表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 後編『沈む都市と聖なる剣』
552/763

揃った役者

 ついに四つの時計塔から、光の柱が天へ上った。

 魔力光を放ち、ラインレピアを眩く照らす時計塔の姿に、住民達の反応は様々であった。


 ――ただ美しいと感嘆する者。

 ――異変を感じ、恐怖する者。

 ――祭りのイベントの一環だと、歓喜する者。


 想いの方向性はバラバラだったが、その視線だけは時計塔に集中していたのは間違いない。


 集中祝福週間の最終日。

 未だ輝かぬ時の時計塔だけが、ひっそりと目覚めの刻を待っていた。





 ――●○●○●○――





 ――中央地区 時の時計塔。


「イドゥ、準備はいい?」


 四つの時計塔の発動を確認した仮面の男リーダーは、声を弾ませながらイドゥに問う。

 

「ああ。ケルキューレ解放の準備は整った。すぐにでも開始できる。このまま何の邪魔も入らず、順調に事が進めば、な」

「何の邪魔も、ねぇ」


 すでに何者かが邪魔に動いていることは、イドゥの能力からも判っている。

 楽に計画を進めるならば、邪魔は無いに越したことはないが、リーダーの本音はそうじゃなかった。

 むしろ邪魔のある方が楽しいとすら思っている。


「あ、ティアが帰って来たよ!」


 窓から金色の翼を携えた少女が、室内に入ってくる。

 帰ってきて早々、ティアは相好を崩した。


「イドゥ! リーダー! ただいま! ティア、とっても楽しかった!」

「そうか、良かったな、お嬢ちゃん」

「おかえり、ティア!」


 口を開くなりそんなことを言ってきたが、主語がないので何のことかは判らない。

 とりあえず二人は適当に相槌を打った。


「それで何が楽しかったんだ?」

「あのね! フレスと遊んできたの!」

「……フレス? 誰だ……?」


 聞き慣れぬ名前。

 ティアが他人の名前を覚えるなんて、滅多にない。

 というより『異端児』メンバー以外の他人の名前を知る機会自体がない。

 つまり元より知っていた名前ということになる。


「あのね! フレスはね! ティアのお友達だよ!」

「……友達?」


 そこでピンと来たイドゥはリーダーと視線を交わた。


「フレスか。うんうん」


 リーダーもなんだか満足げに頷き返してきた。


「いやぁ、ティアの友達がこの都市にいるなんて、僥倖だねぇ」

「ああ。これで全ての龍の居所を掴むことが出来た」


 計画に龍は必要不可欠。

 『セルク・ラグナロク』の通りならば、これでほぼ全てのパーツが揃ったことになる。

 もちろんキーとなるパーツは、ここに封印されている神器であるが。


「ティア、『三種の神器』みたい! 早く封印、解いて!」

「そうしようか。僕だって早く使ってみたいし」

「そうしたいのは山々だがな。そうもいかないらしい」


 イドゥはチラリと、時計塔ホール入口の扉を一瞥した。

 ピアスを右手で握りしめ、左手は何もない空間を掴む。


「……どうやら、お客さんが来たようだぞ」


 扉の奥より強い気配。


「あれま。行動早いねぇ。……いや、もう時計塔は発動したんだし、むしろ遅いのかな?」

「時計塔が発動するところまで想定して動いていたんだろう」

「お客さん? 誰~?」


 ティアがワクワクと期待に胸を膨らませる中、来客者が扉を開けて姿を現した。


「――お邪魔ぞ。言葉通りにな」

「客が来たんだもの。お茶の準備は出来ているんでしょうね?」

「出来てるわけないだろ。『異端』な連中にそんな常識が通じるかよ」

「それもそうですね」


 凛とした声と共に現れたのは、ウェイル、アムステリア、イルアリルマ。


 そして遅れて――


「――ティア、まだお遊びは終わってないよ」


 ティアが帰って来たのと同じ窓から、蒼い翼を携えたフレスが入って来た。


 ――ついに時の時計塔に、役者が勢ぞろいした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ