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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第七章 プロ鑑定士試験編 『波乱のプロ鑑定士試験』
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第二試験開始!

 プロ鑑定士試験、第二試験の日を迎えた。


「ふー、緊張するよぉ……」

「わ、私も……」


 深呼吸する二人を見て、穏やかに笑うイルアリルマ。


「二人とも、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

「だってだって! これで落ちちゃったら、また次受けないといけないんだよ!? またお勉強しないといけないんだよ!? ボク、もう嫌だよ!?」

「え、えっと……普通、一発で受かるような試験じゃないのだけど……」

「リルさんは緊張しないの?」

「してないわけではないんですが、もう慣れちゃってますからね」


 イルアリルマとて緊張しないわけではなかったが、すでに何度も受験している身だ。

 第二試験程度ではまだまだというところだろう。

 三人は試験内容が発表される中央広場にやってきた。

 続々と受験者が集まり、緊張感が漂い始める。

 これだけの人数が集まっているというのに妙に静かなのが、余計にフレス達の緊張を駆り立てた。


「何人か見知った顔がいますね」


 リピーター同士の繋がりがあるのだろう。

 イルアリルマは数人から声を掛けられ、ギスギスした空気の中でも会話を楽しんでいた。


「あ、サグマールさんだ!」


 フレスの声で受験者の表情はさらに引き締まった。

 時間はピッタリ正午。

 険しい顔のサグマールが広場に現れたのだ。


「さて、諸君。第一試験合格おめでとう。しかし所詮は第一試験だ。合格したところで何の意味も為さない。この第二試験に落ちるのならばな!!」


 サグマールが手を挙げると、側近の鑑定士達がそそくさと動き始める。

 すると本部内部から、大きな荷物を積んだ荷馬車が何台も現れた。

 荷馬車には何やら布が被せてあって、中身を窺うことは出来ない。


「さて、ではお披露目と行こう」


 サグマールの指示で布が退けられる。

 荷馬車に乗せてあったもの、それは。


「あれ? あれってシアトレル焼きの壺だよね? 私達が第一試験で買ってきた奴」


 そう、そこにあったのは、大量のシアトレル焼きの壺であった。

 第一試験で受験者達が手に入れてきた壺、その全てがそこにあった。


「これから行う第二試験で必要不可欠となるものだ。試験開始後、全員に一つずつ配布する」


 わざわざ手に入れた壺を一体どうするのか。

 受験者の間に不安が広がっていく。

 そんな雰囲気を引き裂き、サグマールが告げた。


「プロ鑑定士試験、第二試験の内容は、これらの壺を売ってくること。それが合格条件だ!」


「……せっかく買ったのに、売るの? ……それだけ?」

「……いや、そうじゃないみたいだよ……」


 第二試験がそんなに簡単なはずはないと、皆固唾を呑んで言葉の続きを待った。


「おそらく諸君らは、この壺をほとんどタダ同然で手に入れたことだろう。これはプロ鑑定士協会がマリアステルの店舗や露店などに配布した物で、受験者が求めた場合、格安で譲る様に仕組んでいたからだ。しかし、それだけでは我ら協会は大損だ。したがって今度はこの壺を高く売ってきてもらう。今回の試験は、このシアトレル焼きの壺を最低10万ハクロアで売ってきてもらいたい」


 サグマールの言う10万アクロアという金額に、受験者達の反応は様々だった。

 

「10万だと!? ふざけてるのか!?」

「そんな大金で売れるわけがないだろう!? 無理だ!!」

「詐欺でもしないと売れないぞ!? プロ鑑定士協会は詐欺を推奨するってのか!?」


 受験者達から溢れる不満や文句。


「なんだ、10万か。余裕だな」

「シアトレル焼きの壺だろ? 状態や製作工房によっては14~15になることもあるからな。余裕だぜ」


 受験者の間には、大きく分けて二つの考えが生じていた。 

 大半の者は、10万ハクロアなんて大金、簡単に手に入らないと思っている。

 ましてやすぐさま用意するなど無理だと考えていた。。

 それに対し、一部の者は余裕を見せていた。

 10万は楽勝だと、脳内ではすでに攻略の算段を立てている者もいる。

 元々シアトレル焼きの壺自体は、そこそこの値打ちのある品だ。

 余裕だと思う当てはここにある。

 次第に高まる不満や、意見の小競り合い。

 中には第二試験のやり方に意見をしてくる者も出てきた。


「試験内容に不服がある! 内容を変えるべきだ!!」


 直接サグマールに文句を言う受験者もいたが、サグマールはそんな連中をキッと睨みつけると、


「鑑定品を売ることすら出来ない者に、プロ鑑定士をする資格など無い! さっさと消え失せろ!!」


 と、大声で一蹴した。


「参加したくない者はしなくてもよい。受験をするかどうかは諸君らの自由だ。それと最初に行ったはずだ。試験を受けるのなら命を賭けろと。命を賭けているのならばこの程度の試験、屁でもないはずだ。何せ死にはしないのだからな」


 その言葉に、文句を言う連中はピタリといなくなる。

 彼らも第一試験を通り抜けた、いわば猛者だ。

 少なくともプロ鑑定士になってやるというプライドや気合いはあるようで、サグマールの言葉に対し、絶対合格してやると皆奮起していた。


「合格基準はシアトレル焼きの壺を10万ハクロア以上で売り、その証書を持ってくること。販売方法は問わない。証書に10万ハクロアの記載があれば良しとする。尚、この試験で諸君らがいかなる損失を被ろうと、我々は一切の責任を負わない。試験期間は三日間。明後日の午後六時を最終期限とする!! ちなみにもし壺を売ることが出来なかった場合、試験終了時にプロ鑑定士協会へ返還してもらう規則であるから、各々損をしないように。それでは、第二試験、開始だ!」


 サグマールの号令で、受験者達は一斉に壺を積んだ荷馬車に殺到した。


 プロ鑑定士試験、第二試験が今、スタートした。


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