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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第一部 第一章 教会都市サスデルセル編 『龍の少女と悪魔の噂』
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秘密の会話


「さーて、急いで探さないとね!」


 大ホールを出たフレスは、とりあえず目についた扉を手当たり次第に開けて、部屋を巡回していった。

 降臨祭のことで忙しいのか、その途中誰にも会うことはなかった。


「……あれ? 声がする」


 そんな中、やけに豪華な装飾のなされた扉の奥から、人の話声が聞こえる。


「誰かいる……?」

 

 フレスは扉をこっそり少しだけ開くと、聞き耳を立てる。

 中からは男二人と思われる会話が聞こえてくる。


「おい。『不完全』から課せられたノルマはどうなっている?」

「申し訳ありません、神父様。昨日の夜に何者かの邪魔が入りまして、予定が狂っております。ノルマまで後二人分でございます」

「予定が狂った? あの化け物に何かあったのか?」

「ええ。信じられない話ではありますが、何者かに処分されたようで」

「一体誰がやった!? 常人には成しえぬことだろう?」

「現場にいた者の話ですと、どうもプロの鑑定士が絡んでいるようでして。恐らく昨日神父様のところへ来た鑑定士かと」

「ふむ、あやつか。出来る鑑定士であったが腕も立つとは忌々しい。そういえば降臨祭に招いておったな。もう来ているのか?」

「はい、すでに。ですが心配は入りません。監視の目を光らせておりますので」

「そうか。ならばよい。しかし少し急がねばならぬな。連中との契約は明日までだ。そろそろシュクリアには犠牲になってもらうか」

「そうしましょう。残りの一人は?」

「今日の降臨祭に来ている信者らの中に一人くらいはいるだろう。儀式が始まったら早急に探し出せ! どんな手を使っても構わぬ。くれぐれの鑑定士に悟られぬようにな」

「承知いたしました」


 会話は終わったようで、部下と思われる男が扉の方へと向かってきた。


「い、急いで隠れないと!」


 と、口にしたはいいが、一本道の廊下に丁度いい隠れ場所などある訳がなかった。


「し、仕方ない……。ヤンクさんには見つかっちゃったけど今はこれしかない……!!」


 フレスはウェイルに呆れられたあの時のように、その場にしゃがみ込んで頭を抱え込んだ。


(どうか見つかりませんように……!!)


 そんなフレスの願いは、奇跡的に叶ったようだった。

 元々ランプが点々とするだけの暗い廊下であり、信者達が教会全体の窓を隠したため、さらに視界が悪くなっていた。

 そんな場所にまさか人が(龍だが)しゃがみ込んでいるなんて、誰も思いもしないはずだ。

 フレスの存在など意識の外にもほどがある。

 そういうことで男はフレスに気づくことなく、フレスのしゃがみ込んでいる方とは逆方向側に歩いていった。


「ふー。助かったー!」


 と汗を拭う仕草をして安堵したフレス。


 ――しかし。


「あら? どうしたの? フレスちゃん」

「え!? シュクリアさん!?」


 予想外な人物に声を掛けられた。


「こんなところでどうしたんですか?」


 咄嗟に言い訳を考えるフレス。

 トイレに行くと言えばいいものを、軽いパニックのせいでその考えが浮かばない。


「どうしましたか? フレスちゃん?」

「ごめん! シュクリアさん!」

「フレスちゃん……?」


 フレスが出来たこと。

 それは逃げる事だけだった。

 シュクリアの姿が見えなくなって、ようやくフレスは足を止める。


「ふー、危ない危ない。これで捕まったらウェイルに怒られちゃう」


 怒られることは別に構わないのだが、作戦に失敗してウェイルに迷惑を掛けるのだけは嫌だった。


「それよりも、今の部屋で聞いた会話の意味。一体どういうことだろ? シュクリアさんを犠牲にって……」


 手を組んで考えるフレスだったが、次第に頭は混乱し始めた。


「……う~ん、駄目だ!! こういうことはウェイルに頼もう……。それよりも『あれ』を探さなきゃ」


 今の自分の責務。

 それは『関連証拠』を見つけ、その後にウェイルを呼ぶことだ。

 それから少し奥に行ったところに、明らかに異質な扉が姿を現した。

 その扉には様々な呪文印が施されている。


「あ、これって!」


 フレスはその呪文印に見覚えがあった。

 それは封印術を行うときに使用される印であり、神器によって描かれた円陣であった。


「この扉、封印されている……!!」


 フレスは扉に手を当てると、自分の魔力を呪文印に送ってみた。

 フレスの魔力に呼応するように、呪文印は光り輝く。


「やっぱりね。でもこの程度の封印なら! そりゃああああぁぁぁぁぁぁっ!!」


 フレスは両手に力を込め、巨大な氷塊を出現させると、それを容赦なく扉へ撃ち放った。

 凄まじい轟音が廊下に響き渡ると、放った氷塊は扉と共に粉々に砕け散った。


「さてと、『あれ』あるかな~」


 壊れた扉から中に侵入したフレス。


 そして部屋の中を一通り見回して、一言――


「あ~った!!」



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