デイルーラ社の使命
ラングルポート全域に出されていた緊急避難警報も、三時間後には解除された。
デイルーラ社の主導で、行方不明者の安否確認や負傷者の手当てが行われていた。
プロ鑑定士協会、並びに治安局は、此度の事件の首謀者をアルカディアル教会と断定し、捜査に踏み切ることにした。
荒れ果てたガングートポートの修繕を行うように早速指示が回る。
元の姿に戻ったフレスを連れて、ウェイルはデイルーラ本社へと戻ってきた。
「ウェイル、無事だったか……!!」
「まあな、……ってユースベクス、何泣いてるんだ!?」
「バカ野郎!! ダチが危ない目に遭ってたんだ、無事を確認できたんだから涙くらい流させろ!!」
オイオイとなく社長に、社員一同、暖かい眼差しを送っていた。
「俺はあの大艦隊が来た時、己の無力さを恨んだよ。いくらデイルーラ社のトップでも、これほどの緊急事態には何もできないということを痛感した」
「いいや、そんなことはない。デイルーラ社の社長たるお前にしか出来ないことはあるだろう? 住民達の避難を率先してやったそうじゃないか」
ウェイルが見回すと、社員達は皆首を縦に振っていた。
代表してイザナが前に立つ。
「社長の迅速な指示のおかげで、社員に死傷者はいません。地域住民も社長に感謝していますよ」
「だが被害は出てしまった。散々暴れ回った軍艦は、元々我が社のもの。地域住民には償いきれない罪を犯した」
「それは違うぞ、ユースベクス。罪を犯したのはアルカディアル教会でお前じゃない。あの軍艦だって、他大陸からアレクアテナ大陸を守るためのものだろう? 誰もお前を攻めやしないさ」
「そうだって、社長さん! ボクらは社長さんから大切なものを沢山守ってもらったんだ。だからその恩返し! それだけだよ、気にしないで!」
フレスの言う大切なものというのは、王都ヴェクトルビアの事。
デイルーラ社の協力がなければ、リベア社の株式総会では負けていたに違いない。
「ユースベクス。お前に落ち込む暇なぞない。さっさとラングルポートを復興させろ。それがデイルーラ社の使命だろ」
「う、うむ。そうだな、その通りだ」
「そんな情けない姿を、是非ヤンクに見せてみよう」
「止めてくれ! 俺は親父の拳には勝てんのだ……」
そんな情けない姿を堂々と晒すところも、ユースベクスが社員から愛される所以であろうか。
「よし、イザナ! 負傷者の治療の後は、被害のあった場所を全て調査しろ。今回の事件で被害に遭い途方にくれているものは全員デイルーラ社で雇ってしまえ。こき使ってさっさと元の生活に戻させるようにするぞ」
「了解しました、社長! それでは三つの港に調査団を送りましょう! しばらく昼寝する時間はありませんよ?」
「ふん。眠気などとうに吹っ飛んでおるわ」
やる気に満ち満ちるデイルーラ社一同。
ラングルポートの復興はすぐに終わる事だろう。
「そうだ、俺の弟子がイザナから手帳を借りたんだ」
イザナの手帳をユースベクスに手渡す。
「そういえば俺も中を見たことは――――!?」
ページをめくるたびに、ユースベクスの顔が固まる。
「イザナ?」
「はい、何か?」
「この社長観察日記というのは何かね?」
「ああ、それですか。文字通り、社長の観察日記です。社長ったら毎日違った面白いことをしますからね。お昼寝一つにしても寝相が違ったりするんですよ」
「これをまさか毎日つけてるのか……?」
「ええ。毎日つけて、定期的に社内新聞で公表しておりますが?」
「今すぐに廃刊だ!! そんな新聞は!!」
「社員からのウケはいいのですけどねぇ」
こんな社長と秘書の漫才も、デイルーラ社の名物と言えよう。




