表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第八章 銀行都市スフィアバンク編 『株主総会での決戦!』
268/763

株式総会、開幕!

 様々な思惑が交錯する中、ついに株主総会当日がやってきた。

 会場となったのスフィアバンク内にある、株主総会専用の大ホール。

 収容人数一万人という、面積の狭いスフィアバンクからすれば破格の大きさを持つ会場だ。

 その客席全てを埋め尽くそうと、朝から大勢の株主が、入口前で列を作っていた。

 株主総会の開始時刻は、本日の正午。

 後四時間以上もあるというのに、治安局が整理に入るほど、人でごった返している。


「こいつらが全員がリベアの株主か……」


 治安局を率いているのはステイリィであった。

 大多数の局員を交通整理に従事させ、残り一部の者で、怪しい人物がいないか監視していた。


 長い長い行列の中に、イルアリルマはいた。

 彼女の目的は、一般株主に紛れ込み、新リベアが企てている罠を見抜くこと。

 イルアリルマには、事前に煙の出る爆竹を渡してある。

 この爆竹の音が作戦開始に合図になる手筈だ。



 ウェイル達プロ鑑定士の面々は、協会のスフィアバンク支部へ集合している。

 集まったプロ鑑定士は総勢45名。

 ヴェクトルビア奪還の為に集まった同志である。


「うわぁ~~、こんなにたくさんのプロ鑑定士が、一同に会するところなんて初めて見た!」


 総会当日だというのに、緊張感の欠片もないフレス。

 だが、そのフレスの無邪気さに、ある意味助けられていると言える。

 いくらプロとはいえ、王都を取り戻す重要な作戦の前だ。皆口には出さずとも、不安を抱え緊張していた。

 それをフレスのポケ―とした行動で、若干ではあるが柔和されていた。


「あ、試験の時、ボクの壺を鑑定してくれた鑑定士さん!」


 プロ鑑定士試験第一試験の時、フレスの壺を鑑定した老鑑定士もこの場に来ていた。


「ウェイルの弟子か。今回は済まなんだなぁ、試験が延期になってしもうて」

「ううん、延期だから気にしてないよ! 再開したら、ボク絶対受かるからね!」

「うむ。いい自信だ。鑑定士は常に自分に自信を持っていないとな」

「良い師匠を持ったからね! 多少の試験は余裕だよ」


 そう言われるとウェイルも少しくすぐったい。

 午前九時半になる。

 ウェイルが集まった鑑定士達の前に出て、語り始めた。


「みんな、協力感謝する。今回の株主総会はおそらく周りはリベア側の者ばかりとなる。俺とフレスだけでは何かと対処できないことが多い。それでだ。このフレスの株を、皆に1株ずつ配布しようと思う」


 ウェイルの作戦その①は、会場に入るプロ鑑定士の数を増やすこと。

 現状、株主はフレスだけであるから、入場可能なのはフレスだけだ。株を持っていない者は入場を拒否される。

 しかし逆に言えば1株でも持っていれば入場すること自体は可能なのだ。

 もちろん、発言権を行使するために25%の株はウェイルが預かることになるが、残りの5%を皆に配布する。

 発言権を持つウェイルを守るためにも、護衛をつけることは必要だ。


「はい、これ。今、結構いい値段になってるけど、タダであげちゃうね!」


 一人ずつに株券を分配していくフレス。

 これでプロ鑑定士協会は堂々と会場に入ることが出来るようになる。


「よし、皆に行きわたったな。会場内では、とにかく周りに気を付けてくれ。新リベア社の奴ら、本当に何をしてくるか判らない。プロ鑑定士には逮捕権があるから、いざとなったら逮捕権を行使してくれ。会場内に神器や武器の持ち込みは禁止されている。だが主催者側の持ち込みについて、しっかりとしたチェックはない。つまり敵だけが武器を持つ状況になるということだ。各々、警戒だけは怠らないように頼む」


 ウェイルが部屋の窓を開ける。

 窓からは今回の会場である大ホールが見える。


「株主総会は正午と発表されている。だが、俺はその八氷事態に疑問に思っている。奴らが発表した事は全て信頼は出来ないからな。もっと早く始まると睨んでいる。だからこそ、こういう形を取った」


 ウェイルは武器や神器を机の上に置いた。

 大量の株券は小分けにしてバッグに詰めてある。

 今一度株券をチェックした後、窓から外を見渡した。


「予想が正しければ、そろそろ始まるはずだ」


 間もなく午前十時を迎える。

 皆はしんと静まり、ウェイルの合図を待つ。

 それから数分後のこと。




 ――パパンッ!! パァンッ!!




 大ホールの方角から、大きな音と煙が上がった。

 何事かと皆が戸惑う中、ウェイルは説明を続ける。


「これこそ、株主総会が始まったという合図だ! 皆、行くぞ!!」


 ウェイルの指示に皆混乱はしていたものの、流石はプロというべきか迅速に行動を開始した。

 ウェイル、サグマール含め総勢47名のプロ鑑定士と一人の龍は、急ぎ足で大ホールへと向かったのだった。


 王都ヴェクトルビアの命運を賭けた株主総会が、今始まる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ