決戦! 時の時計塔!
「イドゥ。久しぶりね。元気にしてた?」
「お陰様でね。お前さんも元気そうで何よりだ。一応気には掛けていたものでな。せっかくだ、茶でも用意しようか?」
「要らないわよ。貴方らが用意したものなんて安心して飲めたもんじゃないし。それに「元気そうで何より」なんて、自分で刺客を送っておいてよく言うわよ。あら、その刺客の一人もそこにいるじゃない。仮面の気持ち悪い君?」
一同の視線は、イドゥの隣に座るリーダーへと集中する。
「これはこれはお姉様。お久しぶりでございます。まさかこんなところで再会できるとは思いもしませんでしたよ、オホホホホ!」
「相変わらず気持ち悪い子ね……」
アムステリアと仮面の男は、以前にも会ったことがある。
「……リーダーよ。受けを狙った口調かも知れんが、皆に引かれてるぞ」
「あ、やっぱり? オホホホと笑う前から薄々そんな気してたんだ~」
緊張感のなさ過ぎるリーダーと呼ばれる男に、ウェイルは嫌悪感を覚えていた。
(……なんだ、こいつは……!?)
敵である以上、嫌悪感を抱くのは至極当然ではあるのだが、この男の声や口調には、なんだか形容しがたい気持ち悪さを感じていた。
「この人、気持ち悪いよ……!!」
それはフレスも同感の様。
この男には要注意だ。
そう思って身構えた時、仮面の男は衝撃的なことを口にし始めた。
「いやー、ちょっと嬉しくて舞い上がっちゃってさ。アムステリアに会えたのも嬉しんだけど、それ以上に――――ウェイルとフレスに出会えたことがさ!」
「――なっ……!?」
「――ボク達……!?」
どうしてこの男が、自分達のことを知っているかのように語るのか。
勿論ウェイルとフレスの記憶に、こんな気色の悪い仮面男なんて、微かにも有りはしない。
「久しぶりだねぇ、というのも生ぬるいほど久しぶりなのだけど。ああ、そうか。君は僕のことを知らないんだったね。気にしなくていいよ!」
「ふむ、なるほど。以前お前が話していたのはこの男のことか」
それに対し、『異端児』側の二人は勝手に納得している様子。
「一体何のことだ!?」
「だから気にしなくていいって言っているでしょ? ティア!」
「は~い!」
仮面の男の隣に、ティアが並び立つ。
「イドゥ。ケルキューレの方はお願いね。僕等はわざわざ来てくれたお客様をおもてなしするからさ!」
「承知した。だがその客はアムステリアだ。それに龍までいる。絶対に油断だけはするな?」
「心配ないよ。お姉さんの怖さはよく知っているから。それにね、久しぶりにウェイルに会えてガラにもなく興奮してるんだ! 全力でお相手するさ!」
「お前さんは結構普段から興奮しているような気がするがな」
イドゥは右手で握ったピアスに魔力を込める。
「ウェイル! イドゥを止めるわよ!」
「当たり前だ! 『三種の神器』を奴らの手に渡すわけにはいかない!」
セルクの意思を引き継ぐ覚悟した時から、この状況を心のどこかで想定していた。
五つの鐘がなるとき、ケルキューレは目覚める。
すでに四つの時計塔の鐘は鳴り響き、天へ光の柱を伸ばしている。
後はこの『時の時計塔』を残すのみ。
ここの鐘が鳴る響く時、聖なる剣は姿を現す。
ウェイル達は絶対に阻止せねばならない。
「フレス! 行くぞ!」
「うん! ボクだって、ティアにはお礼をしないといけないんだ! 躊躇している場合じゃないよ!」
すぐさまフレスがウェイルの元へと駆け寄る。
「私は察覚を使って、皆さんのサポートをいたします!」
「さっきにみたいにお願いね、リル!」
イルアリルマはホール外へ。
アムステリアは先陣を切り、そしてウェイルとフレスはというと。
「ミルの事件以来だな。行けるか?」
「大丈夫だよ! ……テリアさん、今こっち見てないし」
「だな。さっさとやろうか」
何度やっても、やはりこの瞬間に慣れることはないだろう。
二人は意を決して、しかしながら自然に唇を重ねることが出来ていた。




