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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 前編『水の都と秘密結社』
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『セルク・ブログ』解析鑑定結果

 ―― 『セルク・ブログ』 解析鑑定結果 ――


 『セルク・ブログ』最後のページは特別仕様となっており、詩の型式と通常の日記の型式を織り交ぜた文章となっていた。

 日記だけの文節もあれば、詩と日記の入り混じった文章もあり、解析には難儀した。

 内容は大きく分けて四つある。

 『序・破・急』と、そして『焉』と名付けられた全四小節で書かれているのだ。

 どうして『起承転結』ではなく『序破急』を用いたのか、またどうして『序破急』の後に『焉』が使われているかは謎であるが、ウェイルが思うにセルクは自分の死を、物語の『結』に例えたくなかったのではないだろうか。

 普段『焉』という字は、それ単体で用いることはなく『終焉』といったように限定的に使用される。

 『終焉』とは命の終わりという意味であるが、セルクはこの『終』という字を嫌ったのではないだろうか。

 終わりに向かうのではなく、何に向かうかは己次第だと暗に示したかったのかも知れない。

 無論全てはウェイルの個人的な推察である。

 以下にウェイルの解析した『セルク・ブログ』最終章の全てを記す。

 


 ―― 『序』 ――

 


 我が生涯は、もはやここまでだろう。

 我が肉体はすでに軋み、心は張り裂け、魂は朽ち果てそうだ。

 しかし、我死すれども、この美しきアレクアテナを死せるわけにはいかない。

 あのメルソークの連中にアレクアテナを奪わせるわけにはいかない。


 願わくは最後の日記を、読むことの出来た選ばれし者に、我の遺言を託したい。

 願わくは最後の日記を、私利私欲に溺れた者から隠し、我の遺言を消し去って欲しい。

 ここにこれまで手に入れた我の知る全ての『三種の神器』に関する情報を記す。


 『三種の神器』は我が隠し、密かに監視していた。

 我の後釜はいない。

 いつか誰かがこれを読んで、我の後継者となって欲しい。

 悪意ある者に真実が写ることを避けんと、一部言葉を影に隠した。

 我が意思を継ぐ者ならば、おのずと答えが見えてくるはずだ。



 ―― 『破』 ――



 命を賭して、手に入れた詩がある。ここへ記し、望みを繋ぐ。


 ―― 聖神の名を『ケルキューレ』 ――


 ―― 女神の名を『アテナ』 ――


 ―― 邪神の名を『フェルタクス』 ――


    いにしえの神々は それぞれ輝く器となりて 


    俗世を切り裂き現れる


    聖なる剣はラインレピアに


    五つの鐘の音響かせて 祈りの声にて目を覚ます


    女神の愛はルクソンマテアに


    地獄の底から這いだして 無の歌響かせ糧となる


    邪神の化身はフェルタリアに


    虹と闇を奏でる時 神すら俗世より追放する



 ――  龍の器よ、地獄で眠れ   ――


 ――  人の器よ、触れるでなかれ ――


 ――  神の器よ、聖地で眠れ   ――



 これは秘密結社メルソークに古えより伝わる『終焉の詩』と呼ばれるものだ。

 『三種の神器』は一つとなりて、神々の時代を終わらせたという。

 『三種の神器』は目覚めさせてはならない。


 次に終わるのは、この美しきアレクアテナかも知れないのだから。



 ―― 『急』 ――



 女神は愛を、聖剣を鍵に、神たる龍を糧として


 さすれば邪神は動き出す


 邪神は八つの音色で挽歌を歌う


 その音色の根源は、世界を彩る七色と、この世を覆う闇である


 我は八つの音色を盗み出し、このアレクアテナの各地へ隠した。

 八色の音色には歌が刻まれている。

 至る終焉への讃美歌だ。

 フェルタリアに伝わるその歌が、全てのプロローグとなるはずだ。


 女神は地下に、邪神は城に姿を隠す。

 女神は無垢なる歌にて、魔力の全てを司る。

 邪神の姿は大砲だ。

 世界に破滅をもたらすだろう。

 聖剣は、ラインレピアの五つの鐘が、同時に響き渡る時、その姿を現出する。


 邪神に龍を捧げてはならない。

 虹と闇を集めてはならない。

 時計の鐘を必要以上に鳴らしてはならない。


 邪神を目覚めさせてはならない。



 ―― 『焉』 ――



 我が後継者となる者よ。

 貴様は『三種の神器』に挑むのか。

 道しるべはすでにある。

 我が生涯最後の作品に、貴様の為すことを書き込んだ。


 龍が永久となる時。


 ラグナロクは終焉と向かう。


 『三種の神器』に全てを捧げた、セルク=マルセーラ最後の詩だ。


 向かうは平穏か、終焉か。



 ―― 美しき我が故郷、アレクアテナに、光あれ ――



 そしてこの文書に最後に、走り書きの様に一言。



 ――願わくは、我が親友、インペリアルに全てを委ねたい。



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