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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第十一章 教会戦争完結編 『誰が為に、君が為に』
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治安局駐屯地にて


 ――医療都市ソクソマハーツの北部にある、治安局駐屯地。


 テメレイアの予想するアルカディアル教会が動き出す時まで、残り一日と半。


「お待ちしておりました、プロ鑑定士殿」


 ステイリィの連絡がうまく伝わっていたようで、ウェイルとフレスが治安局駐屯地へ訪れると、ほとんど検査もなしに中へ迎え入れてくれた。

 しかし、それでも治安局員達の二人を見つめる視線は険しい。

 それもそのはず、今やこの地は厳戒態勢の敷かれている、対アルカディアル教会の最前線。

 誰もがいつ始まるか判らない教会戦争に臆し、緊張し続けているのだ。

 そんな中、呑気にも敵地に侵入しようとやってきた鑑定士に、彼らは当然難色を示していた。


「鑑定士殿。ここまでおいでいただいて進言するのもおこがましいとは思いますが、お止めになった方がよろしいかと。いくらアルカディアル教会が違法品を大量に所持している可能性があるとはいえ、今はタイミングが悪すぎます」

「……ステイリィの奴、ナイスだな」


 ステイリィは、ウェイル達が合法的にソクソマハーツに入れるように、アルカディアル教会は違法品を大量所持しているという真っ当な理由を作ってくれていたようだ。


「治安局には迷惑をかける。悪いな」

「……本気、なんですね」

「これもプロ鑑定士の仕事なんでな」


 治安局員も、薄々とだが感じていることだろう。

 ウェイル達がここへ来たのは、表向きの任務以外にも別の目的があるということを。


「判りました。我々は我々の仕事をするだけです」


 ウェイル達の覚悟を見定めた彼は、今までの真剣な表情とは打って変わって、柔和な笑みを浮かべてくる。


「お二人を無事ソクソマハーツへ入都させること。それが上官から課せられた任務です。我々にお任せく下さい」


 その拳をドンと胸に当て、任してくれと言ってくれたのだ。

 自分達の都合に巻き込ませてしまうことに、ウェイルは罪悪感から、


「……すまないな」


 と、つい漏らしてしまった。

 対する彼は、そんな辛気臭い顔をするなとでも言うかのように、ウェイルの肩を叩く。


「謝るくらいなら最初から無理しないで下さいよ」

「……全くその通りだな」

「今からその調子だと、貴方の任務に支障をきたしますよ。我々がソクソマハーツまで送ります。ですからご安心を」


 嘆息する治安局員に、もう一度「すまない」と謝ると、彼も「謝りすぎですよ」と笑ってくれた。


「ステイリィ上官の命令ですからね。我々も貴方方のように無理をせねば、後で怒られてしまいます」


 彼がそう言うと、駐屯地局内から数人ほど武装した治安局員が現れた。


「彼らと私が、貴方方をソクソマハーツの都市部まで案内します。道中、敵に遭遇する可能性も有ります故、護衛というわけです」

「そこまでしてもらわなくてもいい。後は俺達だけでなんとかできる」

「そう仰られても困ります。言ったでしょう? 貴方に怪我一つでもされたら、ステイリィ上官にどれほど叱られることか」


 ニハハと笑うステイリィが脳裏に浮かぶ。

 なるほど、厄介な上司を持つ彼らは苦労する。

 それでもウェイルはステイリィを羨ましく思えた。

 なんだかんだ言って、ステイリィは部下から慕われているのだ。

 でなければ、一触即発の空気漂うソクソマハーツに、命令とはいえ護衛に来てくれるなどあり得ない話だ。


「それに、我々も近いうちにソクソマハーツへと進行を開始します。その下見ということで。ですので、あまりこちらのことは気にしなくてもいいです。任務ですから」

「すまないな」


 再度ウェイルは彼らに頭を下げると、彼らも満足げに頷き返してくれた。


「ソクソマハーツへの治安局の介入はもう間もなく始まります。そうなればソクソマハーツは戦場になることは必至です。できる限り急ぎましょう」

「ああ、頼む」


 治安局にも色々と思惑があったのか、ソクソマハーツ行きの許可はすぐに下り、ウェイル達はソクソマハーツへ潜入することが出来るようになった。




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