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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第十一章 教会戦争完結編 『誰が為に、君が為に』
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『狂い荒ぶる大地の龍神―クレイジー・ドラゴン―』


 ――テメレイアがウェイル達の元を訪れていた同日。


 龍姫ミルの巻き起こした大規模な教会暴動は、イルガリにとって喉から手が出るほど欲しかったものを、彼にもたらせた。


「おお、これが……!!」

「はい。先日の暴動にて、ついに手に入れてまいりました。全ては龍姫様の扇動があってこその賜物です」

「ククク、流石は龍姫様。目立つお方だ」

「おかげで他教会に忍び込むのも楽でしたよ。神器暴走事件が懸念されていた時と同じタイミングでの暴動でしたので、彼らも神器を持って避難するわけにはいかなかったのでしょう。避難先で神器が暴走する恐れがありますからね。ですので普段ならお目に掛かれないような貴重な神器すら、そっくりそのまま残っていました」


 イルガリを筆頭とするアルカディアル教会は、教会都市サスデルセルに龍姫ミルを送り込み、暴動を起こさせた。

 ミルにはサスデルセルのラルガ教会に、テメレイアが拉致されたという大嘘を吹き込んだのだが、これが想像以上に効果的だった。

 イルガリの目論見通り、いやそれ以上にミルは激しく暴れ回り、サスデルセルは火の海に包まれた。


 それと同時並行で、ミルと別行動を取っていた部隊がある。

 その部隊とは、いわば火事場泥棒(・・・・・)部隊。

 イルガリ直属の部下だけで結成されたその部隊の目的は、他教会が所有している貴重な神器を混乱に乗じて奪い取ることであった。

 部下の男がイルガリに差し出した神器とは、血のように真紅に染まった石の入った指輪形の神器である。

 赤い石は、魔力を込めていないのにも関わらず、色が渦を巻くように怪しく輝く、気味の悪い代物だ。


「素晴らしい。伝承通りだ……」


 イルガリはその指輪を取ると、舐めるように石を見つめた。

 その恍惚とした表情に、部下も思わず笑みが漏れだす。


「お気に召して頂けましたか?」

「無論だ。まさに伝承通りの神器。これでもう『精神汚染針(ヒュプノコラプション)』の方は用済みだ」

「イルガリ様。その伝承というのは、一体どういうものなのですか?」

「聞いたことはないか? 『狂い荒ぶる大地の龍神(クレイジー・ドラゴン)』という伝承を」

「イルガリ様。無知な私とて、流石にそれは知っています。荒ぶる大地の神が、アレクアテナ大陸を滅ぼさんと大暴れしたという他教会の伝承ですね」

「実はその伝承の張本人こそ、我々の龍姫であるのだ」

「なんと……」

「伝承では龍姫が人を恨むのは、信じていた人間に裏切られたからとされているが、真実はそうじゃない」

「そ、そうなのですか……!?」

「実際にはこの神器を用いて人間を操り、裏切りをしかけたのだ」

「その神器には、人間を操る魔力があると」

「人間だけではない。こいつは何だって操ることが出来る。動物も神獣も、そして――龍も、な」

「なるほど、それは素晴らしいお考えです。何せそろそろ生贄も尽きる頃でしたから」

「『魔王の足枷(サタン・チェーン)』は優秀な神器だが、いかんせんコストパフォーマンスが悪い。強大な魔力を持つ龍を抑え切れるというのは素晴らしい力だが、我々としても維持の限界が来ていただろう? だがこいつさえあれば、『魔王の足枷』も必要なくなる。何せ魔力を抑えなくてもよいのだからな」

「龍姫様自身をイルガリ様の手足とするわけですね」

「龍を飼い馴らすのも悪くはない。今まで使ってきた『精神汚染針』は、龍には一切効果がなかった。だがこれからは私が龍姫を直接操ることが出来る。そう出来るだけの力を、この神器は持っている」


 龍すら操ることの出来る精神介入系(スピリチュアルクラス)最強の神器。

 それがイルガリの欲した神器だった。


「テメレイア氏はいかがいたしましょう?」

「あやつは以前から怪しい動きを見せていたからな。やたらと龍姫に懐かれて、変な情でも出たのか、魔王の足枷から龍姫を解放しようと画策していた。今も虎視眈々と龍姫の解放のために動いていることだろう」

「いいのですか? 放っておいて」

「構わない。すでに切り札はこちらが握った。今更『魔王の足枷』がどうなろうと、龍姫は我々の支配下だ」

「アテナはいかがしましょう。オライオンクラスの戦艦を宙に浮かべるなど、アテナの魔力がなければ難しいでしょう」

「それも龍にやらせればよい。龍は神器についてプロ鑑定士よりも詳しく、扱いにも長けている。それにオライオンは現時点で三日間分の航行用魔力を、すでにアテナから受け取っている。三日もあれば全てが終わっていよう」


 手に取ったその指輪を、イルガリは右手の中指にはめた。

 妖しく煌めく指輪の石は、持ち主の悪意に呼応せんと混沌に渦巻いてみせた。


「残念ながらテメレイアはもう用済みだ。龍姫のコントロールが可能となった以上、奴はもう必要ない。奴の頭脳はいずれ我々の脅威となる。リューズレイドに伝えよ。奴を消せ、とな」

「仰せの通りに」


 伝承の再現。

 いや、伝承では神器は人間を操っていた。

 故にミルは大暴れし、アレクアテナ大陸は崩壊寸前となった。

 だが今回は違う。


 ミルが暴れる要素なんてどこにもない。


 ――ミル自身が、操り人形となるのだから。





 ――――


 ――




「……レイアが用済み……!? 詳しくはよく聞こえなんだが……レイアはここにいるのか……? それに……わらわを操るって……!?」


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