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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 後編『沈む都市と聖なる剣』
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四つの時計塔が輝く時

 スメラギの華奢な身体に、隕石の如き破壊力を持ったアムステリアの蹴りが、深々と突き刺さったのだ。

 呼吸困難どころか、並大抵の人間ならば口から内臓を吐き出しかねないほどの、超威力のキック。

 一瞬にして意識を失ったスメラギは、その勢いのまま吹っ飛び、壁に衝突。

 そのままズルズルと血を吐きながら崩れ落ちた。

 スメラギが意識を失ったことにより、彼女が放出した強酸は全て消え去っていく。


「な、何とかなったわね……!」


 今のは流石のアムステリアも緊張していたようで、力が抜けてペタリと座り込んでしまう。

 スメラギが最後に放出しようとした大量の酸は、すでにスメラギの頭上に精製されており、いつ発射されてもおかしくない状況だったのだ。

 イルアリルマの完璧な指示があったからこそ、無事切り抜けることが出来た。


「ありがとう、リル。貴方に任せて良かった」

「いえいえ、私は私の出来ることを全力でしただけですから。本当に凄いのはアムステリアさんです。指示通りに身体を動かせる人なんて、そうはいないです。信頼してくださり、ありがとうございました」

「どういたしまして。でもあのスメラギって子、本当に凄いわね……。私、今回ばかりは本気で殺すつもりで蹴ったのに、まだ息があるんだもの。流石はイドゥの拾ってきた子ね……」


 ともあれこの地域の危機は消え去った。

 あそこで気絶しているスメラギは、しばらく目を覚ますことはないだろう。

 止めを刺してもよかったが、やはり一応彼女の先輩として、また何度か彼女の恋愛相談を聞いてやった姉貴分として、殺すのはなんだか忍びない気がした。


「ここは守れたし、治安局に通報しておかないとね。その後はすぐにウェイルの元へ――」


 よっこらせと、アムステリアが立ち上がった、その時だった。


「――アムステリアさん!? 多くの悲鳴が……!? もしかして!?」

「と、時計塔が、輝いてる……!? ……どうして……!?」


 信じられない光景が、そこにはあった。

 爛々と魔力を帯びて輝く、時計塔の姿がそこにあったのだ。


「あの子は倒したのに……!?」


 チラリと横たわるスメラギを睨む。


「もしかして、彼女は囮だったのではないのでしょうか……?」

「……そうか……!! イドゥのやり方を失念してたわ……!!」


 イドゥは常に保険を掛ける。

 その保険は何重にも掛ける。

 どんな状況に陥りようとも、彼の立てたプランを絶対に遂行するために。

 『異端児』の誰かが、スメラギを囮にして計画を遂行させたに違いない。

 急いで火の時計塔へ向かう。


「……やられたわ……!!」


 辿り着いた時、時計塔の中は大炎上していた。

 輝く魔力光は、天を目指して高く伸びる。

 ついにこのラインレピアの都市に、四つの光の柱が上がったのだ。


「リル! すぐにウェイルと合流するわよ! 重力晶はあるわね?」

「はい! ですが私、目が見えないので、手を繋いでもらっていいですか?」

「勿論よ! 絶対に離しちゃ駄目よ!」

「はい!!」

 

 ついに四つの時計塔の全てが発動した。

 後は中央の『時の時計塔』を残すのみ。

 そして、ついに現世に『三種の神器』が降臨する。

 世界に蘇ってはいけない存在が、再びこの世界に現れようとしているのだ。


 ――ウェイル、フレス、アムステリア、イルアリルマ。


 各々当初の目的こそ果たせなかったが、こうなることも想定済みだ。

 次に自分のせねばならない使命を胸に、4人は中央を目指したのだった。





 ――●○●○●○――





「……うぐぐ……」

「無事か? スメラギ」

「……ぐぐ、……無事、じゃ、ない……」

「生きてる時点でお前は凄いぞ」

「……そ、その声、るーしゃ?」

「ああ、そうだ。お前を迎えに来た」


 ルシャブテはスメラギを優しく抱きかかえた。


「任務、うまく、いった?」

「お前が囮になってくれたおかげでな」

「えへへ、るーしゃ、褒めて?」

「……ああ、よくやった」

「うん。るーしゃ、顔まっか」

「そのまま止めを刺すぞ」

「いいよ。るーしゃにら殺されたい」

「…………治療しに行くぞ」

「るーしゃにキスしてもらったら、すぐ治るのに」

「するかバカ。しばらく苦しめ」

「……けち」

「俺達の任務もひとまず終わった。リーダーの所に戻るのも面倒だ。作戦が上手く行けばしばらく忙しくなるし、このまま遊びにでもいくか」

「それ、デート?」

「ちげーよ」


 こうして任務を終え、スメラギを回収したルシャブテは、彼女と共にこの都市(ラインレピア)から消えたのだった。


 この二人がアムステリアと因縁の再会をするのも、そう遠くない未来のことである。


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