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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
Side Episode 5 アムステリア編『愛に狂った朧月』
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甘美な悪魔の言葉

 ある日、アムステリアは気分転換に買い物をしに他都市へ出ていた。

 その頃、アムステリアの家には、一人の来訪者が現れた。

 ルミナステリアの状況を聞いて、『不完全』の中の一人が、様子を見に来ていたのだ。


「お邪魔するよ。勝手に入るね」


 見た目の年齢は十二、三くらいの少年だろうか。

 いつも依頼に来る連中とは違い、あまりにも若い。

 ルミナスはいつものようにベッドに塞ぎ込んでいた為、男の来訪には気付かなかった。


 その来訪者の名前は――イングと言う。


「あらら、噂通りベッドで寝てる。お姉ちゃんの方は……いない、か。都合が良いね」


 そしてイングは、塞ぎこむルミナステリアにこう囁いた。


「――大切な人を、生き返らせる方法がある。知りたくはないかい?」


「――……え……?」


 今のルミナステリアにとって、それはあまりにも甘美な悪魔の言葉。

 その瞬間から、ルミナステリアの時間は動き出した。


「貴方、誰……?」

「僕はイング。君と同じ『不完全』に所属している」

「……ねぇ、今言ったこと、本当なの? リューリク、生き返るの……?」


 もぞもぞと頭だけベッドから出して、目の前にいる男に問う。

 それに対し、イングはニコッと笑顔を向けた。


「僕なら出来るよ。そういう神器を持っているんだ。それに僕等は贋作士だよ? 人間を一人作り直すくらい、簡単だよね」

「私は、リューリクを生き返らせるために、何をしたらいいの……?」

「何もしなくていいさ。僕はただ、君の大切な人を蘇らせるお手伝いをしたいだけなんだから」


 その方法とやらを、イングは耳打ちして、そして帰っていった。





 ――●○●○●○――





「ただいま、ルミナス。今日はルミナスの好きな梨のハチミツ漬けを買って来たんだ。食べようよ」


 イングの来訪を露も知らないアムステリアは、ルミナステリアの大好物を買って、今日こそは元気を出してもらおうと意気揚々と帰ってきた。


「ルミナス、起きてる?」


 ルミナステリアのベッドを見てみる。そこでアムステリアは驚いた。


「ルミナスがいない……?」

「お姉ちゃん、お帰り! 私、お腹すいちゃった」

「ルミナス!?」


 アムステリアの背後から、聞き慣れた、そしてもう一度聞きたいと願っていた声があった。


「どうしたのルミナス!? 大丈夫なの!?」

「うん。お姉ちゃん、心配かけてごめんね。私、リューリクの為に生きなくちゃならないよね」

「そうだよ! 二人で頑張って生きていこうね!」

「うん。でもお姉ちゃんじゃ無理かな? 私はイングにお願いする」

「イング……?」

「イングと一緒に、私、頑張るからね!」


 その時アムステリアは、ルミナステリアの発言の意味が全く判らなかった。


 ――この日以降のことである。


 ルミナステリアの行動は、日に日におかしくなっていった。

 行動は残虐性を増してきたし、贋作だって、気持ちの悪いほど精密に作り始めた。


 特に興味を示したのは、人間の身体の標本や骨であった。


 イングと共に外に出ることも多くなった。


 何をしているか、最後までルミナステリアは教えてくれなかった。


 そんな日々が、アムステリアが十九歳になるまで続いたのだった。


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