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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 前編『水の都と秘密結社』
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意外な頼み

「何が聞きたい?」

「では問う。時計塔の起動の仕方を教えろ」

「さあな。俺だって詳しいことは知らん。だが時計塔の名前が大きく関係しているそうだ。総帥はこの時の時計塔以外の時計塔にも、メルソーク会員を配置している。詳しくは判らないが、そこへ行って誰かを拷問でもすれば判るんじゃないか?」

「この時の時計塔には何がある?」

「知らん。だがここは全ての中央。ならば四方全ての時計塔を起動させれば、おのずと動き出すんじゃないか?」


 男の目を見ても、嘘をついている感じではない。本当に知らないのだろう。


「なぁ、爺さん。あんたはケルキューレを手に入れるつもりなのか?」

「無論だ。ワシの最終目的に必要だからな」

「そうか。なら一つだけ俺の頼みを聞いてはくれないか?」

「頼みだと……?」


 脅されている人間が、脅している人間に頼みなど、なんと面白いことか。

 イドゥは少し興味を持ち、聞いてみることに。


「なんだ?」

「総帥のシュトレームを殺してくれ。ケルキューレを手に入れるつもりなら、どのみちあいつは邪魔になる」

「……ほほう。まさかメルソーク会員に、そんなことを頼まれるとは思いもしなかった」


 頼みの内容が意外すぎて、イドゥは少し驚いていた。


「あのな。俺達は別にカルト教会みたいな変な集まりじゃない。秘密結社メルソークってのは、頭の良い連中が集まって、神器の知識を共有したり、互いに考えたゲームをしたりして遊ぶだけの、サークルみたいなもんだったのさ。神器収集だって半ばゲーム感覚でやっていただけだ。だが今の総帥になってからは、やり方がとにかく汚い。俺達は確かに知能指数の低い人間のことなんて、どうでもいいと思っているが、奴のやり方は常軌を逸している。自分の趣味のためだけに奴隷を買い、拷問して遊ぶ。俺達はそんなことを望んでいたわけじゃない」


 男が語るに、一部の熱狂的なファンが今の総帥シュトレームを支持しているだけで、多くのメンバーは忌み嫌っているそうだ。

 ではどうしてこの男を初めとする他のメンバーが反旗を掲げないのかというと、単純な話「命を狙われるから」+「身の安全の保障」からだそうだ。


「ケルキューレは人の身に余る神器だ。下手をすればラインレピアという都市自体が破壊されてしまう可能性だってある。今の総帥なら、必ずケルキューレを使って良からぬことを企てるはずだ。奴の配下にいれば一応安全は確保される。俺はなんだかんだでまだ死にたくはないからな」


 それから色々と話を聞いたが、メルソークという組織も、なんだかんだで内部のごたつきで大変らしい。

 なんだか『不完全』時代のことを思い出して、イドゥは男に多少の同情を覚えた。


「総帥はいつもここの歌劇ホールで趣味の悪いショーを楽しんでいる。次は買ってきた幼女を鞭打ちさせるそうだ。いい加減勘弁してもらいたい」

「ティア、そいつと趣味が合うかも!」

「……嬢ちゃん。仕事以外でやっては駄目だぞ」

「は~い!」

「あ、あんたも大変なんだな」

「まあな……」


 キャッキャとはしゃぐティアを見て、二人して嘆息する。


「そうだ、こいつを持っていけ」

「……なんなんだ?」


 男が胸ポケットから取り出したのは、小さな赤い石。


「メルソーク会員は全員こいつを持っている。会員証みたいなもんさ。こいつは常に微量な魔力を発生していて、同じ石を持っていると反応して震えるんだ」

「……なるほど。だからワシらがメルソーク会員でないとすぐに判ったのだな」


 先程覚えた疑問のからくりは、この石にあったわけだ。


「シュトレームはこいつを持っている人間以外とは絶対に会わない。色々と役に立つだろう。持っていけ」

「ああ」


 男とは色々な会話が出来て、かなり有益な情報も手に入れた。

 ここでの目的も達したようなものだ。

 イドゥはティアを連れて、部屋から出ていこうとする。

 その背中に男が声を掛けた。


「……俺のことは殺さないのか?」

「まあな。有益な情報と石をいただいたことだし、感謝の意も込めてな」

「そうかい。何ならついでに俺の頼みも頼むぜ」

「それはこっちの嬢ちゃんに頼んでくれ。年寄りをあまり働かせるでない」

「爺さん、あんまり歳には見えんがな」


 クックと男が笑い、イドゥも出ていこうとした時、最初にティアが言っていたことを思い出した。


「……そういえば、二人いたんだったな」


 この男の他に、女が一人いたとティアは言っていた。


「おい、お前さん。さっきまで女がここにいたな?」

「……ああ。そういえばいたな」


 さっきの出来事であるのに、ティアやイドゥのことが強烈過ぎて忘れていたようだ。


「誰だ?」

「誰と言われてもな」

「殺されたいのか?」

「感謝の意はどうしたよ。まあ、口止めされたわけじゃないし教えてやる。ある意味お前らよりも怖い女だった」


 ――怖い。


 そう思うということは、彼らの仲間ではないということか。


「話した内容だって、お前らとほとんど同じだよ。といっても、あっちの目的は奴隷オークションだったがな。恐ろしすぎて、つい余計なことまで喋っちまったよ」

「その女も『三種の神器』について知ってしまったということか」

「ああ。お前らも頑張れよ。その女、ケルキューレの話を聞いた時、なんだか楽しそうにしてたからな。もしかしたらお前らとどこかでぶつかるかもな」


 男は、本当に楽しいと言わんばかりにクックと笑っていた。


「教えてやる。その女はな――」


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