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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
最終部 第十二章 運河都市ラインレピア編 前編『水の都と秘密結社』
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偶然ばったりフロリアちゃん


「お、お前はフロリア!? どうしてこんなところに……!? い、いや、ラインレピアに行くと言ってたから、あながち偶然ではないのか……?」


 メイド服こそ来ていないものの、そこにいたのは間違いなくフロリアであった。

 クマと連呼していたのは、やはりと言うか龍であるニーズヘッグだったようだ。


「あれ、ウェイル!? 何でこの宿にいるの!? もしかして……私のストーカーしてる!? ……って、あのウェイルさん? 冗談ですけど?」


 今回のウェイルの行動は迅速だった。

 さっと身体を引いて、ナイフに手を掛けて、フロリアがいつ、どう動いても対応できるような態勢をとった。


「ニーズヘッグ……!?」

「……やっほー、フレス……」

「何がやっほーだ……!!」


 虚ろな目を浮かべて、やんわりと手を振ってくるニーズヘッグに対し、フレスは拳を机に叩きつけて、ニーズヘッグを睨み返した。


「ウェイル、ちょっと、物騒だって!? 言ったでしょ!? 次やり合う時は敵としてあった時って! 今は敵じゃないから!」

「信用できるか! お前は『異端児(イレギュラー)』って連中の仲間なんだろ? 今お前がここにいるということは、その仲間だって近くにいるということだろ。いるならさっさと出てこい……!!」


 周囲の客が騒然とする中、ナイフを握る手に魔力を込めたウェイル。

 いつでも『氷龍王の牙(ベルグファング)』を展開できる状態だ。


「ちょーっと! 違うってばー! 確かに『異端児』の連中とは会っていたけどさ! 今は別行動してるんだって!」

「だから信頼できないって言ってんだろ……! フレス、気を抜くな! こいつらは『不完全』を潰した連中だ!」

「大丈夫だよ、ウェイル。ボクはいつでもこいつを()れるから……!!」


 フレスの冷気によって、既に周囲の温度は氷点下にまで達している。

 机の上に置かれた水が凍りついているほどだ。

 フレスから溢れる冷気と殺気はただ事じゃない。

 そしてその殺気は、全てニーズヘッグにのみ向いている。

 周囲の客も、何事かと固唾を飲んで見守っていた。


「ウェイル……フレス……、違う……。話を……聞いて……なの」

「そうだよ! 全部話すから! 本当に私が今個人行動を取っていることを証明するからさ!」


 仕方ないとばかりに、フロリアは恥ずかしげもなく、胸元へ仕舞っていたとある本を取り出して、机の上に置いた。


「これを持って、他の連中から逃げてきたんだよ。多分もうバレてるだろうし、今更戻り辛いしさ」

「……これは何だ?」


 ウェイルは一旦ナイフから手を離すと、フレスに一度視線を送り、そしてその本を手に取った。

 フレスは相変わらず、激しい冷気と殺気をニーズヘッグに向けたままだ。

 手に取った本は、フロリアの体温で少し生暖かったが、周囲の冷気に、すぐさま冷たくなっていく。

 だが、その本の表紙を見たウェイルは、思わず肝まで冷やしてしまうことになる。


「お、おい、フロリア!? お前、なんてもん持って来てんだ!?」

「あ、やっぱりウェイル、それ知ってんだ。たぶん本物だよ?」


 フロリアが持っていた本。

 それはアレクアテナ大陸全土で知らぬ者はいないとまで言われた、超有名芸術家の日記。


「それはね。オークション会場から持ち出した――『セルク・ブログ』だよ」



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