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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 前編『水の都と秘密結社』
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三手に分かれて行動開始!


「アムステリアが潰したのは、どこの会場だ?」

「北の『火の時計塔』と中央の『時の時計塔』ね。残るは東の『水の時計塔』、西の『音の時計塔』、南の『光の時計塔』。どこも奴隷オークションが開催されるというタレコミがあるわ」

「本当に全部の時計塔に人間を詰め込むつもりか……!!」

「時計塔という神器を媒介にして、ケルキューレに魔力を集めるつもりなんだね……!!」


 聞けば聞くほど、やはり腹の立つ話だ。

 奴隷オークションというだけでも十分腹立たしい案件であるのに、連中はそこに集まる人の命を利用してケルキューレを手に入れようというのだ。

 人を神器の糧としか考えていないやり方に、強い憤りを覚える。


「ケルキューレの復活を止めるには、奴隷オークションを潰すのが一番手っ取り早い。だったらやるしかないだろうな」

「だね。ボクも手伝うよ。ケルキューレは封印しておかなければ駄目だ。永遠に、ずっとね」

「それにメルソークを追っていれば、いつかは奴らに辿り着けるかも知れない」

「……うん。絶対にカラーコインを取り戻すよ!」


 『アレクアテナ・コイン・ヒストリー』のスタッフは、皆メルソーク会員だった。

 だが、そのメルソーク会員の手元にあったカラーコインは、ダンケルク達『異端児』に盗まれてしまった。

 盗まれた状況に不可解な点は多い。

 先にも述べたが、襲われた側のはずのイベントスタッフには誰一人として怪我はない。

 金庫を壊された様子もない。

 これまでの状況からウェイルは、メルソークと『異端児』には、何らかの繋がりがあるのではないかと推測した。

 状況を考えれば間違いないと言っていい。

 とすれば、メルソークを追っていけば、いつか必ず『異端児』に辿り着くはずだ。

 ウェイルとフレスは顔を見合わせ、二人して頷いた。


「カラーコインを取り戻しながら、ケルキューレの復活も止める。ウェイル、やろう」

「ああ。さっき賭けに負けたからな。やるしかない」


 『三種の神器』は、やはり人の手に余る代物。

 『創世楽器アテナ』も『心破剣ケルキューレ』も、この世に現れてはならぬ存在だ。


 そして自分達の不手際によって招いたカラーコインの紛失。

 プロ鑑定士の名誉と誇りにかけて、何が何でも取り戻してみせる。


「俺達もこれからは二人の活動に参戦させてもらう。どうせこれからまた奴隷オークションを潰しに行くんだろ?」

「ええ。そのつもりだけど。でもね、ウェイル、ちょっと待って。私達がここに来たのは、敵の話を聞いて気になる点があったからよ。敵はこう言った――」

 

『――大勢の人間がいないと魔力不足で失敗するだろうが、それは奴隷じゃなくても別にいい』

『――人さえいればいい』

『――イベントに来た人間を無理やり時計塔に押し込む必要はない。もっといい方法がある』


「――てね。この意味を考えないと」

「この意味か……。まあ確かに神器を発動させるために必要な魔力は、誰のでもいいだろうよ。奴隷だろうが、王族だろうが。そう意味じゃないのか?」」

「う~ん、神器の発動方法って意味もあるんじゃないですか?」

「それもあると思うよ。神器の発動方法は一つじゃない。色々あるから」

「どうでしょうね。……結局のところ、私達は奴隷オークションを潰すだけだから、後の事はウェイルに任せるわ。私達は『三種の神器』については、あまりにも専門外だもの。でも、この聞いた台詞から察するに、敵は作戦に何らかの保険を掛けているんだと思うの。奴隷オークションが失敗した時のことも、想定しているかのようだった」

「保険か……」


 敵は曲がりなりにも天才集団。作戦を失敗させぬよう、保険を掛けている可能性は高い。

 台詞だけ聞くと、何についてのことなのか判らない部分も多い。

 どんな可能性も考慮に入れなければならない。


「どちらにしても私とリルは奴隷オークションを潰しに行く。まずはこれに集中するわ」

「だな。敵がどんな策を講じているかは判らんが、とりあえず目の前に起きていることを対処していこう」

「うん!」

「ですね!」


 アムステリア達と合流したウェイル達は、これより奴隷オークションの壊滅を、三手に分かれて行うことになった。


 東『水の時計塔』にはウェイル、南『光の時計塔』にはアムステリア。

 西『音の時計塔』にはイルアリルマと、護衛としてフレスが向かうことに。


「互いの任務終了後には、またここに戻る事。そこで集めた情報を整理しよう」

「判ったわ」

「明日は忙しくなる。今日はゆっくり休もう。お前らも泊まっていけ」

「なら私はウェイルと一緒に寝る。ねえ、いいでしょ?」


 アムステリアは、腕と足を絡めてきてウェイルをベッドに押し倒した。

 目が血走っていて、正直怖い。


「だめーーーー!!」


 それを横から突き飛ばすフレス。背後には苦笑するイルアリルマ。


「ちょっと、小娘!? なにすんのさ!!」

「それはこっちの台詞だよ! ボクの師匠に何しようとしてるの!?」

「……あのな、お前ら。身体を休めようって言ったばかりだろうに」


 結局始まってしまった枕投げに、うんざりするウェイルであった。


 ――集中祝福週間 六日目。


 平和に過ごせそうにない一日が、これから始まる。


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