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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第十章 貿易都市ラングルポート編 『暴走!! 超弩級戦艦!!』
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教会争いと神器暴走


「俺はとある取引の為、アルクエティアマインに赴いた。金脈の発見は我が社にも膨大な利益をもたらす可能性があるのでな。そして取引の最中、鉱山の方から大爆発が起こったのだ。原因は人為的なもの。アルカディアル教会の連中の仕業だった。信者数人が爆弾を抱えて自爆したそうだ」

「じ、自爆だと……」


 あまりにも狂気的すぎるやり方だ。


「その爆発事件以降、ソクソマハーツ側からアルクエティアマイン側へ正式な通告がなされた。金脈は金霊山ルクイエで発見された。ルクイエはソクソマハーツに隣接する山だ。故に鉱脈の金の半分は我々に所有権があるとな」

「金を巡って争いが過激化したのか」

「そうだと言いたいが、俺にはそれは建前に感じるのだ。奴らは最初からアルクエティアマイン、というよりはラルガ教会を目の仇にしていたわけだ。何かしらの攻めるきっかけが欲しかったのさ。当然金を手に入れたいという目的も嘘ではないだろうけどな」


 大袈裟に聞こえるが、それほどまでにラルガ教会とアルカディアル教会の関係は悪い。

 根本的な部分で思想が大きく異なるのである。

 最もたる例として、龍の存在が挙げられる。

 ラルガ教会を含む大半の教会は、龍の存在を悪として位置付けている。

 しかしアルカディアル教会は逆に熱狂的なほどに崇め奉っている。


「その爆発事故。我が社の社員が一人巻き込まれた」

「それは、なんといえばいいか……」

「いやいや、別に死んではいないさ。だが片足を岩に挟まれて切断する羽目になった。当然彼のことは我が社が一生支え続ける。生きていく上で不利にならないようにな」


 普段は遊んでいる姿が印象的なユースベクスが、上に立つ者の顔になっていた。

 ウェイルは改めて思う。

 ユースベクスはいざというとき、本当に頼りになるからこそ多くの部下が付いてくるのだと。

 秘書のイザナも、彼を本気で認めていることが判るし、ヤンクが会社を託した意味も理由も分かる気がする。


「その事件があって以降、ラルガ教会は完全にアルカディアル教会を敵としてみなした。今やアレクアテナ大陸全土で、両者の争いが勃発している。サスデルセルでの事件は、この争いが本格化した一番最初の事件だったってわけだ」


 事件の前兆は、それこそたくさんあったらしい。

 小さな争い事はサスデルセルだけでなく、様々な場所で発生していたようだ。


「教会争いについてはこんなところだ。だが事件はもう一つあるだろう?」

「神器の暴走事件か」

「これについては本当にサスデルセルから発生した。それより前はこれほど大規模な神器の暴走はなかった」


 シュラディンはポケットから何やら取り出してカウンターに置いた。


「なんだかわかるか?」


 置かれたのは、ほとんど原型を留めていない、所々溶けていることの判る小さな器。


「少し見せてもらう」


 実際に手に取って、見回してみた。

 重さ、硬さ、叩いた時の音。


「ミスリルか。そしてこの大きさ。間違いない。ラルガポットだ」

「この汚い鉄屑がラルガポット!?」


 ユースベクスも手に取り見回している。


「跡形もないじゃないか……」


 小さな壺であるはずのラルガポットが、溶けて砕けて小さな皿になっていた。


「サスデルセルでは、このラルガポットが一斉に爆発したのだ」

「ラルガポットが爆発!? それ、尋常じゃないほどの被害が出るぞ!?」


 神父バルハーによって悪魔の噂が流され、大量に売れたラルガポット。

 一部贋作だったとはいえ、噂の影響で大半の住民が本物のラルガポットを所有していた。


「大変な騒ぎだったそうだ。ラルガポットを複数個所有している人達もいてな。被害は相当なもんだったと聞いている。教会の支部が撤退したとはいえ、サスデルセルでは未だにラルガ教会を信仰する人間は多い」

「ここでもラルガ教会が出てくるのか……まるで狙われているようだ」

「本当に狙われているかも知れんがな」


 教会間の争いと神器暴動の発生時期は、偶然とは思えぬほど被っていて、しかもどちらも被害者はラルガ教会の信者だ。

 それからシュラディンが大陸各地で集めた事件の詳細を語るも、どれもこれも被害者はラルガ教会の信者であった。

 関係がないとは絶対に言えないレベルで、それは露骨に関係性を匂わせた。


「実はラングルポートでも何度か神器が暴れてな……」


 デイルーラ社の倉庫に保管してあった小さな人工神器が勝手に動き出して、小さなボヤ騒ぎがあったそうだ。


「今はまだ小さな神器でしか暴走は確認されていない。それが今後もし大型の神器が暴走を始めたなら、被害は今までの比ではないことになる。我が社も多くの神器を使用しているし、サスデルセルやシルヴァンだって、大型の神器を用いて環境を整えている」

「シルヴァンか……」


 ウェイルの脳裏に過ぎるのは、シルヴァンにある大型神器、『もう一つの原始太陽(ソラリス・モノリス)』、そして『天候風律(ウルトラファン)』だ。


(前者については意図的に神器が破壊されていた。しかし神器内の魔力回路を破壊するなど人間の手では難しかった)


 しかし、もし『もう一つの原始太陽(ソラリス・モノリス)』の破壊方法が、神器暴走の原因と同じであれば。


(あんな破壊方法も可能だということか)


 そういえばあの時、ウェイルとフレスを襲った賊とは、一体何者だったのだろうか。

 フレスの神器修復を邪魔しようとしていたが、どうしてか途中で逃げ去っていった。

 その後すぐに光が戻ったので、顔を見られまいと逃げたとすれば辻褄は合う。

 だが、それ以上の何らかの意図がないとは言い切れない。


「プロ鑑定士として、デイルーラ社に伝えておくとしよう。貴方方の会社には神器が膨大な数ある。もし教会争いと神器暴走が密接な関係になるのであれば、これから被害は拡大する可能性が高い。用心なされよ」

「ご忠告、感謝します。シュラディン殿」


 現状の教会争いに神器暴走事件。

 そしてテメレイアのこともある。

 グラスを回して酒を煽る。


 ……どうやら考えねばならないことがたくさんありそうだ。


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