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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 後編『沈む都市と聖なる剣』
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聖剣の降臨

「――時の時計塔は発動した。()()()()という発動条件をクリアしたことによってな」


 ついに『時の時計塔』からも、魔力光が天に伸びた。

 運河都市ラインレピアを見守ってきた五つの時計塔はついに、全てが発動してしまった。


「アハハ~。助かったよ~、ありがとね、イドゥ!」

「……フレス!?」


 キャハハと高笑いを上げるティアの足元。

 そこでフレスが少女の姿で床に伏していた。

 

「おい、フレス!? 返事をしろ!!」


 ウェイルが叫ぶも、フレスから返答はない。それどころかピクリとも反応がない。

 フレスに何が起きたのかは判らぬが、彼女の身に尋常ではない何かが起きたのは明らかだ。

 そしてその原因が、時計塔の発動を企て実行した、目の前にいる二人。


「イドゥ……!! 貴方なのね……!!」


 ギリッと、アムステリアが拳を握る。

 

「あいつらがフレスを……!!」


 ウェイルは腹立たしさを抑えきれず、その瞳も血走っていた。

 ギリギリと爪が食い込み血が出るほど、拳を握りしめた。


「よくも、俺の可愛い弟子を……!!」


 床に突っ伏したフレスの姿を見て、ウェイルの精神は、すでに怒りで染まりきっていた。


「ウェイル、落ち着いて――」


「フレスがやられてるんだぞ! これが落ち着いてなんかいられるか!!」


「――と言いたいところだけどね」


 ウェイルがアムステリアに振り返ると。


「……アムステリア……!?」


「私も今、ハラワタ煮えくりかえってるのよね……!! 


 一瞬、恐怖で身が凍るかと思った。


 アムステリアの全身から凄まじい怒気と殺気が放たれ、その瞳を直視するのは恐ろしい。

 目を合わせれば、それだけで殺されそうなほどの迫力。

 おかげで返ってウェイルの方が冷静になってしまうほど。


「正直、今すぐあいつらを殺しに走りたいわ……!! でも、それでも落ち着いて。これから、今以上のことが起きるんだから……!」

「……そうだな。ありがとう。おかげで冷静に考えられそうだ……!!」


 この『時の時計塔』まで発動してしまった。

 『セルク・ブログ』の書いてある通りならば、これからウェイルは拝むことになる。

 『三種の神器』の一つ、『心破剣ケルキューレ』の降臨を。


「奴らが手に入れることだけは阻止しないと……!!」


 三種の神器なる強大な力を、奴らのような危険な連中に渡しては、この大陸の危機だ。

 ましてや敵の狙いが判らぬ以上――いや、どのような狙いであっても――止めなければならない。


「ウェイル、時計塔の発動条件は判るわよね?」

「時計塔の名前にちなんだ条件だったな。なるほど、言いたいことは読めてきた」


 水の時計塔には溢れた運河の『水』、光の時計塔にはティアが発した『光』。

 時計塔はその冠する名前の性質により、各々発動していった。

 そしてここは『時』の時計塔。


「奴らの誰かは『時』を操ることが出来るってことだな……!!」


 この時計塔が発動したという点で、それはもう明らかだ。

 そしてここにいる敵三人の中で、『時間』という武器を最も上手く使えそうな参謀役はといえば。


「やっぱりイドゥね。あの爺様、昔からもしかして未来が見えてるんじゃないかと思う行動をしていたけど、本当に見えていたのね……!!」

「時を操ることが出来る。もしかしてフレスはこの力にやられたのか……?」


 龍の姿になったフレスが、いくら相手が龍であっても簡単にやられる筈はない。

 反則級の力が死角から働き、戦いに介入してきたと見るべきだ。


「とにかくフレスを――!?」


 ウェイルが急ぎフレスを回収しに行こうとした、その刹那。

 尻餅をついてしまいそうなほどの、強烈な振動が発生した。


「地震……!?」

「……ってわけじゃなさそうね……!! 光が!!」


 強烈な振動が起こると同時に、全てを白く染める光が、大ホール中央から爆発する様に拡散していく。

 目を開ければ眼球が焼き尽くされるのではないか。

 まぶたの裏からでも眩いと感じるほどの光だったのだから。


「きたあああああああああああああああああ!!」


 鮮烈なる光の中でも、唯一はしゃぎまくっていたのが、光を得意とするティアだ。


「まぶしいいいいいいい!! ――――あ、終わった」


 ――部屋中を強烈に満たしていた魔力光が、突如止む。


 恐る恐るウェイル達が目を開けると、先程とは打って変わって静寂に満ちた時計塔があった。

 あれほど立ち上っていた時計塔の魔力光も、もうそこには存在していない。

 だがウェイルとアムステリア、そしてイルアリルマは、猛烈なる寒気を肌身に感じていた。


「――ようやく、この時が来たか」


 静寂と化したホールに、イドゥの声だけが響き渡る。

 それ以外の音は、キャッキャと騒ぐティアの声だけ。

 ウェイル達は、物音ひとつ立てることすら出来なかったのだ。

 自分達が感じているこの寒気の発生源が、今まさに目の前にあったから。


「……あ、あれが……、ケルキューレ……!!」


 震える身体をどうにか抑え、カラカラに乾いた口で、ウェイルがぽつりと呟いた。

 イドゥの頭上に、現出していたのは、光り輝く聖剣『心破剣ケルキューレ』。


「ついにこの時が来た……! 我らが待ち望んだものが、ここに……!!」


 スラリと伸びた刃身は、輝きながらも影を放つ、異様の存在感を放っていた。

 帯びている魔力の量も半端ではない。

 あの小さい刀身が、今のウェイル達には、超弩級戦艦スーパードレッドノートクラス『オライオン』と同じ迫力に見えていた。


 今ここに、『三種の神器』の一つ、『心破剣ケルキューレ』が降臨したのだった。



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