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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第九章 図書館都市シルヴァン編 『親友テメレイアとシルヴァニア・ライブラリー』
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図書館都市の異変


「ウェイル! 起きてよ! ねぇ、ウェイルってば!」


 騒々しくも聞き慣れた声で、叩き起こされた。


「んん……、どうしたよ……、何かあったのか……?」

「大変だよ! 大変なことが起きているよ!!」

「何が大変なんだ……。今日の鑑定は休むことにしたんだ。もう少し寝かせてくれ」


 フレスが騒々しいのはいつものこと。

 もう一眠りしようとゴロリと身体を横にするも、珍しくフレスが食い下がってくる。


「鑑定どころの騒ぎじゃないんだよ! シルヴァン全体が大変なことに! とにかく外を見てよ!!」


 フレスが窓を指さす。

 仕方ないと、ぼりぼりと頭をかきながら、ゆっくりと起き上がって窓を開けた。


「……なんだ。まだ暗いじゃないか」

「そうだよ!」

「夜なんだから暗いのは当然だろう。俺はもう少し寝るぞ」

「何言ってんのさ! 時計を見てよ!!」

「時計? ……なんだ、二時か。……――なんだと!?」


 フレスの言葉を理解した瞬間、眠気が吹き飛んだ。


「確か朝テメレイアとちょっと話した気がするから……。まさか俺は夜まで寝ちまったのか!?」

「もう、ウェイルったら寝ボケてるの!? 違うよ!! 今はお昼の二時! つまり十四時だよ!!」

「十四時だと!?」


 フレスに促されるまま、時計で時間を確認してみる。

 時計の針は、確かに今が昼であることを告げていた。


「まだ昼なのに、どうしてこんなに暗いんだ!?」

「ボクだって、何がなんだか判らないよ! やけに外がうるさくて、起きてみたらこんなに!」

「シルヴァン全体が真っ暗だった、ということか」


 時計の針は十四時十分を回ったところ。つまり間違いなく昼だ。

 それにも関わらず、外は夜の様に真っ暗であった。

 しかしながら、ウェイル達のいるホテル周辺は、暗いとはいえ本が読める程度には明るい。

 

「もしかして図書館の木の影か……?」

「この辺は影の影響も少ないってことかな」


 二人して空を見上げてみる。

 図書館からそこそこ距離のあるここら一帯は、微かではあるが太陽光が届いていた。


「図書館の周囲、大変なことになってる……」


 点々とランプの灯りだけがユラユラと浮かび、後は漆黒の闇が都市を包んでいる。

 その原因はシルヴァニア・ライブラリーの大樹が、太陽光を完全に塞いでいることだ。


「もしかして『もう一つの原始太陽(ソラリス・モノリス)』に何かあったのかな!?」

「核心は持てないが、おそらくそうだろう」


 この都市を明るく照らしている神器『もう一つの原始太陽(ソラリス・モノリス)』。

 それに何かあったと考えるのが妥当だろう。


「図書館の中も真っ暗じゃないの!?」


 図書館の中はランプも多いため、真っ暗にはなっていないはず。

 しかしこの異常事態だ。図書館の中も安全とは言い難い。


「だとしたら、レイアも危ない」


 何が起こっているのか判らない。

 ただ一つ判るのは、図書館の周辺から光が消えているということ。


「どうするの!?」

「どうもこうも……」


 テメレイアのことが心配で助けに行きたい気持ちもある。

 しかし、実際どうすればいいのか、ウェイルにすら判断不能だった。


「とにかくテルワナに聞いてみるしかないだろうな」


 二人はすぐさま部屋を出て、現状をテルワナに問い詰めた。


「どうなってるんだ!? 何が起こっている!?」

「実はですね、話によると図書館の周囲を照らしていた神器『もう一つの原始太陽(ソラリス・モノリス)』に不具合が生じたとか」

「……やはりそうなのか」


 想像通り、神器に何かあったようだ。

 あれが破壊されれば、こう暗くなることも必然である。


「復旧はいつになる!?」

「それがさっぱりでして。何せ相手は神器です。詳しいことを知る人間はいないでしょう」


 確かにその通りだ。

 人工神器ならまだしも、あのソラリス・モノリスは旧時代の神器のはず。

 そうそう詳しい人間などいるはずもない。

 そう、人間(・・)は。


「今、プロ鑑定士協会に連絡を取って、神器に詳しいプロ鑑定士を派遣してもらう手筈になっているそうです」


 プロ鑑定士協会になら旧時代の神器を研究している鑑定士もいないことはない。

 だが、ここは辺境の地。

 今からすぐに汽車を走らせても到着まで数日はかかる。


「判った。なら俺達が行こう」

「ウェイル殿が!? 何故!?」

「神器に詳しい弟子がいるんでね」


 人間には判らないかもしれない。

 だが、龍であれば話は別だ。


「ボクなら多分判ると思う。神器回路にはそこそこ自信があるんだ」

「俺達が行く。テルワナ、何か灯りはないか」


 すでにウェイル達は行く気になっている。

 しかしテルワナはそれを良しとはしてくれなかった。


「いけません、危険です! テメレイア様のご友人を危険な目に遭わせるわけには!」

「そのテメレイアが危険な目に遭っているんだろう!? 助けに行かなくて何が親友だ!」


 ホテルのロビーに置いてあった照明用神器を見つけると、ウェイルはそれを持って外に出た。


「心配しなくてもすぐに戻る。俺には腕のいい弟子がいるからな」

「任せてよ!」


 二人は闇に包まれた都市へと向かう。

 神器を治して、親友を救うために。





 ――――

 ――




「おい、先回りしろ。何としても止めるんだ」


 テルワナの静かな命令が発されていたことも知らずに。


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