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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第十章 貿易都市ラングルポート編 『暴走!! 超弩級戦艦!!』
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弩級戦艦の砲撃

「ギルさん、早く伏せて!!」

「え!? ……うわぁあああああ!?」


 集約された光は、怒涛の光線となって、地上へと撃ち放たれた。

 光と轟音と、そして爆発風が、地上に広がっていく。

 察覚に長けたイルアリルマの咄嗟の指示にて、どうにか吹き飛ばされずに済んだ。


「なんなの、今の!?」

「強大な魔力が飛んでくるのを感じたんです! 状況は私にはどうにも!」


 見ると港の方から黒い煙が上がっているのが判った。


「セントラルポートが撃たれたらしいぞ!!」

「すげぇ煙だ、セントラルポートは無事なのか!?」

「酷い……!! なんなの、これ……!!」

「今の光線って、後ろの軍艦から発射された奴だろ……!! あんな力を持つものが、十二隻あるとか……」

「一番デカい奴が撃ってきたら、一体どうなっちまうんだ!?」


 人々はその威力を目の当たりにして、混乱し収拾がつかなくなる。


「慌てるな! 皆、落ち着いて避難しろ! デイルーラ社の地下倉庫だ!」


 慌て怯える受験者に活を入れるサグマール。

 しかし本人も内心混乱の極みにあった。


(ナムル殿の話によれば、あれはアルカディアル教会の犯行に違いない。だとすれば、この後は……!!)


 段々と都市部へ近づく大艦隊に、恐怖せざるを得なかった。




 ――●○●○●○――





(急がないと……!!)


 しかしどう焦ったところで、ウェイルの行き先は海の上だ。

 海から這い上がり、遠ざかっていくオライオンまで、どうやって戻ればよいのか。


(……そんなことより、まず助かるかどうかも判らないがな……!!)


 この高さから海に叩きつけられるのだ。

 その衝撃は計り知れない。

 ウェイルが衝撃に備えて身を丸めようとした、その時だった。


「ウェイルーーーー!!!!」


 酷く懐かしく聞こえたその声に、安心感すら覚える。


「フレス!?」


 青白く輝いた翼を広げたフレスが、ウェイルを助けるために飛んで来ていた。


「手を伸ばして!!」

「ああ!」


 海に叩きつけられる寸前。

 間一髪のところでウェイルはフレスの手を掴み、空へと舞い戻った。


「フレス、どうしてここに!?」

「ウェイルを助けに来たんだよ! 後色々と伝えないといけないことも!」

「試験はどうしたんだ!?」

「ヘヘン、試験と師匠の命、どっちに価値があるかなんて、鑑定士じゃなくたって判るよ!」

「フレス……!!」

「ごめんね、本当はもう少し早くウェイルに会いたかったんだけど、道に迷っちゃって。でもカッコいい女の人から借りた手帳のおかげで、なんとかここに辿り着けたよ」


 空いた片手に手帳を借りる。


「……イザナの手帳か。あいつ、本当に良い秘書だな……!!」


 ちらっと見ただけでイザナのものだとすぐに判る。

 何せその手帳には、スヤスヤと社長室で昼寝をかますユースベクスの似顔絵が描かれていたのだから。


「フレス。言わなければならないことがある。この事件を操っているのはテメレイアだ」

「……レイアさんが」

「あいつが詩を詠み、軍艦に魔力が満ちる前に止め――」


 セリフを中断させに来たかと疑うタイミングで、戦艦に魔力光が集約し、大砲からは怒涛の光線がセントラルポートへと発射された。


「レイアの奴、早すぎるぞ……!!」


 こうなればもう、レイアを止めても意味を為さないことになる。


「ウェイル! もうこの艦隊を全部ぶっ潰した方が早いよ!」

「ああ、それしかないようだ」


 十二隻の弩級戦艦から、次々と発射される魔力の光線。

 それらを全て止めないことには、ラングルポートは火の海になる。


「オライオンは後回しだ。とにかく先に攻撃を止めさせる」

「ウェイル、ボクを元の姿に戻して!」

「いくぞ、フレス!」


 いつ以来だろうか、二人は空の上で唇を交わしたのだった。





 ――●○●○●○――





「うまく行きましたな」


 オライオン上でほくそ笑むのはリューズレイドであった。


「後はオライオンを持っていくだけですか」


 顎を手で触りながら、煙の上がる都市を見てそう呟いていた。


「だね。僕等にとってオライオン以外は別にどうでもいい。どの道、船員は誰一人乗っていないんだろう?」

「はい。ドレッドノートは全てレイア殿の歌で制御できるということなので。皆オライオンに乗船しておりますぞ」

「よし、なら引き上げよう。引き続き囮のドレッドノートには攻撃をさせる。怖い存在もいることだし、ささっと引き上げよう」


 テメレイアの歌が、空に響き渡る。

 シルヴァンの『天候風律(ウルトラファン)』を操ったときと同じように、似たような神器を使って雲を作り、隠れるようにラングルポートを去った。



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