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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第九章 図書館都市シルヴァン編 『親友テメレイアとシルヴァニア・ライブラリー』
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回り始めた歯車

 図書館都市シルヴァンを訪ねたことで、ウェイルが多くの情報を手に入れることが出来た。

 カラーコインの謎も解決への糸口を見つけることが出来たし、何より新たな事件の火種をテメレイアが教えてくれた。

 現段階でテメレイアは敵か味方か、判断は難しい。

 もし敵となれば、テメレイア以上に怖い相手などいないと断言できる。

 出来ることならテメレイアとは戦いたくはない。

 それは文面を見るにテメレイアも同意見のようだ。

 気になることは多々ある。

 教会闘争の件もそうだし、神器暴走の事件だって連日後を絶たない。

 アレクアテナ大陸に蔓延る不穏な空気を、否が応でも感じざるを得なかった。

 ウェイルが次に向かうのは『貿易都市ラングルポート』。

 そこから始まるアレクアテナ大陸最大の事件に、ウェイル達はすでに片足を突っ込んでいたのだった。





 ――●○●○●○――





「ウェイル、期待しててね!」


 そう言って、フレスはマリアステルへと一足先に向かった。

 ウェイルに頼まれた案件と、プロ鑑定士試験の続きのため。

 フレスとしてもテメレイアの一件は、なんとなくだが不穏な空気を感じていた。

 テメレイアの手紙から出てきた『三種の神器』という言葉。

 そのうちの一つをフレスは熟知している。


(もしあれが動き出したら、アレクアテナは大変なことになっちゃうよ)


 出来ることなら杞憂であって欲しい。

 『三種の神器』なんて、ただのおとぎ話で嘘っぱち。

 そう笑い飛ばせる未来を願わざるを得なかった。

 フレスはパンッと顔を叩いて気合を入れる。

 事件が起こるにせよなんにせよ、今はウェイルの頼みと試験に集中しよう。


「待っててね、ウェイル! ボク、絶対にプロになるから!」


 一刻も早くプロになり、ウェイルの助けになろうと誓ったフレスであった。





 ――●○●○●○――





 事件の二日後。

 異常なほどあっさりと厳戒令は解除され、ウェイルも普通に第一種閲覧規制書物の閲覧が可能になっていた。

 図書館側の公式発表に、当初ウェイルは耳を疑った。

 「全ては勘違いであった」と、そう報じられたのだ。

 無論そんなはずはない。

 実際にテメレイアが本を盗み出すところを見ているわけだから。


(どこからか強い圧力が掛かったのだろうか)


 なんらかの強い権力によって、もみ消されたと考えるのが妥当だ。

 テメレイアは一体どれほどのことを操れるのか、そう考えてみると何でも出来そうな気が恐怖すら覚える。

 そうかと思えば、テメレイアの名前が悪い噂となって流れなくなったことに、何故か安堵している自分もいた。


(あいつはちっとも変わっていなかった)


 僅か三日の間だったが、テメレイアは昔のままのテメレイアだった。

 過剰に親切で、変に厳しく、時に狂っている。

 自分のよく知る人物が、悪しき陰謀に加担しているとは、とても思えない。


「…………!? これは!?」


 そんなことを考えながらインペリアル手稿の解読を進めていると、ついにウェイルにも解読を終える時が来た。


「インペリアル手稿は――――三種の神器に関する書物だったのか……!!」


 解読と同時に理解した。

 なるほど、テメレイアはこれを伝えたかったのかと。

 つまりこれから起こる事件には、三種の神器が関わってくるということを暗に示しているということ。


「こうしてわざわざヒントをくれるあたり、やっぱりあいつは変わってない」


 そう確信して本を閉じ、ウェイルは閲覧室を出た。

 すぐに荷物をまとめると、シルヴァン駅へ直行した。

 今回はフレスとの賑やかな旅路ではなく、久し振りの一人旅。


「この都市では色々とありすぎた。しばらく来たくなくなったよ」


 そう苦笑し、様々な感慨に耽りながら図書館都市シルヴァンを後にする。

 ウェイルは仕事の依頼のあった都市ラングルポートへと向かったのだった。





 ――●○●○●○――





「龍姫様~!!」

「是非お姿を~!!」


 両手を合わせて祈りながら懇願する声が響き渡るのは、ここ『医療都市ソクソマハーツ』。

 良質な薬草を栽培し、様々な薬を生産して売ることによって膨大な利益を得ている医学の都市だ。

 そんなソクソマハーツを統べているのは、一風変わった価値観を持つ『アルカディアル教会』である。

 声を荒げて懇願する者達は皆、アルカディアル教の熱心な信者であった。


 アルカディアル教会本部の巨大な石造りの塔の窓から、信者達を見下ろす者がいた。


「龍姫様、聞こえますか? 貴方を頼って信者が集まっているのですよ?」

 

 頬こけた薄暗い印象を持つ男が、ぶすっと不機嫌な顔を浮かべた幼女に声を掛けた。


「ふん、あんな奴ら、うるさいだけじゃ。それよりレイアはどうした? はよ会いたい」

「テメレイア氏は、現在大切な任務の途中でしてね。ここにはもうしばらく来れないそうです」

「レイアがそんなことせずとも良いのに……」

「それよりどうです? 少しは慕う者に顔を見せて差し上げれば」

「嫌じゃ」

「貴方の為なら、彼らは何だってしますよ?」

「興味ないのじゃ。それよりお前ももう下がれ。わらわはレイアが帰ってくるまで寝る」

「……判りました。それでは、また来ます」

「お前は二度と来ないでよいぞ」


 部屋を出た男は、「ふぅ」と嘆息すると、周りにいた部下達に小さく呟いた。


「こいつは我々にとって最重要な武器だからな。当面は機嫌を損なわないように気をつけろ。こいつさえいれば、馬鹿な信者達は容易く操れる」

「了解しております」


 医療都市ソクソマハーツのアルカディアル教会本部から、大事件の幕は開ける。

 人間が便利だと頼りすぎた神器が、今まさに凶器へと変貌しようとしていた。


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