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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第十章 貿易都市ラングルポート編 『暴走!! 超弩級戦艦!!』
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最終試験、開始!

「まさかラングルポートに来ることになるだなんて……。信じられないよ……」


 運命の悪戯とはこういうことを言うのだろうか。


「だね。でも、丁度いいかも」


 同意したのはギルパーニャ。

 彼女の師匠シュラディンも、このラングルポートを訪れているというし、早めに合流したいと願っていた二人にとっては、ある意味幸運といえる。


「う~ん、でも最終試験がマリアステル以外で行われるなんて、初めてのことなんですよね……」


 口に指を当てながら、イルアリルマはそんなことを呟いた。


「そうなの?」

「ええ、前代未聞です。何かあったのかしら」

「どうなのかな。でも唐突だったよね。場所移動しろっていう指示」

「だね。でも関係ないよ。場所がどこでもボクらは合格するだけだもん。ね? ギル!」

「そうだね。リルさんも一緒にね」

「ええ、そうなれば最高ですね」


 受験者達は、全員プロ鑑定士協会貸切の汽車に乗って、ラングルポートまで移動してきた。

 ラングルポート駅前に集合した受験者達は、審査員の鑑定士達についてくるようと言われた。


「どこに行くんだろう……?」

 

 歩き始めて十分。

 そろそろ目的の場所に着いてもおかしくない頃合いだ。


「もしかしてデイルーラ社かな?」

「ラングルポートと言えば三つの港とデイルーラ社。港の方じゃないとするとデイルーラ社以外考えられませんね」

「デイルーラ社かぁ。ヤンクさんの会社だったよね」


 確かウェイルはここを訪れているはず。

 とすれば合流できるかも知れない。


(なんだか嫌な予感がするんだよね……)


 そして見えてきた高い建造物。

 その建物は木造りでも石造りでもなく、鉄筋造りであった。


「流石デイルーラ本社! アレクアテナ大陸の一般的な建築構造とは大きく異なる造り。時代の最先端を行く建築方法です!」

「師匠の知り合いの不動産鑑定士によると、あの建物一つでマリアステルの街一角を買い取れるほどの価値があると言われているらしいよ」


 ギルパーニャがシュラディンから聞いた知識を披露する。


「あの中にウェイル、いるのかなぁ……」


 見上げてみても、ウェイルの姿など見えはしない。


「あ、皆また移動し始めたよ」


 どうやら試験は本社内で行うのではないらしい。

 ちょっぴりがっかりするフレス。


「あ、あれ、プロ鑑定士協会の人達だ! サグマールさんもいる!」

「どうやら試験はここでするみたいですね」


 三人の前に現れたのは、昨日ウェイルが入っていた巨大倉庫であった。





 ――●○●○●○――





「これよりプロ鑑定士試験、最終試験を行う」


 サグマールの宣言が響き渡ったのは、試験会場に抜擢された、このデイルーラ社在庫保管倉庫。

 試験開始当初いた二千人以上の中から勝ち抜いてきた、およそ五十人の受験者が、今か今かとルールの説明を待った。


「君らの実力はすでに証明されている。故に最終試験内容は実に単純な内容にした。最終試験の課題とは、この倉庫の中から、以下の品物を入手してくること。簡単な真贋鑑定だ」


 サグマールはポケットに入れていたリストを取り出し、読み上げた。


「鑑定品は全部で四つ。一つ目は絵画。セルクナンバー247 『龍の咆哮』、二つ目は時計技師アトモス作の腕時計『アトモスフィア・コレクション』、シリアルナンバーは非公開。三つ目はサバティエルの鍛冶師シラハカが作成したナイフ『白夜走(はくよばしり)』。最後の品はここラングルポートの限定プルーフ硬貨。1/2オンスゴールド、ガングートポート開港100周年記念硬貨、シリアルナンバー77。以上の四つの内、本物があれば一つを提出してもらう」


 サグマールの提示した鑑定品に、受験者達はざわめいた。

 合格条件の四つの品は、どれも最高級の芸術品であったからだ。

 そんなレアものがこの倉庫に眠っているのだ。

 プロ鑑定士志望の人間だ。希少な品が目の前にあると聞いて黙ってはいられない。

 それと同時に、受験者の顔もこれまで以上に真剣となった。

 プロ鑑定士協会から明確な数が示されたからだ。

 そう、今回の試験。合格者は四人までしかでない。


「たった四人なんだ……」

「それも条件をクリアした四人です。下手をすれば一人だって合格できないかも知れません」


 イルアリルマの指摘通り、結局条件である鑑定品を見定めなければ即失格なのである。

 上限は四人と判ったが、それは上限なだけであって、最低合格人数ではない。


「気を引き締めないとね! フレス!」


 ギルパーニャは自分を奮い立たせ、フレスの背中をポンと叩いた。


「う、うん」


 しかし、フレスの反応はやけに薄い。


「フレス? どうしたの?」

「なんでもないよ」

「もしかしてまだあのこと、気にしてる?」


 あのこととは、マリアステルにてサグマールから聞いた『龍姫』という単語のこと。

 イルアリルマが隣にいるので、詳しい言葉を避けてくれた。


「……うん。どうしても気になってさ」

「あまり気にしちゃダメだよ? 今は試験に集中しないとね。フレス、プロになるんでしょ?」

「……うん! なる!」


 こんなところで余計なことに気を取られて試験を落とすわけにはいかない。

 気持ちに切り替えが大事だ。フレスはそう心に念じる。


「各自倉庫に入った後は、一度だけしか品を持ち出すことが出来ない。また持ちだせるのは一品だけだ。各自が鑑定し、間違いないと太鼓判を押す品をプロ鑑定士協会に提出してもらう。制限時刻は本日の午後三時までだ」


 サグマールのルール説明が終わる。

 プロ鑑定士試験は今日の午後三時に、全ての日程を終える。


「チャンスは一回ってことだね」

「慎重にいきませんとね」

「……うん!」


「それでは最終試験の開始を宣言する! 各自、倉庫に入りたまえ!」


 三人は揃って、倉庫に入る。

 互いに視線を交わすと、健闘を祈り合った。


「ここからはライバル同士だよ。フレス、リルさん」

「ええ。私も全力を尽くします」

「ボク、負けないからね」


 三人は同時に頷いて、分かれて鑑定に向かった。

 フレスには気になる点がある。

 しかし、今。今だけはここに集中しようと己に誓った。


「えい!」


 パンと良い音が響く。

 顔を叩いて気合を入れると、真剣な面持ちで、目的の品を探しに行った。



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