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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第一部 第二章 競売都市マリアステル編 『贋作士と違法品』
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龍の少女、サラー

 まさかそんな、といった表情で固まる二人。


「ん? どうかしたの?」

「…………!?」


 どうやらローブの子は気付いたようで、ピクリと身体を振るわせた。

 フレス一人が、状況をよく把握していない。

 静まり返っていた周囲は、次第と賑わいを取り戻していったが、この席と接客のマダムだけは、固まった空気のままだった。


「姿を隠す必要はなくなったか」


 そんな空気を取り払うかのように、渦中の人物は全身を包んでいたローブを脱いだ。


「真っ赤な髪の……少女……?」


 その姿はフレスと瓜二つの美しい少女だった。

 ただフレスとは違い、髪は赤く、目も燃えるような真紅に輝いている。


「フレスと似ている……! それに好物までフレスと一緒ということは、その子はもしかして――」

「え!? サラー!? 君、サラーだよね!? ボクだよ! フレスだよ!!!」


 ウェイルの言葉を遮るように叫んだフレスは、目を輝かせながら赤髪の少女に抱きついた。


「うわあああ! サラーだ! やったー!!」

「えーい、鬱陶しい! 離れろ、フレス!!」

「嫌だよー! エヘヘ……懐かしいサラーの匂いだぁ……、クンカクンカ」

「匂うな、バカ!」


 その少女が最初に発した台詞は、拒絶であり、その後の態度も拒絶そのものであった。

 口調は無言でいた時とは想像もつかないほど猛々しい。どうやらそっちが本当の性格のようだ。

 とはいえ天然素直なフレスは、そんなことお構いなしである。


「ちょっと、どこ触ってんだ! さっさと離れろ!!」

「久しぶりだね、サラー!! ボク、今本当に嬉しいんだから!! すりすりすりすり……」

「ええい! すりすりするな!!」


 頬擦りするフレスを鬱陶しげに拒絶するサラーと呼ばれた少女。


「おい、フレス。一体どういうことだ?」

「そうですよ、サラー。教えてください」

「あんたら、いつになったら料理注文するのかね……」


 この状況をイマイチ飲み込めていないウェイルとイレイズ、そしてマダム。


「サラーはねぇ。ボクの大親友なんだよ! ずっと封印されていたはずなんだ。ねぇ、どうしてここにいるの!? ねぇねぇ!!」

「あー、うざいっ!! いい加減離れろフレス!! 焼き尽くすぞ!!」

「わぁ~、その口癖、昔と変わらないね!! 懐かしいな~、すりすりすりすり」


 サラーは必死に突き放そうとするも、対するフレスは接着剤でくっついているかのように掴んで離さない。


「本当に焼くぞ!?」

「大丈夫、ボクの氷で冷ますから。すりすり~」


 口では過激なことを発しているサラーではあるが、フレスを睨む表情からは、どこか嬉しげな様子も伺えた。


「どうやらウェイルさんは私と同じ秘密を共有している仲のようですね。この子の名前は『サラマンドラ』。炎を司る神龍です。是非サラーと呼んであげてください」

「ふん、この男に名前を呼ばれる筋合いはない」


 人懐っこいフレスとは対照的に、かなり警戒心の強い龍のようだ。

 似ているのは外見だけで、性格は真反対だ。


「炎の龍か……。やっぱり他にも龍はいたのか……!」

「えぇ、そうみたいですね。サラーの話だと、神龍と呼ばれる高位の龍は全部で五体いるそうです。それであの、ウェイルさん。出来たらそちらの子も紹介していただけるとありがたいのですが」

「こいつの名は『フレスベルグ』。氷の龍だ」

「ボクのことはフレスって呼んでね! みんなそう呼ぶから!」

「縁あって今は俺の弟子をしている」

「縁あって今はウェイルの弟子をしています! お嫁さんでもよかったんだけどね!」

「アハハ、フレスちゃんですか。よかったですね、サラー。仲間に会えて」

「ちっともよくない!! おい、そろそろ離れろ、フレス!! 本当に焼き尽くすぞ!!」

「い~や~だ~! サラー気持ちいいんだもん!」

「暑苦しい!」


 サラーはフレスを無理やり引っぺがした後、深く嘆息していた。

 フレスはまだまだ満足出来なかったようで、不満げに渋々と席に戻る。


「ちぇー、久々に会えて嬉しかっただけなのにさ! サラーのけちんぼ!」

「だからって限度があるだろう!? 見ろ、コートがしわくちゃだ!」

「まあまあ、それくらいの皺ならすぐに取ってあげますから」

「そういう問題じゃない! フレス、責任とれ!」


 龍同士ギャーギャー騒ぎ立てていた最中、ウェイルはとある存在に気づき、巻き込まれまいと姿勢を正した。


「ウェイル、急にどうした――ひっ!?」


 フレスもサラーも気づいて黙る。

 こめかみに血管の浮いた笑顔のマダムが、二人を睨んでいたのが見えたからだ。


「いつになったら注文を決めてくださるのかしらね……?」

「「ひぃいい!? お、お任せで!!」」

「一番高い料理ってことでいいかしらね?」


 しびれを切らしたマダムの迫力に、首を縦に振ることしか出来なかった四人であった。


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