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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第八章 銀行都市スフィアバンク編 『株主総会での決戦!』
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新リベア社幹部、ジャネイル


「入口を探せ! 株主総会は、すでに始まっている!!」

「逃がすかよ!!」


 サグマールが後ろを振り向くと、ジャネイルと言う男が部下を引き連れて追いかけてきていた。

 ここがスフィアバンクである以上、こちらは皆武器や神器の類を持っていない。


(何人かで奴らを足止めするしかない……!)


 全員で敵を止めるのは得策ではない。

 目的はあくまで会場内へ入る事。

 腕に自信のある者以外は、先に進ませた方が良い。


「素手で戦える者は、ここで時間稼ぎだ! 他の者は入口を探してくれ!」

「プロ鑑定士は全員止めるよう、サバルに言われてるんでなぁ! テメェら、やっちまえ!」


 サグマールの指示に従って、この場に残ったプロ鑑定者はサグマールを含めて僅か四名。

 それに対し、敵の数はジャネイルを含めて九名。

 その全員が戦闘慣れしているのか、動きは素早く無駄がない。


「……戦える者は少ないってか。今後はプロ鑑定士試験に戦闘試験も取り入れた方が良さそうだな……!!」


 ついポロッと愚痴を漏れてしまった。

 『プロ鑑定士』という職には、大きく分けると二種類のパターンがあり、ウェイルの様に贋作士と対峙する危険な任務に就くパターンと、協会に引きこもって自分の好きな鑑定ばかりしているパターンがある。

 後者の鑑定士の方が圧倒的に多く、そういう連中はこのような場面では、足手まといにしかならない。


「おいおい、随分と少なくなっちまったぁ。ま、逃げた連中も後で全員捕まえるがよ」

「貴様ら程度、この人数で十分だってことだ」

「はっ! 部屋に引きこもってばかりの鑑定士風情が、粋がってんじゃねーよ!!」


 そして交戦が始まった。

 敵の数はざっと二倍。

 さらに敵にだけ武器がある。

 

 ――しかし、それでも戦況は互角だった。

 

 敵も十分戦闘慣れはしているが、この場に残った鑑定士達は、普段から『不完全』を相手に戦う手練れ達。

 彼らの実力のおかげで、十分時間稼ぎは出来た。


「他の連中は無事入口を見つけてくれたらいいが……」

「中々楽しませてくれるな」


 サグマールが少々安堵したのも束の間。

 目の前にはニヤリと笑うジャネイルが立っていた。

 その腕には、有り得ない方向に腕の曲がった鑑定士が、首根っこを首を掴まれている。


「鑑定士にも骨のある奴がいるじゃないか。このジャネイルが直々に相手をしてやろう」


 掴んでいた鑑定士を捨てると、ジャネイルはナイフを二本抜いた。


「こちらは丸腰だぞ? 卑怯だとは思わないか?」

「全く思わないな。俺達がお前らに合わせる必要はないだろう? 素手でも十分だが、時間の無駄だ。存分に使わせてもらうぞ」

「……クソッ!」


 容赦なく切り込んでくるジャネイルのナイフを、サグマールはギリギリで避ける。

 しかし、ジャネイルは回避されることを読んでいたのか、身体を寄せようと突進してきた。


「ぐっ……!!」

「おっさん、動きは良いが歳だねぇ! 足が追い付けてないぞ?」

「黙れ!」


 またもギリギリのところで突進は避けたものの、今度は体勢を保てない。

 不安定な体勢に、一瞬動けなくなる時間が来る。

 ジャネイルの狙いは、その瞬間だった。


「往生せいや!!」


 ナイフが喉元目がけて振り降ろされる。

 その瞬間、サグマールは死を悟った。


「――おっと、まだサグマール殿に死んでもらっては困りますな」


 馴染みある声が聞こえると共に、ナイフの軌道がそれる。

 見ると、誰かがジャネイルに体当たりを仕掛けていた。


「ナムル殿!」


 その誰かとは、フレスの壺を鑑定した老鑑定士だった。


「ご無事でしたか!」

「そちらこそな。全く、最近の鑑定士はなんと情けないことか。戦いをこんな老人達に任せるのだからのう」

「このクソ爺が……!!」

「おっと、まだ動かないで下されや。時間はゆっくり使いませんと」


 ナムルはジャネイルに覆いかぶさるようにして、動きを封じていた。


「サグマール殿、急いで入口を探してくだされ!」

「クソ忌々しジジイだ!!」


 イラつくナムルが暴れ出す。

 年齢の差もあり、肉体もジャネイルの方が圧倒的に強い。

 そんな男が、老人を振り降ろそうと暴れているのだ。

 しかしながら、ナムルはしがみつづけていた。

 一秒でも長くサグマールを逃がす時間を作ろうとしていた。

 それでも、力の差は歴然。

 ついにナムルは振り飛ばされ、身体を地面に叩きつけられた。


「……サグマール殿、お急ぎを……!!」

「よくも邪魔してくれたな……。お前から先に死んでもらう!!」


 ジャネイルは手に持つナイフを握り直すと、ナムルに向かって振り降ろした。


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