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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第七章 プロ鑑定士試験編 『波乱のプロ鑑定士試験』
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買取拒否に門前払い


 プロ鑑定士試験一日目、残り53時間。

 フレス、ギルパーニャ、イルアリルマは参加証のドッグタグを見せて壺を受け取った。


「これからどうしましょうか」

「ねぇねぇ、リルさん、ボク達と組まない?」


 プロ鑑定士試験は基本的には個人個人の試験である。

 しかし、試験中に他人と組んではならないというルールは全くない。

 むしろ誰かと組んで、試験に臨んだ方が合格率は高くなる。

 フレスは当然のことながらギルパーニャと組んで、共に合格を目指していた。

 そこにイルアリルマを誘ったのだ。


「そうですね……。今はまだ止めておきましょう」


 意外なことに、イルアリルマはその誘いを拒否。



「えええ!? そ、そんなぁ~」

「いや、フレスさん達と組むのが嫌ってわけじゃないんです。いつもなら誰かと組んで合格を目指すんですけどね。この前ウェイルさんに言われたでしょ? 覚悟はあるか、って。勿論あるつもりですけど、つもり(・・・)ってだけじゃ味気ないと思ったんです。だからこの第二試験くらいは、一人で合格するくらいの覚悟がないといけないって。誘ってくれてありがとう。でも、今回はごめんなさい……」


 深々と頭を下げてくるイルアリルマ。


「リルさん、頭をあげてください! リルさんの気持ちはよく判りましたから! ウェイル兄が言ってたこと、私も少し気に掛かってて。私はまだ覚悟ってのはよく判らないけど……。でもリルさんの気持ちはよく判るから」


 ギルパーニャにも思うところはあった。

 自分はどうしてプロ鑑定士を目指しているのだろう。

 師匠も、そして兄も鑑定士だ。

 だから自分もいつかそれに続くのだろうと、漠然とそう考えていた。

 でも兄弟子の言葉や目の前のイルアリルマを見て、自分の目的は一体何なのだろうと、改めて考えさせられた。


「私も、プロになる目的と覚悟をここで見つけるよ! フレスと一緒にね! だからリルさんも頑張って!」

「はい、お互いに頑張りましょう!」

「次は第三試験でね!」

「はい!」


 イルアリルマはニコッと笑顔を浮かべると、後は一度も振り返らずにマリアステルの街並みに消えていった。


「フレス、私、絶対合格してやるんだから!」

「ボクもだかんね! 二人で合格だよ!!」


 二人はニヤリと笑いあうと、ハイタッチをして互いの合格を祈った。





 ――●○●○●○――





 試験終了まで、残り52時間。


「早く売りに行こうよ!」

「向こうの方に骨董市があるから行ってみようよ」


 ギルの提案で、二人は早速マリアステルの骨董市へとやってきた。

 とりあえず目に入った出店の店主に、壺の価値を聞いてみることに。


「あのー、この壺、いくらくらいで売れますか?」


 ギルパーニャが店主にシアトレル焼きの壺を見せると、店主は何故かあからさまに怪訝な顔を浮かべた


「まーたシアトレル焼きの壺かい。もうこの壺には何の価値もないんだ」

「えっ!? どうして!? 間違いなく本物の壺だよ!?」

「関係ないのさ。シアトレル焼きについてはね」

「買い取って欲しいんだけど」

「断る。今、この都市でシアトレル焼きの壺を買い取ってくれる店なんてあるのかね……」



 店主はそう言い残すと、壺をギルパーニャに突き返して、店の奥へ引っ込んでいった。


「どうして本物なのに買い取ってくれないのかな……?」

「そういえばさ、ギル。シアトレル焼きの壺って、本来どれくらいで売れるの?」

「う~ん。焼かれた年代、アトリエに窯、作者によっても価値は変わるんだよ。安くて5万、高ければ15万ハクロアくらいにはなるかなぁ。だから今回の課題である10万ハクロアってのは、あながち無理な条件ではないんだよね」

「どうして買い取りを拒否されたんだろう……?」


 それから二人はいくつかの骨董品店を回ってみたが、結果はどこも同じだった。


「……買い取ってくれるってところはあったけど、1万ハクロアじゃあなぁ……」

「売れないよねぇ……」


 買い取り可能な店もあったが、その値段は極端に低かった。


「質屋さんに行ってみようよ」

「そうだね。」


 フレスの提案で早速質屋に駆け込むものの、どこも門前払いを喰らってしまった。


「……うう……。どうしてだろう……」

「簡単に合格させちゃダメってことで、プロ鑑定士協会が圧力を掛けているのかな……?」


 そう疑ってはみたものの、実際に圧力を掛けていようがいまいが、結局現状を打破しなければならないのは変わりない。


「オークションハウスはどうかなぁ?」

「多分この状況だと同じだと思うけど、見に行ってみよう」


 幾つかオークションハウスを回ったが、やはりというべきか状況は芳しくなく、他の受験者が出品していた壺は、二束三文で落札されていた。


「……もしかして、プロ鑑定士協会はわざと贋作を配布したのかも……?」

「鑑定、してみようか」


 そう思って今一度鑑定をしてみるものの、やはりと言うべきか本物に間違いはない。

 そうこうしているうちに日も暮れて。


「……今日は戻ろうか……」

「……うん……。うう、お腹すいたよぉ……」


 初日は何も成果をあげることが出来ぬまま、ウェイルの部屋へと戻ったのだった。


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