落ち着くのを待って、二人揃ってペタリと座り、窓から夜空を見上げながらライラは語り出した。


「実はね、ずっと前から痛み止めを飲んでいたの」

「ボクがつけた傷の、だよね……」

「……うん。そうだよ」


 もう隠すこともないかと、ライラは素直に肯定した。


「ボク、悪い子だ。ピアニストの手を傷つけることだけでも最低なのに、それが大事な親友の手だなんて……!!」

「フレス、前にも言ったよね。フレスは良い子だよって。だって、ボクの手の為に、こんなに泣いてくれたんだから」

「当たり前だよ! 全部ボクが悪いんだから!」

「あのね、フレス。確かに傷は痛いけどさ。ボクにとってこの傷は大切なものなんだ。何故か分かる?」

「……分からない」

「この傷はね、ボクとフレスの友情の証なんだよ。実はさ、この傷を付けられた後、フレスのことについてたくさん調べたんだ。王が昔の龍についての文献を見せてくれたからさ。それで分かったんだよ。フレスは、今までずっと人間に酷いことをされていたんだって。人間を恨んでるって。だからフレスの気持ちを考えれば、この傷は当たり前なんだって」

「違うよ! ボクはライラのこと、恨んでなんかないもん!」

「あはは、大丈夫。分かってるよ。それでね、調べていく内にさ。ボクはフレスの事、もっともっと好きになっちゃったんだ」

「……どうして……?」

「だって、あれほど恨んでいた人間の手を、ちょっと傷つけたくらいで、あれだけ狼狽えて、反省しているんだもん。ああ、この子は本当に心の優しい子なんだなって、そう思ったから。ボクって結構敵を作りやすい性格だから、あまり友達もいないの。だからフレスが友達になってくれて、本当に嬉しいんだ。この傷はボクとフレスの、初めて出会った時の証。一生の宝物なんだよ」

「ライラ……。で、でも、その傷はライラを苦しめてる! 今だって、痛いのを我慢してるんでしょ!」

「痛み止めがあまり効かなくなっちゃってさ、今も結構痛いかな。でも一人でいたときより、今の方がずっと楽になったよ。隣にフレスがいてくれてるからかな?」


 その言葉だけで、フレスの目からは大粒の涙が溢れていた。


「……ボク、ライラの親友で、いいのかな……?」

「当然だよ。フレス以外、考えられない。ずっと一緒にいてね」

「うん……! ボク、ずっとライラといるよ……!! 一生、ライラを守り続けるよ……!!」


 フレスはライラの左手をとる。


「ボクも、この傷が欲しいよ。ライラとの友情の証」

「えへへ、うらやましいでしょ!」

「でもライラが苦しむのは嫌だから、治って欲しいけど…………――――あっ」


 ライラの手を握っていて、突然思い出した。


「ライラ! ボク、もしかしたらこの傷、治せるかも知れない!」

「……え?」


 そうだ。この手があった。

 今まで人間相手に使ったことはないから、出来るかどうかは分からないけど。


「ライラ、左手をこのままにしておいて!」

「え、えっと、フレス? なにかするの?」

「うん! 任せて! ボク、絶対に治すから」


 フレスはライラの左手を優しく両手で包んだ後、目を閉じた。


「ボクの龍としての生命力を、ほんのちょっぴりだけ、ライラにあげるんだ!」

「ど、どういうこと!? うわぁ!? 手が光ってる!?」


 フレスが両手に魔力を込めると、ライラの左手は青白く輝いていった。


「暖かい……」


 冷たい色の光なのに、手はポカポカ温まっていく。


「――お願い……! ライラの手を治して……!!」


 フレスの祈りと共に、光が消える。

 再びランプの光のみとなった室内で、その異変は起きた。


「……あ、あれ……? 痛くない……?」


 ライラの表情から苦痛の色が消えていた。


「な、何が起こったの……!? い、痛くないよ! ねぇ、フレス!! ボクの手、全然痛くないよ!!」

「本当に!? さっきみたいに、我慢してるだけじゃないの!?」

「本当だよ!! 我慢なんてしてないよ!! 本当に痛くないんだよ!!」

「本当の本当に?」

「本当の本当の本当に!」


 痛くないことを証明するかのように、手をブンブンと振るライラ。

 その表情から、本当に痛みが消えていることが分かった。

 フレスの願いが、龍の生命力を分け与える奇跡を起こした。

 

「フレス! 私、痛くないよ! 痛くないよ! ……痛くないよぉ……!!」


 ずっと悩み続けた痛みが、綺麗さっぱり消え去った。

 それはライラの親友(フレス)を傷つけたくないという気持ちと、フレスの親友(ライラ)を傷つけてしまったという罪の意識から、同時に解き放たれた瞬間でもあった。


「フレス、ありがとぉ! 痛くないよぉ! いたく、ないよぉ……!! ……う、うわああああああああああん!!」

「ライラぁ、よかったぁ……! ほんとうに、よかったよぉ……!! ……わああああああああああん!!」


 二人は抱き合い、号泣した。

 フレスはこの時、心の中で一つの誓いを立てた。

 これから先何があろうと、つまらない理由で人間を傷つけることをしないと。

 龍としての魔力は、大切な人を守るために使おうと。


 ライラの手の痛みは癒え、そしてフレスの心も癒えたその夜。


 二人は一緒にベッドで眠った。


 ――傷跡だけ残る左手と、それを癒やした右手を仲良く繋いで。


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