表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 後編『沈む都市と聖なる剣』
539/763

死闘、開始


 ――9:00。


 火の時計塔および音の時計塔では、アムステリアとイルアリルマによって、とある騒ぎが起こっていた。

 それぞれの時計塔から、もくもくと煙が上がっていたのだ。

 それに治安局が厳戒態勢を引き、時計塔を取り囲んでいる。


「計画通りにことが進むのは、なんて快感なのかしら……!!」


 二人が一体何をしたのかというと、簡単な爆弾を作製し、時計塔内で爆発させたのである。

 さらに治安局に爆破予告の電信を匿名で送りつけた。

 これにより、火と音の時計塔周辺には、治安局員が配置され、現場検証のために入場を規制することに。


「……はぁ、いくら任務とはいえ、悪いことをしちゃうのは気が引けます……」

「あーっはっはっはっ!!、たまにはこういうやり方も悪くないわね! 癖になっちゃいそう!」


 両者の正反対の意見は置いておくとして、一応の人払いは成功したのであった。

 しかし懸念事項はまだある。

 何せ敵の奥の手を、二人は知っているのだから。


「こればかりはフレスにお願いするしかないわね」

「フレスさん、頑張ってください……!!」





 ――●○●○●○――





 ――水の時計塔。


「また会ったな」


 時計塔のホール内で椅子に深く座っていたダンケルクの背中に、ウェイルは声を掛けた。


「……ん? ウェイルか。……一体何をしに来た」

「カラーコインを返してもらいに」

「だから俺はもう持ってないって言っただろう?」

「一応先に聞いてみただけだ。期待していたわけじゃないさ」

「なら、何の用だ? ……って聞くのも、もう野暮かもな。知っているんだろ? 俺達の計画」

「ああ。だからお前らを邪魔をしに来た」

「ま、そうなるよなぁ」


 ゆっくりと顔を此方に向けるダンケルクに、ウェイルは不敵な笑みを見せつける。


「俺はお前に逃げろと言ったはずだぞ? 先輩の忠告は聞くもんだ。笑ってないで、逃げた逃げた」

「なら計画を止めてくれという後輩の頼みも聞いて欲しいもんだ」


 グーッと、背伸びをしながら立ち上がったダンケルク。

 軽快な身のこなしで、ひょいと壇上へと上がると、腕を組んでウェイルを見下してきた。


「そうはいかんわけだ。俺達にも目的があってな」

「『三種の神器』だろ。何に使う?」

「さてな。そいつはリーダーやイドゥに直接聞いてくれ。俺は興味ない」

「興味がないなら別にいいじゃないか。ここで止めてくれても」

「う~む。確かにそう言われたらそうだな……。まぁ、それでもあいつらは裏切れんよ。何だかんだで面白い連中だからな。しかしお前がここに来るってことは、フロリアから全部聞いたな?」

「ああ、そうだ」

「だよな。全くあいつもブレないよな。裏切りのプロだ。そこが面白いところであるし、憎めないところでもあるんだがな」

「いや、憎めはするだろうよ……」


 豪快に笑うダンケルク。

 だがその表情は次の瞬間には一気に鋭いものとなった。


「フロリアについては正直どうだっていい。今俺が興味あるのは、お前が俺の邪魔をするか、しないか――それだけだ」

「奇遇だな。俺もほとんど同じことを考えている。お前が止めるか、止めないか、だ」

「流石は先輩後輩。考え方も似てくるか」

「残念ながら、そうみたいだな」


 互いに、一瞬だけフッと笑うと、瞬時に殺気を放ち、ぶつけ合った。


「俺を止めたいなら、俺を倒せばいい。俺に負けを認めさせてら、この計画から手を引いてやる」

「いいのか? そんな約束して。折角お前を止めるために色々と考えてきたのにな。寝ずに考えた泣き落とし説得用の原稿をどうしてくれる。そんな単純でいいなら、これほど楽なことはない」

「その説得とやらは少し聞いてみたいな。まあ、後輩想いの先輩に感謝するこったな。それにさっき言ったろ。俺は『三種の神器』には興味ない。ただ、俺が楽しければそれでいいのさ。『異端児』ってのは、そういう連中が集まっている」


 ウェイルは氷の剣を精製し、ダンケルクは双剣を構えた。


「久々に本気でやりあえる。楽しみだよ、ウェイル」

「正直俺は全然楽しくないんだけどな……!」

「考え方、全然似てないじゃないか」

「残念なことにな。だってそうだろ? 親切な先輩に、俺が引導を渡すと考えたら気が重いよ」

「言ってくれるねぇ。生意気に後輩にはお灸が必要のようだ」

「是非やってくれよ。それは楽しみだ」

「やっぱり似てるじゃないか、後輩」

「みたいだな、先輩」


 瞬時、氷と鋼がぶつかりあう。

 氷の溶けた水しぶきと、耳に刺さる金属音が鳴り響く中、二人は互いの目だけを睨み付けていた。


「もっとスピードを上げるぞ。ついて来れるか?」

「後輩は先輩に言われたら嫌でもついていくもんさ」


 さらにスピードの上がった斬撃の応酬が繰り返されていく。

 

 ――二人の死闘が、今、始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ