表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第八章 銀行都市スフィアバンク編 『株主総会での決戦!』
273/763

狂気のアムステリア

「ナムル殿!!」


 サグマールが手を伸ばし、ナムルを助けようとした。


 ――しかし。


 辺り一帯に鮮血が飛び散った。

 血塗られたナイフが、真っ直ぐに突き立てられている。


「ナムル殿!! ――……なっ!?」


 事の異常さに気付いたサグマールは、思わず素っ頓狂な声をあげた。


「なっ……!! なんだ、お前は!?」


 ジャネイルすら、その異様な状況に目を見開いている。

 ジャネイルは間違いなくナイフを突き立てた。

 そしてそれは、人に刺さったはずだ。

 だが、刺されていたのはナムルではなかった。

 視界にすら捕えられない速さで、何者かが身代わりに剣を受けていた。


「お前、一体誰だ……!?」


 ナムルの身体を庇うかのように身代わりとなっていたのは、スラリと黒い髪が伸びた女性だった。

 髪は血に濡れ、周囲は真っ赤に染まり始める。


「邪魔しやがって、このクソアマァ!!」


 またも邪魔されたことに激情するジャネイルは、刺さったナイフを引っこ抜く。

 邪魔な女を蹴り飛ばし、改めてナムルへ向けて刃を下ろした――


「――あ~あ。痛かった。でもどうやら間に合ったみたいね。大丈夫? ナムルさん?」


 その台詞が聞こえてきた時、ジャネイルの身体は宙を舞っていた。 

 その時、サグマールとジャネイルは、時間がスローになった感覚に見舞われていた。


(アムステリア!?)


 ナムルを庇ったのは、他ならぬこの女、アムステリア。


(眩暈……!? いや、これは……俺が宙に浮いているのか!? 何故だ!?)


 ジャネイルは大きく回転しながら、何が起こったのか理解出来ずにいた。

 

「これはナイフのお礼ね」


 その瞬間、ジャネイルはその場から姿を消していた。

 次にサグマールがジャネイルの姿を捕らえたのは、そこから5メートル離れた先の壁。 

 

「あら、お似合いの姿」


 壁に身体全体を叩きつけられたジャネイルは、さながら潰れたカエルの様。

 悲鳴や絶叫をする時間すら与えないほどの、アムステリアのキック。


「……アムステリア殿か……、助かった……」

「あのねぇ、ナムルのお爺ちゃん。カッコつけるのもいいけど、歳を考えなよ」

「いやいや、年寄りは後先短いからの。こういう場面では率先して前に出んと」

「いいから後ろでお茶でも飲んでなさい」


 ナイフで刺されたはずのアムステリアだが、何事もなかったかのようにピンピンしている。

 アムステリアの身体が丈夫すぎることは、プロ鑑定士の中でも有名なことだった。

 もっとも、どうしてそんな身体を持っているのか、身体の仕組みはどうなっているのか、その理由や理屈を知っているのは、ウェイルを含めた極一部だけだ。


「な……、なんなんだ、お前は…………!?」


 蹴り飛ばされたジャネイルは、信じられないと言った表情でアムステリアを見た。


「奴を、奴を殺せ……!!」

「あらやだ、まだ意識があるのね。結構頑丈なのね、貴方」

「誰でもいい! 殺した奴には報奨金を弾む!」


 地を這うジャネイルの命令は、無様にも虚空へと消え去る。

 彼の部下には、一人として立っている者はいなかったからだ。


「どうして誰も残っていないんだ……?」

「そりゃ、私が掃除したからよ。あんなゴミクズはさっさと捨てるべきだわ」


 ナムルを助けた時には、すでにアムステリアが他の連中をなぎ倒していたのだ。


「さて、覚悟はいいかしら……? 久しぶりに頑丈な男に出会ったのだもの。存分に楽しませてもらうわよ?」


 その瞬間、ジャネイルは生まれて初めてゾッとした感覚を覚えた。

 背筋が凍るとはこういう感覚か。

 目の前に立つ女から発せられたその言葉に、ジャネイルは人生を諦める覚悟をした。


「ナムルのお爺ちゃんを殺そうとした罪は重い。さあ、貴方も存分に楽しんで?」


 後は一方的な暴力。

 アムステリアに容赦という言葉は存在しない。

 殴られ続け、ようやく気付く。

 狂気に壊れた人間の、底知れぬ恐ろしさを。


「あら、流石に殺すのはまずいかしら」


 胸倉を掴んだ手を放すと、意識のないジャネイルは、そのまま地に崩れ落ちた。


「あんまり鑑定士を舐めないことね」


 その光景はまさに悪魔絵図。

 男達を踏み倒し、アムステリアは歩き出す。

 拳には血をしたたらせ、表情は妖艶な笑みを浮かべて。


「さあ、サグマール。貴方らはさっさと裏から行きなさい!」

「お前が味方で良かったと、これほど強く感じた日はないよ……」


 サグマールを含めたプロ鑑定士数十人は、ウェイル達に先んじて会場内に入ることに成功した。


「――さて、私はウェイルのところへ、と」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ