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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第三部 第九章 図書館都市シルヴァン編 『親友テメレイアとシルヴァニア・ライブラリー』
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閲覧規制書物

「なぁ、確かインペリアル手稿は『第一種閲覧規制書物』じゃなかったか?」

「そうだね、第一種だよ」

「依頼があったのって、まさか一年以上も前なのか」

「全くその通りさ。もっとも、この一年何もしてなかったわけじゃない。電信でいくつかの情報を貰ったから、それから推理して、実は五冊の中の第二部については解読の糸口をつかんだんだよ」

「な、なんだって……!?」


 久しぶりの感覚であった。

 他人の実力と己の実力の差を突き付けられて、唖然としたのは。

 そう、思えばテメレイアと一緒に合格したプロ鑑定士試験以来の出来事だ。


「まさか……解読出来そうなのか……?」

「さてね。実物は見てみないことにはどうにもならないよ。だからこそ今回はとても楽しみなのさ。もしかしたら大陸最大の謎の一つが解けるかも知れないんだから。もっとも、タイムリミットが厳しいけどね」

「三日でやれってか。正直無理な話だ」

「まあ出来る限りはやるつもりさ」


 フレスの耳にまたも入ってきた更なる疑問。


「ううううう……第一種って、なんのこと……?」


 いい加減己の無知さに嫌気が差してくるフレスだったが、聞かねば知り得ようもないので涙目になりながら聞いてくる。


「今回は説明が多くて済まないな、フレス」

「本当だよ……。これが最後にしてよ」


 ともあれこの説明を聞かねば図書館の仕組みは判らない。


「シルヴァニア・ライブラリーに保蔵されている書物は、大きく四つに分類されている。それが第一種閲覧規制書物、それに準ずる第二、第三書物。そして一般公開書物だ」

「それぞれに閲覧のルールがあると思ってくれて構わない。一般公開書物であれば、誰もがいつでも読める。それこそ二十四時間いつでもね。シルヴァニア・ライブラリーは定休日がないからね。貸し出しもしているし」

「本、借りられるの!?」

「ああ。最低三日はシルヴァンにいる予定だし、読みたい本があったら借りてもいいぞ」

「本当!? やった! 実はいくつかプロ鑑定士試験対策のことで調べたいことがあってさ!」

「丁度良かったな。……まあそれはいい。話を戻すぞ。一般人が誰でも自由に読むことが許されているのが、この一般公開書物と、そして『第三種閲覧規制書物』なんだ」

「え? ボクでも第三種なら読むことが出来るの?」


 意外とばかりに驚くフレス。


「第三種なら本人の身元証明さえあれば、閲覧許可申請した次の日に読むことが出来る。第三種ってのは大抵、一般公開書物と変わらないものばかりだ。ただ本の発行部数が少なかったり、すでに出版社が倒産し原本が残っていなかったりなどの、俗にいうレアな書物がこれに指定されている」


 第三種閲覧規制書物とは、基本的に普通の書物となんら変わりはない。

 ただ本自体がだいぶ昔に絶版だったり、高価すぎて入手できなかったりなど、入手困難な書物がこれに該当する。


「しかし、第二種以上になると一気に規制が厳しくなる」

「ボクじゃ読めないの?」

「閲覧が出来ないわけではない。ただ閲覧許可申請にかなりの時間が掛かるんだ。昨日今日で許可を得ることなど出来ないから、基本的に閲覧予定日の一週間前から申請が必要になる」

「一週間も前に!?」

「これでも第一種に比べたら甘い方だ。ちなみにプロ鑑定士の資格があれば、閲覧許可がすぐに下りるため翌日からの閲覧が可能になっている。プロ鑑定士協会の信頼の賜物だな」

「やっぱり資格がいるのかぁ……」


 第三種以上に現存数の少ない書物、および各都市の過去の機密書類などが第二種に相当する。

 また大陸に印刷技術が発明される前に書かれた、つまり手書きの書物などが第二種に多く存在する。

 代えの効かない書物は当然価値が高いことも多い。

 本自体の価値、また書かれた情報にも価値はあり、閲覧には厳しい審査が要求される。安易に許可を得ることは出来ないのだ。


「そして今回僕が閲覧しに来たのは第一種なんだ」


 テメレイアの鑑定対象であるインペリアル手稿は、第一種閲覧規制書物に指定されている。

 歴史的に大いに価値があることと、その内容の危険性を考えての指定だ。

 インペリアル手稿の内容はほとんど解明されてはいないが、その作者のネームヴァリューも合わさり、とても機密性の高い書物だと多くの研究家が判断しているからだ。


「第一種閲覧規制書物は、数にしてたったの2008冊しかない。俺は閲覧したことはないが、その多くは神器や神獣など、この大陸に存在する未知魍魎の類の情報と聞く」



(それにドラゴンについての情報もあるという話だ)


 ウェイルは説明しながらフレスの耳元へ近づき、小さい声で耳打ちした。


(ボクらについて!? 見てみたいかも!)

(だから無理だって)


 「ちぇ、つまんない」と、頬を膨らますフレスだが、規則とあっては仕方ないと、最近では機嫌が直るのは早い。


「それにしてもようやく現物を拝めるよ。楽しみだね」


 まるで少年の如く目を輝かせているテメレイア。

 よっぽど鑑定したくてうずうずしていたらしい。


「さっきも一年前がどうこうとか言ってたけど、どういうことなの?」

「それはね、第一種閲覧規制書物は、閲覧予定日の一年以上前に閲覧許可申請を行わねばならないのさ。プロ鑑定士だろうがなんだろうが例外は一切なくてね。それに一回の申請で閲覧可能な日は何と三日だけ。たった三日で鑑定をしろときたもんだ。とても難儀なもんだよ」

「一年も前に申請しないといけないと!? レイアさんって、本当に一年も待ってたの!?」

「さっきから言ってる通りさ。だから楽しみで仕方ないんだよ」

「ウェイル、勿論ボクたちは」

「閲覧できるわけがないな。出来たとしても一年後だよ」

「残念……」


 ウェイルとテメレイアはその後もシルヴァニア・ライブラリーに関する様々な情報を教えてやった。

 図書館に近づくにつれて、都市はどんどんと暗くなる。

 うっそうと空を這う木の枝によって、太陽光が隠されているからだ。

 都市を照らす神器のおかげでなんとか薄暗い程度で済んでいる。

 おかげでひんやりとした過ごしやすい都市だとフレスは感じていた。

 フレスにとっては興味ある話が多く、ウェイルとテメレイアも久しぶりの会話を大いに弾ませていたので、中々に距離があった図書館までの道中は、意外にも楽しく、短く感じたのだった。



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