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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第十一章 教会戦争完結編 『誰が為に、君が為に』
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オライオンの最後


 『氷龍王の牙(ベルグファング)』は、創造主からの魔力を授かった刹那、一度力を失ったかのように溶け崩れる。

 だがそれは『氷龍王の牙(ベルグファング)』が真の姿へと戻るための一連の動作の一つに過ぎなかった。

 溶け去った氷は輝きの中で新たな剣を生成し、今まで以上に透明度の高い氷の刃へと姿を変えたのだ。


「な、なんて、なんて力だ……!? まるで魔力が凝縮して凍っているかのようだ……!!」


 見た目は普通の剣だが、その込められている尋常ではない魔力に恐怖すら覚える。


「使い方は訊いているのかい?」

「……訊いてはいない。だが判る。まるでこの剣が、俺に教えてくれているようだ……!!」


 超人的な身体能力を得たことも実感出来る。

 この神器の使用方法だが、不思議なことにウェイルは全て理解出来ていた。

 まるで脳内にフレスが直接伝えてくれているかのよう。

 今なら長年使い込んだ愛用の神器と同じくらい、手際よく使えるだろう。


「これならイレイズの腕だって粉々に出来そうだぞ」

「……ウェイルさんと腕相撲だけは絶対にしないようにします」


 石くらいなら軽く握っただけ粉砕出来そうだ。冗談抜きで今ならダイヤモンドですら砕く自信がある。


「サラー、頼みがある」


『空に投げ出された自分を拾え、と言いたいんだろ? 判っている。行ってこい』


「理解の早い仲間がいて助かるよ」


『私はお前と仲間になったつもりはない』


「え!? そうなのですか!? 駄目ですよ、サラー。ウェイルさんは我々にとって恩人じゃないですか!」


『イレイズ、余計なことは喋るな!』


「お前らはどこでも相変わらずだな」


 そんな漫才を交わして緊張を解そうとしてくれる二人に、ウェイルは内心感謝しつつ、思いっきり足を踏ん張らせた。


「す、すごい……!!」


 テメレイアが絶句するほどの、超人的な跳躍力でウェイルは空を翔け、一気にオライオンへと詰め寄った。


「結界も自爆装置ごと切り裂いてくれる!! うらあああああああああああああ!!」


 ウェイルはオライオンに向かって、光の短剣を思いっきり振り降ろした。


 ――その瞬間である。


 振り降ろされた光の刃は、オライオンの目の前で巨大な――オライオンの倍以上の大きさとなった――剣となって、オライオンの結界と衝突した。


「――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ウェイルの咆哮と気迫の強さと比例するかのように、剣もその大きさを増大させていく。


 ピキピキと、結界にひびが入っていく様子は、少し離れたテメレイアからでも確認が出来た。


「今、助太刀するよ、ウェイル……!!」


 本から輝く楽譜を出現させ、テメレイアはアテナの詩を歌い始めた。

 今度はウェイルを祝福する讃美歌の様に、テメレイアは祈りを込めて歌った。

 詩の魔力が『氷龍王の牙(ベルグファング)』に反映されていく。

 膨大な魔力を増幅させていくと、剣の大きさもさることながら、その本数も増えていった。

 一本から二本、二本から三本へと増えていき、テメレイアが四小節目を歌う頃には五本もの大剣が、オライオンを破壊せんと結界と衝突していた。


 ミシミシと、強固だった結界もついに悲鳴をあげはじめる。


 ――そして、ついにその時が来た。


 限界を迎えた結界は、光り輝く魔力の粒子となって粉々に砕け散っていく。


 結界を失ったオライオンを守るものは、もうどこにもない。


 無防備となったオライオンに、五本の超巨大剣が突き刺さっていった。


 ――その日、アルクエティアマイン上空にのさばり続けていた超弩級戦艦スーパードレッドノートクラス『オライオン』は、きれいさっぱり姿を消した。


 ――いや、正しくは消滅したのである。


 自爆装置すら瞬時に消滅させた光の刃により、オライオンは文字通りこの世界から消えてなくなったのである。


 フレスの命懸けの行動によって、アレクアテナ大陸を恐怖で震撼させた超弩級戦艦『オライオン』は、撃破されたのだった。


 そしてこのオライオンの消滅によって、ラルガ教会VSアルカディアル教会の教会戦争は幕を閉じたのだった。

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