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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 後編『沈む都市と聖なる剣』
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認められること


「――ということなんだ。だから命が惜しければ早く逃げた方がいいと思うな」


 あらかた話し終えたフロリアの最後のフレーズは、何故かダンケルクと被る。

 ウェイルは案外敵から心配されているようで、なんだか苦笑ものだ。


「ここまできて逃げることなんて出来るわけないだろ」

「そうだよ。それにボクらだけ逃げるなんて卑怯だから」

「そりゃご立派な覚悟なこと。私なら逃げるけどね~」

「フロリアは……卑怯者だから……なの」

「ニーちゃん、酷くない!?」


 変にふざける二人を見て、ウェイルは浮かんでいた疑問を直接ぶつけることにした。


「なぁフロリア。どうして俺達にこの話をしたんだ? お前らにとって、俺達は敵だろう?」

「どうしてだろうなぁ? 気まぐれ? ねぇ、どうしてだろうね、ニーちゃん?」

「知らないの……フレスのため……?」

「うんにゃ。フレスのためなわけないでしょ。どうでもいいって、こんな娘は」

「……なんだかボクの扱いっていつも酷い気がするよ……」


 ちらりとアムステリアを見ると、どこ吹く風といった表情である。


「ま、気まぐれってことにしときましょうぜ、ウェイルの旦那!」

「適当すぎるぞ、お前」


 とぼけるフロリアにこれ以上追及しても何も出て来なさそうだ。

 こいつとも結構長い因縁になる。無論友好的な関係ではないが。

 基本的にこいつの行動は理解不能なことばかりだが、一つだけフロリアのことを信じることが出来る要素を知っている。


「ま、信じるか信じないかはウェイル次第だね! じゃ、私とニーちゃんは帰るからね!」


 それだけ言って、フロリアとニーズヘッグはスッと去っていった。


「嵐のような娘ね。言いたいことだけ言って帰っちゃった」

「…………」


 フロリアが去って行ってから、フレスは終始無言だった。

 それも無理はない。

 まさか『異端児』に最後の龍の存在があるとは思わなかったから。

 それにティアは親友だったと言った。

 今決心をしたばかりではあるが、フレスはそう簡単には割り切れないはずなのだ。

 何せフレスは――優しい龍なのだから。


「あの人の話、信じられますかね? もしかしたら罠ってことも……」


 イルアリルマの心配は至極もっともである。

 フロリアは敵だ。その敵の話を鵜呑みにするのは、普通ではありえない。

 だが相手はフロリアであるからこそ、判ることはある。


「俺は信じるさ。あいつはこんなにもよく出来た話をでっちあげるほどの嘘つきじゃない」


 あまりにも詳しすぎる説明だ。嘘をつくにしては出来過ぎている。

 これまでのフロリアの嘘は、大抵すぐにばれるようなものばかりだ。

 本人だって考えて嘘をついているわけじゃないのだろう。

 そもそも嘘をつく為だけに、こんな大それた行動をするような馬鹿でもない。


「ま、あいつはあいつなりに考えてるんだろうさ」


 裏切りはフロリアの十八番だ。

 味方を裏切り敵側につくなんて、いつものことだ。


「さて、今の話を考慮して、作戦を少し練り直さないと」


 フロリアの話を前提に、作戦を考えるべきだと言うアムステリア。

 そしてアムステリアは、落ち込んだ様子のフレスの肩を叩いた。


「フレス。龍が出てくる以上、アンタの力が鍵となるわ。さっきの決意はなかなか格好良かったわよ! アンタに龍は任せるわ!」

「う、うん…………――えっ?」


 バシッとアムステリアに背中を叩かれたところで、フレスはあることに気が付く。


「テ、テリアさんが、初めてボクを名前で呼んでくれた……!?」


 そういえばアムステリアはいつもフレスのことを小娘と呼んでいた。

 それがどういう風の吹き回しか、彼女は今間違いなくフレスで呼んだ。


「テリアさん……?」

「あのね、アンタはこの中で一番強い魔力を持っているの。つまりアンタでなければ龍には立ち向かえない。アンタでなければウェイルやリル、そしてこのラインレピアを救えない。フレスでないと、出来ないことがたくさんあるの。だからもっとしっかりしなさい!」

「う、うん……!!」


(そうだ、ティアが敵である以上、ボクがしっかりしないと……!!)


 それに出会ってから初めて、アムステリアに認めてもらった。

 この事実がフレスには嬉しくてたまらない。


「うう、ボク、嬉しくて泣きそうだよ!」

「……まあ、私もアンタの力は認めざるを得ないのよ。それに今回はアンタの力なしじゃこの都市を守れない。また小娘と呼ばれたくないのなら、死ぬ気でやりなさい!」

「うん!」


 そんなやり取りの二人を見て、これじゃアムステリアの方が師匠みたいだと、ウェイルは苦笑しながらポリポリと頭をかいた。


「フレス、頼んだぞ。アムステリアの言う通り、お前が鍵だ。俺の弟子なんだ。大丈夫だよな?」

「任せてよ、師匠!」

「皆、これを持っていきなさい。このラインレピアは広いから、これはかなり役に立つはずよ。数が足りないから、フレスには渡せないけど」


 アムステリアがバッグの中から煌めく石を三つ取り出して、それを一つずつウェイルとイルアリルマに手渡した。


「こいつは……確かに便利だな……!!」

「これは確かにボクには要らないよね!」

「さあ、作戦会議、続けるわよ!」


 そしてフロリアの話を元に、四人は作戦をさらに練り、一睡もすることなく、そのまますぐに行動を開始したのであった。


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