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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第七章 プロ鑑定士試験編 『波乱のプロ鑑定士試験』
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大胆不敵なパフォーマンス


 試験の残り時間は、ついに30分を切った。

 手持ちの現金100万ハクロアは、ほとんど残らず全て壺へと変わった。

 二人の後ろに並ぶのは、ずらりと並ぶ大量の壺。

 その光景は圧巻の一言で、見物人も壺を買い集めた二人がこれから何をするのか気になり、壺を売った受験者達も、未だその場に待機していた。


「そろそろ売りたいって人もいなくなってきたね。フレス、壺はいくつある?」

「えーっと、ボクらのも合わせると485個だね」

「これだけあれば完璧かな! 作戦の第一段階は終わり!」

「うん! それじゃ第二段階の開始だね!」


 作戦成功に必要な数以上に壺を集め終わった二人は、背後の壺を見てニヤリと微笑んだ。


「じゃあ行ってくる!」

「うん! こっちは任せて!」


 ギルパーニャは観客の前に一歩出て、後ろに立っていたフレスはあるもの(・・・・)を取りに、その場を離れた。


「さて、皆さん。私達に壺を売ってくれてありがとうございました! 来年の試験、頑張ってくださいね!」


 そこまで言って一旦深呼吸すると、ギルパーニャは声色を変えた。


「……しかしながら、せっかく一次試験を通った皆さんです。やっぱりまだ諦めきれないって人もいると思います。その人達に、私達が最後のチャンスをあげたいと思います!!」


 「どういうことだ!?」と口々に騒ぎ出す受験者達。

 「ついに始めるのか」と協会内部から見守っていたプロ鑑定士達の間にも、期待と動揺が広がる。

 ウェイルとイルアリルマの二人は、落ち着いて動向を見守っていた。


「お二人とも、何をする気なんでしょうね?」

「さてな。フレスはこの場を離れたが、何をしに行ったんだろうな? それよりもリル。視覚がないのに、この様子が判るのか?」

「はい。流石に細かいところまでは感じられませんけど、ギルさんやフレスさんの様子なら手に取るように判りますよ」

「お、フレスが戻ってきたぞ。……って、なんだありゃ?」


 戻ってきたフレスの手に握られていたもの、それは巨大なハンマーだった。


「さぁ、広場にいる受験者の皆さん!! 是非とも御覧ください!! フレス、お願い!」


「まっかせて!! おうりゃああああああああああっ!!」


 フレスはその手に持つハンマーを、買い取った壺に目がけて容赦なく振り下ろした。


「フレスが壺を壊し始めた!?」


 驚くウェイルと対照的に、イルアリルマはフフフと微笑んでいた。


「なるほど。『供給を断つ』。まさかこんな形で実現してこようとは。あの二人はやっぱり凄いですよ」

「なんとなく意図が読めてきたぞ。……そうか、フレスが言っていた『供給を断つ』、『壺の数を減らす』って、こういうことだったのか。なんとも大胆不敵なパフォーマンスだな」

「でも、良いパフォーマンスですよ。これだけ見物人がいるんです。これなら作戦も成功しますよ」

「師匠としては、その大胆さが心配の種なんだがな……」


 フレスから作戦は聞いたものの、それは大まかなもので詳しいことは秘密にされていた。

 何かしでかすことは判っていたが、まさか大衆の面前で壺を叩き壊すことだとは予想すらしていなかった。


「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃあああああああああああああ!!」


 次々と木端微塵となっていく壺。

 あまりにも突拍子もない光景に、野次馬一同、言葉を失っていた。

 フレスがハンマーを振り下ろすのを止めたのは、壺の数が残り20個になってのことだった。

 待ってましたと言わんばかりにギルパーニャが叫ぶ。


「皆さん、見ていただけましたか!? この都市で供給過多にあった壺は、この通りぶっ壊してしまいました。ということは相対的に壺の価値は上がった。そうですよね?」

 

 野次馬として様子を見ていた商人達は、こぞって首を縦に振った。

 何せ約500個ほどあった壺が残り20個しかないのだ。単純に計算しただけで、その価値は大体25倍になったということ。

 それでも原価である2000ハクロアを25倍したところで10万ハクロアには届かないが、今この壺には重要な付加価値がついている。

 何せこの壺には価値が戻った。

 であれば、この壺を手に入れさえすれば10万で売るという目標はすぐに達成してしまう。

 つまり壺の値段は壺本来の価値以外にも、二次試験合格という受験者達が喉から手が出るほど欲しい付加価値が付いているのである。

 フレス達は、この付加価値を作り出すことを狙っていた。


「今この壺を買えば、間違いなく10万ハクロア以上で売れ、さらに二次試験に合格できる! どうしても試験に合格したい、そんな人のために今なら特別に10万ハクロアぴったりで販売します! 残り時間は20分! 数も同じく20個! 無くなり次第終了です! さあ、欲しい人はお早めに!」


 ギルパーニャが叫んだ瞬間だった。

 試験を諦めきれなかった受験者が、壺を求めて二人に殺到。


「俺に売ってくれ! 早く!」

「私に売って! 15万出すから!」

「いや、俺だ! 試験に合格できるのであればいくらでも!」


 こうして残った20個はあっと言う間に完売した。

 二人は当初の目標よりも多い345万ハクロアという大金を手にし、第二試験を通過したのだった。



 第二試験合格者、――87人。


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