命名の占術鑑定
「久しぶりにウェイルに抱きつけたと思ったら、あんな小便くさいクソガキだったなんて。セクハラもいいとこだわ」
「お前が言うな、お前が」
「ちょっとボクの言われよう、酷過ぎない!?」
ウェイルが占術鑑定士として呼んでいたのは、なんとアムステリアであった。
「お前なんて呼ばないで、テリアって呼んでよ」
「酷いよ、テリア。ボクのこと小便くさいだなんて……」
「よほど殺されたいようね、この小娘……!!」
「ひいいぃぃ!?」
変なコントばかり繰り広げるアムステリアだが、占星術の腕は確かだったりする。
アムステリアの本業は贋作を見極める真贋鑑定士なのだが、実は趣味で占いなどをやっているのだ。
不吉な内容ばかり的中するということで、プロ鑑定士達はアムステリアの占いに、いつも恐怖している。
実はウェイルも何度か占ってもらったことはあるのだが、大方の予想通り、占いの後こっぴどい目に遭っている。
ちなみにそのこっぴどい目とは、浮気されたと勘違いして嫉妬に狂ったステイリィに包丁を持って追い掛け回されたというものだ。
「アムステリア、このシュクリアが今回お前に占いを依頼する客だ」
「よ、よろしくお願いします」
先程のアムステリアとフレスのやり取りを見て、シュクリアは赤子を抱きしめ、少しだけ身を引いていた。
「ほら、小娘。アンタのせいでお客さんが困っているじゃない」
「それテリアさんのせいでしょ!? ――……あっ」
「……また呼んだわね、テリアって」
「違うよ、テリアさん、許して! ――……あっ」
「わざとやってんの!? ウェイル、貴方の弟子、今日ここで消し去ってもいいわよね?」
「もうどうでもいいから早くしてくれ」
結局その後しばらく、逃げ惑うフレスを捕まえ、追いかけるアムステリアの肩を抱き、機嫌を取ることで事なきを得たのだった。
――●○●○●○――
「しきりなおしだ。テリア、今回の依頼人のシュクリアだ」
「ウフフ、プロ鑑定士のアムステリアよ。どうかよろしく」
「は、はい」
さっきよりもさらに引いているシュクリアは、求められた握手に、恐々といった様子で応じていた。
「さて、今回は赤ちゃんの名前を付けて欲しいって依頼だったと思うけど、合っているかしら?」
「はい。この子なんですけど」
はらりと被せたタオルをどけて、その顔をアムステリアに見せた。
「あら、可愛い子ね」
「そうですよね! アムステリアさんもそう思いますよね!!」
「ええ。とっても可愛いわ。この子なら素敵な名前を付けてあげたいわね」
「やったぁ! これでこの子は大陸一の美人になるのはもう確定的ですね!」
やはりというべきか、赤ちゃんのことを褒められたシュクリアのテンションは異常であった。
今度はアムステリアの方が、シュクリアのことに引いている。
……というかアムステリアがドン引きすることなんて珍しいにも程がある。
(ウェイル、この人なんだか凄まじいわね)
(お前だって人のことは言えんけどな……。まあ確かに親バカだ。度が過ぎるほどに)
(最初冗談で変な名前つけてやろうとか思っていたんだけど)
(殺されるぞ、やめておけ)
なんて会話があったことなど、シュクリアは知らないのだ。
「じゃあその子の手を見せてくれるかしら」
「手相を見るんですか?」
「まあ手相も参考の一つよね。後はこの家や貴方のこと、その他総合的に風水的に良さそうな名前をつけなくちゃね」
下手な名前など付けることはできない。
アムステリアの慎重な占術鑑定が始まった。
一方その頃フレスはというと。
「ウェイル、このお菓子、おいしいね。……モグモグ」
「こいつはシュークリームといって、最近ハンダウクルクスで人気のお菓子なんだ」
「そうなんだ。……モグモグ」
「それよりもフレス、それ今何個目だ?」
「五個目」
その五個目を食べ終わり、六つ目のシュークリームに手を付けようとしていた。
「それ、シュクリアへのお土産のために買ったんだぞ……。占いが終わった後みんなで食べようと思って。それを何でお前が全部食べるんだ」
「仕方ないじゃない! おいしいんだから! 手が止まらないよ!」
「開き直るなよ……。仕方ない。もう一度買ってくるか」
「ボクの分もね!」
「知るか!」




