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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第十一章 教会戦争完結編 『誰が為に、君が為に』
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シンクロナイズ

「あの遺体、おかしいんだ」

「何がおかしいのさ!」

「外傷がないんだ。どこにもな」

「外傷がない……?」

「そうさ。あれらの遺体には、おかしいことに傷が一つもない」


 異教徒狩りという行為は、それこそ残虐の一言に尽きる処遇だ。

 考え方や信仰の違いという、ほんの僅かな違いだけで他人をゴミのように扱っている。

 普通、異教徒狩りは、敵への見せしめと自らの正当性を主張、いわば正義を名乗るために剣を用いて行うことが多い。

 故に異教徒狩りが行われる際には、血塗れの地獄絵図が後に残る。

 しかし確かにソクソマハーツは異常な光景となっているものの、真っ白な都市が血の赤で染まっているということはない。

 それよりも、物損が気になる。

 並び立つ白き建物は、壁や窓などが容赦なく破壊され、美しかった都市の景観を損なわせている。


「それに敵の様子もおかしい。いくら敵の信者がオライオンに集結していたとしても、都市部に入ってから一度も出くわさないのは変だ」


 森に敵の信者がいないのは、ある意味では当たり前のことだが、都市部にも誰一人いないというのは不可解すぎる。


「外傷を与えずに人を殺す方法。俺には心当たりがある」

「……ボクも……ボクもよく知っているよ……!!」


 ギリギリと歯ぎしりすら聞こえる。

 フレスはもう翼を隠す気なんて毛頭ないようだった。


「フレス。気配を探れるか……?」

「大丈夫。出来るよ」


 フレスはそっと目を閉じた。

 外傷のない遺体と、アルカディアル教会の特徴。

 それを鑑みれば、ここには間違いなくあの忌々しき連中がいる。


「――ウェイル!! 治安局のところ!!」

「ああ、判った!」


 フレスの合図でウェイルが走る。


「避けろ!!」


 遺体に祈りを捧げていた治安局員の一人を突き飛ばす。


「――ぐっ……!!」


 その直後、ウェイルの肩に激痛が走った。


「な、何が……!?」


 突き飛ばされた局員の呆然とする顔が目に映る。


「デーモンだ!! 奴らはここに多数のデーモンを放している!!」


 外傷のない遺体は、デーモンを召喚する為の代価として用いられたのだろう。

 人は皆、多少個人差はあるものの、魔力を持って生きている。

 普段、それらの魔力の一部を抽出して神器の発動に使うのだ。

 人の持つ魔力を、人の致死量以上に抽出し、それを神器に注いでデーモンを大量に召喚したというわけだ。

 ここにある大半の遺体は、デーモンを召喚する為のいわば生贄であったのだ。


「すぐさま戦闘配置に着け! 敵を迎撃する!」


 治安局員は、最初の一瞬こそ呆気にとられていたが、流石は訓練を受けてきただけのことはあり、すぐさま危険排除のために行動を開始した。


「ウェイル! 無事!?」

「問題ない。かすり傷だ」

「デーモンには毒を持つ種もいるから、すぐに治療するよ!」

「それもいいが、先に目の前の敵だ。あいつを放置したままだと治療に専念出来ないだろう?」


 唐突に表れたのは大型の下級悪魔(レッサー・デーモン)

 それも一体だけでなく、三体同時に現れた。

 治安局員達が迎撃にあたっているが、彼らでは時間がかかるだろう。


「俺達がいかないとな」


 腰に差した神器『氷龍王の牙(ベルグファング)』を抜くと、ウェイルはすぐさま氷を展開させて、腕と融合させる。


「……氷龍王の牙(ベルグファング)……」


 その様子を見ていたフレスは、ぽつりと呟いた。

 ウェイルには伝えてないが、氷龍王の牙(ベルグファング)はフレスにとっても特別な神器だ。


 ――何せフレスの身体の一部を用いて製造されているのだから。


(……ちょっと、試してみようかな)


「ウェイル、ボクに合わせて」

「ああ」


 ウェイルと同様に、フレスも腕に氷を纏わせ、刃を精製した。

 一度だけタイミングを合わせるために二人は視線を交わすと、治安局員を押しのけてデーモンへ切りかかった。

 ウェイルが氷の剣を振るったその時、なにやら不思議な感覚を覚えた。

 隣にて剣を振るうフレスと、なんだか意識を同調(シンクロ)しているかのような、そんな感覚に陥った。


「ウェイル、左」

「そっちは上だ」


 互いに指示を送りあう。

 二対の氷の剣は、的確にデーモンの心臓を貫き、ドス黒い血の雨を降らせていく。


「残るは一匹だね」

「ついでだ。一緒にやるか」


 氷龍王の牙(ベルグファング)が、爛々と輝いていることにウェイルは気付いた。

 氷の剣全体に魔力が充実しているのが判る。

 その影響だろうか、身体がとても軽い。

 今なら龍であるフレスの動きにだって遅れはとらないだろう。


「グルウウウ…………、グゴオオオオオオオオオオ!!」


 残ったレッサー・デーモンは、その汚らわしい翼をはためかせ、二人を中心として高速で旋回する。

 とても人間の目では捉えきれないほどの超高速であったが、それを見てたじろいだのは治安局員だけ。

 ウェイルとフレスは、その動きを前にしても微動だにもしなかった。

 超スピードで二人の背後を取ったレッサー・デーモンは、チャンスとばかりに牙を剥く。


 ――二人が、その動きすらも完全に把握していることすら知らずに。


「ウェイル」

「フレス」


「「――真後ろ」」


 二人は振り返り、指示通りに剣を突き出した。

 その刹那、レッサー・デーモンは二対の剣の串刺しとなり、全身を凍りつかせて砕け散った。

 断末魔すらあげることの出来ないほどの、一瞬の出来事だった。


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