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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第十一章 教会戦争完結編 『誰が為に、君が為に』
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プロ鑑定士協会の作戦


「……何だって……?」

「すでにプロ鑑定士協会は対策を講じてある」

「やけに簡単に言うじゃないか……!」


 オライオンに搭載されている砲台は、超がつくほど巨大で強力な魔力砲だ。

 手を打っていると宣言する以上は、それを何とかする方法があるということ。


「一体どんな手を打つんだ!?」

転移系神器(ワープクラス)を使用する。後は推理しろ。お前ならすぐに閃くだろ」


 知識として持っている転移系神器(ワープクラス)の性質を考える。

 多くの教会が持っている転移系神器は、物質の瞬間移動が可能な代物。

 アルカディアル教会にも小規模な空間転移系の神器はあったし、実際に使ったことがある。

 長距離空間転移が可能な神器は数が少なく、ラルガ教会のような規模の大きい教会くらいしか持っていない。


(長距離の瞬間移動……?)


 そこでテメレイアは気づく。


(空間転移か。なるほど……!!)


「……ウェイル、やっぱりナムルさん達は天才だね」

「俺もそう思う。その作戦はナムル氏が考案したからな」

「おかげで爆撃を止めなくていい分、オライオンの墜落へ全精力を集中できるね」

「ああ。ミルの方は俺達に任せろ」


 互いに拳をコツンとぶつけ、そして互いに背を預け、各々の武器を構えた。

 敵の視線を感じたからである。


「裏切り者のテメレイアを発見!! 手の空いている人員は、すぐさま甲板へ集合せよ!!」

「敵は二人と、そして――龍!?」

「龍でも何でも構わん! 我々の神は龍姫様だけだ! そいつは偽物よ!」


 わらわらと集まるアルカディアル教信者達。

 敵信者は、二人と一匹を取り囲むように並び、それぞれの得物を構えた。


「さて、互いにやることも決まったことだし、ひとまずここを片付けるとしよう」

「そうしようか」

『難儀なことだ。さっさと終わらせるぞ』


 ウェイルは神器『氷龍王の牙(ベルグファング)』を、テメレイアは『神器封書(ギア・シールグリフ)』を構えて、ちらりとアイコンタクトして頷きあった。


『我は右半分の敵をやる。残りはお前らに任せるぞ』

「はは、師匠に()()()だなんて、ませた弟子だ」

「さぁ、ウェイル。いくよ!」


 テメレイアのセリフを皮切りに、敵信者達は一斉に飛びかかってきた。

 ウェイルとテメレイアは、互いの背中を守りあうように寄り添い、ウェイルは剣で、テメレイアは魔力を暴走させることにより敵の攻撃を捌いていった。

 氷の剣で敵を切り裂くと、傷から噴出する血飛沫は瞬時に凍り、小さなツララとなって更なる攻撃となった。

 テメレイアはもっぱらウェイルのサポートに徹した。

 敵の神器からの攻撃を、軽い身のこなしで交わしながら、常にウェイルの陰にポジションを取る。

 テメレイアの詩の力は、ウェイルの氷の剣に魔力を注ぎ、魔力の充実した剣は、さらに敵を切り裂かんと猛威を振るう。

 剣は次第に巨大化していく。

 魔力のおかげでウェイルが重いと感じることはない。むしろその逆だった。

 大人二人分以上の長さとなったこの巨大な剣ですら、身体の一部になったかのように軽やかに動き、素早い斬撃は敵を切り刻んだ。

 巨大化した剣は、さながらハンマーのような役目も果たした。

 思いっきり剣を振り下ろしただけで、甲板の床に深々とひびが入り、大きな風穴が開く。

 テメレイアの身のこなし、ウェイルの猛攻。

 まるで鬼神の如く敵を切り裂き、舞い歌うウェイルとテメレイアの姿に、敵は次第に躊躇し、攻撃の手を緩めた。

 その隙を、とっくに自分担当の敵を片づけていたフレスベルグは見逃さない。


『我の存在が偽物かどうか、その身体で教えてやろう。――凍れ』


 フレスベルグの強い殺気に、ウェイルとテメレイアはすぐに身を翻した。

 目の前に広がるのは、季節違いの猛吹雪。

 小さな氷は、細かい宝石のようにキラキラと光り輝き、正面から見る者を刻み凍りつかせる。

 吹雪の後に残るのは、水晶の様な氷像達。

 氷の彫刻へと変り果てた仲間の姿に、何とか吹雪の被害を逃れた信者達は、恐怖を感じることすら出来ず、その場で呆然としていた。

 しばらくして、ようやく気が付く。

 自分達が相手をしていたのは、正真正銘の龍。

 自分達の信じる『神』であったのだということを身体の芯まで実感させられたのだ。

 二人と一匹の進む道を、止めることが出来た敵信者は一人としていない。

 誰も彼も、恐怖に表情を歪ませ、後ずさりしながら道を開けていく。


「後はミルとイルガリだけだ。ウェイル、行こう」

「ああ。フレス、背中に乗せてくれないか。もうすぐこのオライオンに衝撃が走るはずだからな」

『うむ。二人とも、さっさと乗れ』


 二人を乗せたフレスベルグは、蒼い翼をはためかせると、ふわりと宙に浮き、そのまま上空へ躍り出た。

 上昇する際に、船長室の窓が見える。

 テメレイアはそこに目的の人物がいることを確認した。


「ミルだ……!!」

『……ミドガルズオルム。幾多の時を超えた再会がこんな形になるとはな……!!』


 ミルの様子がおかしいことは、フレスベルグもすぐさま理解できたようで、その表情は龍の姿なのでよく判らないものの、おそらく落胆していたことだろう。


「レイア、そろそろだ。しっかりしがみ付いていろよ!!」

「……うん……!!」


 その直後だった。

 激しい閃光と轟音が鳴り響くと共に、オライオンに巨大な爆発が起き、激震が走る。


「……うう……!!」


 テメレイアは吹き飛ばされないように、必死にウェイルへしがみ付く。

 衝撃と光が収まり、ゆっくりと目を開けると、そこには黒々とした汚い煙を包まれながら降下していくオライオンの姿があった。


「サグマールとナムル氏の作戦が成功したみたいだ」

「でも、オライオンにはまだミルが……!!」

『心配するな。奴だって龍の端くれ。簡単には死なんし、むしろいぶり出すのに丁度良い。――……来るぞ!!』


 フレスベルグの視線の先。炎上するオライオンから、怪しく輝く緑の光が、周囲をまばゆく照らしたのであった。


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