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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 前編『水の都と秘密結社』
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かつての先輩、ダンケルク

 突然起こった惨劇によって、観光客のいなくなったイベント会場は、シンと静まり返っていた。

 最初にこの静寂を破ったのはウェイルである。


「ま、まさか……!! 冗談だろ……!?」

 

 まさか、こんなことがあるわけがない。

 そこにいたのは、ウェイルのよく知る、かつての同僚。

 信じられないし、彼だと認めたくもなかったが、久しぶりだと声を掛けられた以上、目を背けることも出来ない。


「ダンケルク、なのか……?」

「ああ。俺だよ。元気にしていたか?」


 その返答は、無情にも突き付けられた現実。

 かつての同僚は今、敵であるルシャブテを庇う為に爆発を起こして、フレスを危険な目に遭わせた敵となっていた。


「何故だ、ダンケルク! お前が何故『不完全』側についている!?」

「違うな、ウェイル。俺は『不完全』についているわけじゃない」

「揚げ足を取るな! 『異端児』って連中なんだろう!?」

「そうだ。流石はウェイルだ。よく知っているな」

「……アムステリアから聞いたことがあるだけだ。そこにいる赤髪の男が、『異端児』のメンバーだと。だからそいつと一緒にいるお前も同じというわけだ」

「なるほど。俺は自ら答えを喋ってしまったわけか。これは一本取られた」


 お互いに神器を向け合いつつも、ダンケルクの調子はウェイルの知るいつものままだ。

 まるで昔に戻ったかのように、いたって普通の会話をしてくる。


「何が一本取られた、だ……ッ!!」

「ねぇ、ウェイル。あいつは一体誰なの?」


 ダンケルクの登場で動揺を隠せないウェイルだったが、フレスが会話に入ってくれたおかげで、幾許かの平常心を取り戻せた。

 少しばかり息を整えて答える。


「あいつはな、俺達の元同僚だよ」

「元同僚ってことは……――まさかプロ鑑定士!?」

「そのまさかだ」


 フレスは改めてダンケルクを上から下まで舐めまわすように見た。

 それと同時に疑問も浮かぶ。

 どうしてプロ鑑定士が、敵である贋作士側についているのか。


「後で話、聞かせてね」

「後で、な」


 今すぐにでも彼のことを聞いてみたかったが、今はそれどころではない。

 話を聞いたところで、彼が敵側にいる事実は変わらない。

 先程の爆発は、ダンケルクの仕業に間違いない。油断は禁物だ。


「ダンケルク。お前がそちら側に立つ以上、俺達は戦わなければならない」

「そうさな。俺もそう思うぞ。だがな、ウェイル。お前もルシャブテのことはとやかく言えん」

「なんだと?」

「お前、俺を見て少し動揺したろ? その隙を、俺達が見逃すと思っているのか?」

「……ッ!! フレス! ルーフィエさんは!?」


 彼はフレスの氷の結界の中にいるはず。


「大丈夫。結界は解けてない! 無事だよ!」

「とすれば……!!」


 ルシャブテは二つのものを狙っていた。

 一つはルーフィエの命。

 それが無事となれば、残りの一つは。


「ダンケルク、これで全部揃ったぞ」

「助けてやった上に時間まで稼いだんだぞ。そのくらいして貰わないとな」


 ルシャブテが持っていたのは、壇上にあったはずの最後のカラーコイン。


「さて、欲しいもんは手に入ったし、ここらで俺達は帰らせてもらう。何、そっちは大切なクライアントを守ることが出来たんだ。互いに勝ちってことでいいじゃないか」

「ふざけるな……!! フレス! 援護しろ! 奴らは絶対に逃がさない!」

「任せて!」


 ウェイルは氷の剣を精製させると、ダンケルクへ向かって一気に走っていく。


「やれやれ、ここらが互いの妥協点だろうに。引き際が判らないのは、まだまだお前が未熟な証拠だ」

「黙ってろ!!」


 ウェイルの剣の大きさが、徐々に大きくなっていく。

 フレスの魔力が、剣に更なる力を与えていた。


「そのカラーコインを返せ!!」

「断る。お前は頭はいいし、普段は切れる奴だが、いかんせん昔から復讐のこととなると爪が甘くなる」


 ダンケルクは迫りくるウェイルに対し、両手の指輪を掲げた。

 さらにその中から右手と左手の小指だけを立てる。


「属性は『幻想』、特性は『流動』……!!」


 その直後、ダンケルクの周囲から猛烈な光が放たれて、この場を眩く包み込んだ。

 ウェイルの氷の刃は、そんな光の中で振り降ろされる。

 そもそも光が発生する前から、すでにダンケルクの立ち位置では回避不能なところで剣を振った。

 光があろうとなかろうと、結局は刃の餌食となる――そのはずだった。


「――!?」


 光が止む。

 ウェイルの違和感はすぐに判った。

 剣を叩きつけた時の空虚な感触は、斬撃は空振りに終わったことを示していたからだ。


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