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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第七章 プロ鑑定士試験編 『波乱のプロ鑑定士試験』
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極秘報告会

 第二試験は三日後と発表された。

 これはプロ鑑定士協会が第二試験の準備の為に必要な期間であり、その間は受験者達は自由に行動できる。

 この三日間、フレス達は仲良くなったイルアリルマと共に勉強をしていた。

 彼女のエルフとしての知識はフレス達にはとても新鮮なもので、特に違法品や神器に関して、その知識量はプロ鑑定士顔負けどころか凌駕するほどであった。


「へぇ、エルフって、自分で神器も作れるんだね!」

「ええ。エルフには人間にはない力がありますからね。とはいえ神器を作れると言っても、新しい神器を創造することは出来ないんですよ。作れるのはすでに解析が完了している神器だけでして。やってることは教会となんら変わりはないです」

「それでも凄いって! 神器なんて買えば一つ数十万ハクロアがざらなのに。自分で作れるなんて、大儲けじゃん!」

「作ることの出来る数には制限がありますから、そんなには儲からないと聞きますよ」

「リルさんは作れるの?」

「私はハーフですから、製作にはあまり関わらせてもらえませんでした。でも方法は知ってますし、理論も把握しているので造れないこともないですが、手間、費用、時間を考えると作らない方が賢明です」

「ボクも最近は全然神器作ってないなぁ……」

「フレス、神器作れるの!?」

「えっ!? あ、違うよ!? 作れたらいいなぁ、の間違い!!」


(危ない危ない、ボクが龍ってこと、ギルには秘密だったんだっけ)


 つい口走りそうになってしまった。

 慌てて話題を変えることに。


「そ、それよりウェイルは何処に行ったの?」

「ウェイルさんなら、少し用事があるとかで外に出てますよ。何でも人に会いに行くとか」

「……一体誰に会うんだろ?」





 ――●○●○●○――





 三人が試験に向けて勉強している中、ウェイルは一人マリアステル郊外の、とある家の扉の前で立ち竦んでいた。

 扉を開こうとドアノブを握ってはいるものの、それを回すための握力が沸いてこない。


「……ここに来る度に、身体が拒否反応を示すな……。さて、一体どうしたものか」


 このまま扉を開けると、間違いなく襲撃を受ける。

 最初の一打を防ぐため、扉を開いた瞬間、すぐに後方へと下がるべきか。

 しかし、敵はそれを読んでいる可能性が高い。

 ならば横へ避けるか。いや、いっそこのまま帰ってしまうか。

 色々と思考に耽った結果、諦めて襲撃された方が楽だという結論が出た。


「……入るぞ」


 半ば諦め気味に、扉を開く。

 その瞬間――それは本当に刹那。

 扉の向こうから伸びてきた、スラリと伸びた白い腕。

 なまじ逃げること叶わないスピードで襲い掛かってくる腕に、ウェイルは覚悟を決めて身を任せた。


「ああん♪ ウェイル、久しぶりぃ!!」


 ははは、予想通り過ぎる。

 ……なんてすました嘆息が出来た時間もごく僅か。

 あっという間に唇を奪われていた。


「うふふふ、これもなんだか久しぶりね……」


 妖艶な笑みも、ウェイルにとっては畏怖の対象でしかない。


「……おい、もうそろそろいいだろう?」


 キスの連打によって唾液で顔中ベトベトになったウェイルは、何とか動く腕に力を込めて、強引に彼女を突き放した。


「……相変わらずだな――アムステリア」

「そっちも元気そうで何よりね。……ところであの小娘はいないの?」

「フレスはプロ鑑定士試験を受けていてな。今は第二試験に向けて猛勉強中だ」

「そういえばそんな時期だったわね。あの娘、第一試験は受かったんだ。どう? 合格出来そう?」

「こればっかりは判らんさ。贋作を見極める能力には優れているが、知識が不足しているからな。試験の内容次第ってことだ」

「ふうん。私としてはあの娘が合格してくれた方が、弟子としてウェイルに付きまとわなくなる分、嬉しいんだけど」


 相変わらずフレスに対しては厳しいアムステリアである。


「さあ、入って。すでに例の客も来ているわ」


 実はサスデルセルにて、アムステリアとその他二人に電信を送っていたのだ。

 ――大至急、相談したいことがある――と。

 電信を受けた三人も、それぞれ気になることがあったようで、すぐさま返事を受けた。

 本来であればプロ鑑定士協会本部に集合すればよかったのだが、現在は試験中であるし、何より話の内容が内容だ。

 人目につかないアムステリアの家を集合場所にする方が都合が良かった。

 部屋に入ると、豪華な装飾のなされた椅子があり、そこに目的の客の一人が座っていた。


「わざわざ足を運んでもらって申し訳ありません。――師匠」


「おいおい、だからその型っ苦しい喋り方は止めろと言っておろうに」


 スキンヘッドの頭に、龍の刺青が彫られた老人。

 その人物とはウェイルの師匠であるシュラディンだった。

 豪快に笑いながらウェイルの肩を叩いてくる。


「お前さんから連絡があった時は、好都合だと思ったぞ。こちらとしても気になる点が多くてな。それにしてもお前さん、この美人さんの家に来いとは一体どういうことなんだ」

「やだ、師匠様。美人だなんて、そんな本当のことをわざわざ口にしなくても♪ 私も驚きましたよ? ウェイルの師匠っていうから、どんなに性格のひん曲がった老人が来るかと思ったら、まさかこんなダンディなおじ様が現れるなんて」

「口が上手いな、ウェイルの彼女さんは」

「あら嫌だ、嫁の間違いですよ♪」

「全部間違いだ!!」


 お約束の漫談をそれくらいにして、三人は改めて椅子に腰を掛けた。


「それで、電信にあったもう一人ってのはいつ来るんだ?」

「ああ、奴は今ちょうど忙しいだろうからな。遅れてくると思うよ。だから先に始めていよう。今回俺が二人に電信を送ったのは、非常に厄介なことがこれから(・・・・)起こりそうだからだ」

「厄介なことがこれから起こりそう? 随分と予想の入った話ね。何があったの?」

「『不完全』の残党がサスデルセルに潜伏していた」

「……えっ……!?」


 それまでとは一変、張りつめた空気に変わった。


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