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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 前編『水の都と秘密結社』
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鬼が出るか蛇が出るか、はたまた龍が出るか


「この調子のまま、イベントに行っても大丈夫なのかな……?」


 部屋に帰るなり、ぐでーとベッドで寝そべっていたフレスが聞いてくる。


「だから少しでも身体を休めておけ」

「ウェイルもね。慣れてるって言っても、辛いものは辛いもん」

「……まあな」


 ウェイルも真似してベッドに転がるも、その視線が向かうは『セルク・ブログ』ばかりで、身体を休めるどころか、頭の中ではまだ鑑定の続きが行われていた。


「ウェイルも職業病だよねぇ」

「ああ、気になって仕方ない」

「実はボクもなんだけどさ」


 二人して『セルク・ブログ』の方を眺めていたというわけだ。


「お前もなんだかプロっぽくなってきた」

「えへへ、そうだと嬉しいな」


 寝そべったままの視線は、今度はフレスへと向けてみると。


「「――あ」」


 これまた揃って見つめ合う格好になってしまった。

 普段なら少し照れてしまう状況だが、当のフレスはというと、そういう感じの顔ではなかった。


「ねぇ、ウェイル。ボクさ、『三種の神器』のうち、一つを知っているって言ったよね」

「以前そんなことを言ってたな」


 『三種の神器』の一つ『創世楽器アテナ』に関わっていた時、フレスはそう漏らしていたのをウェイルは記憶している。


「あれって『アテナ』のことなんじゃないのか?」

「ううん。『アテナ』のことなんて全然知らなかったよ。ボクが知っているのはただ一つ」


 フレスはそこで一旦合間を挟む。

 そして絞り出すようにその名を告げた。


「――――『心破剣ケルキューレ』。心を切裂く、神の刃だよ」


 フレスはわずかに目を細めた。

 まるで何かを後悔しているかのように。


「……ケルキューレ」


 ウェイルにとってその名前は、初めて聞く名前ではなかった。

 その剣の持つ力だって、多少なりとも知っている。

 それも全て、テメレイアのおかげで解読に成功した『インペリアル手稿』から得た知識だ。


「インペリアル手稿には、ケルキューレは剣の姿をした神器だと書かれていた。その能力や使い方についてはあまり詳しくは書いていなかったが、フレスが今言ったことと似たようなことが書いてあった」

「他には何か書いてなかったの?」

「実のところ解読できたページは、レイアがすでに解読した所+α程度だったんだよ。時間もなかったし、何より解読方法が難しすぎた」

「ウェイルがじっくり読んだところって、つまり『アテナ』の記述ばかり?」

「ああ。あの時のレイアは、俺にヒントを与えるために解読方法を示してくれたに過ぎない。神器暴走の事件に直接関わっていた『アテナ』の情報をメインに解読していて、俺もそればかり読んでいた。他の二つについては、時間の許す限りの量しか読めていない。レイアは全部読んだのかも知れないが」

「そういえばウェイル。レイアさんから何らかの情報を貰ったんじゃなかったの?」

「ああ、貰ってる。インペリアル手稿と、そして神器封書(ギア・シールグリフ)に書かれた情報をまとめた資料を保管している貸金庫の番号をな」


 まさかこれほど早くテメレイアの情報が欲しくなるとは思いもしなかった。

 出来ることならば今すぐにでも銀行都市スフィアバンクへと赴いて情報を手に入れたい。

 だが目先のイベント、もとい事件のこともある。


「結局今日のイベント次第だな。無事に済めばいいんだが」

「済まなさそうだよね。ウェイルは巻き込まれ体質だから」

「それを言うなよ……」


 それからしばらく、二人は全力で身体を休めることにした。

 眠気など、とうの昔に吹き飛んでいた。

 これから確実に何かが起きるであろうイベントが待っているわけだ。

 如何に事件慣れしているウェイルやフレスといえど、何かあると判っている以上、緊張は隠せない。

 それと同時に興奮もする。

 セルクの想いを継ぐ、これが最初の一歩となるだろうから。


「そろそろ時間だ。フレス、行くぞ」

「がってん、師匠!」


 ウェイルはいつものように腰にベルトを巻いて剣を携えて。

 フレスはワンピースの皺を伸ばして、部屋から出る。

 

 ――不安、緊張、恐怖。


 それら全てを覆すくらいに、二人の好奇心は強かった。


 ――『三種の神器』。


 ――カラーコイン。


 ――秘密結社メルソーク。


 ――『異端児』。


 これら全てに関係する事件の幕が、これから開かれるのだろうから。


「鬼が出るか蛇が出るか」

「はたまた龍が出てくるかもね!」


 そんな冗談が、冗談に聞こえないから困る。


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