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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第六章 為替都市ハンダウクルクス編 『親切すぎる都市の裏の顔』
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3人の幹部


「さて、仲間を紹介しよう。彼らは『無価値の団』に所属している構成員だ。ゼーベッグ、ペルーチャ、ファイラー、来てくれ」


 呼ばれた三人が、他のテントから出てくる。

 その内一人は先程松明を持っていた者だった。


「……ルイ。今度の作戦、その男を参加させるのか?」

「どうだろうな。でも、そうなる可能性は高いと思う。鑑定士殿、このデカイ奴はゼーベッグという。力仕事なら何でもござれの頼りになる奴だよ」

「……まあ、よろしくな……」

「こちらこそ」


 松明を持っていたのはゼーベッグであった。素直に手を取り握手する。


「へぇ、これがプロ鑑定士か。中々に良い男じゃないか」


 続いて声を掛けてきたのは、褐色の肌に白い長髪をした女だった。


「ねぇ、ルイ。この男、私に頂戴? 何ならこいつの株、買い占めちゃってもいいけどさ! アンタ、私の奴隷にならない? 世界一幸せな奴隷にしてあげるわよ?」

「むぅ、気軽にウェイルに触らないでよね!」


 ウェイルに寄り添おうとする女に、フレスが難色を示した。


「あーら、コブツキなの? でも私は気にしないわ。お子ちゃまはあっちで遊んでいなさいな」

「むむぅ、お子ちゃまじゃないもん!!」

「おい、この女は誰なんだ?」


 耳元に掛かる女の息に、鳥肌が立った。

 ギュッと握ってきたフレスの手のひらだけが、唯一の救いな気がした。


「人間為替を否定する俺らが、それを利用しようとしてどうする? 済まない、鑑定士殿。こいつの名前はペルーチャ。地下にはこいつ好みの男が少ないもんでな。欲求不満を隠しきれないようだよ」

「あら、私はルイ、アンタでもいいのだけど?」

「丁重にお断りだ」

「あーら、残念」

「重ね重ね済まない、鑑定士殿。だがこいつは俺達の活動にはなくてはならない女なんだ。実はペルーチャは富豪でな。表の世界でもちょっとした有名人だ。無論、本人の価値も高い。それなのに人間為替制度に反対だからと、俺達の仲間になった不思議な奴なんだ。『無価値の団』の活動資金は、半分以上彼女のポケットマネーだったりする。いわばスポンサーだな。少しぐらいのオイタは見逃してやって欲しい」

「むぅ……。ボク、この人苦手……」


(……本当に反対しているのかよ)


 彼女の行動からそう疑ってしまったウェイルであった。


「最後に紹介するのはファイラー。このスラム街に、地上から物資を運びこむ運び屋をやっている」

「どもども! これはこれはプロ鑑定士殿! お会いできて光栄です!!」

 

 紹介されるや否や、丸いメガネを掛けた小柄な男がウェイルに握手を求めてきた。


「こんなむさくるしい所にようこそおいでなさりました! 歓迎いたしますよぉ!」

「そ、それはどうも……」


 異様なテンションの男に、二人は思わずひいてしまう。

 しかしファイラーはそんなことお構いもなく、矢継ぎ早に話を進めてきた。


「いやはや、しかしこれはこれはなんとも可愛いお嬢さんですなぁ~~!! 地上でもなかなか見られないレアものですよ! これは素晴らしい……!!」

「ううぇぇ、ウェイル!! ボク、ここの人達みんな怖いんだけどおおお!!」


 上から下までジロジロと観察されたフレスは、さぞ不快であったことだろう。


「ルイよ。お前の仲間の紹介は終わったんだ。早速人間為替市場へ案内してくれ」


 精神衛生上、一刻も早くここを抜けたい。

 フレスも同感の様で首をブンブンと縦に振っていた。


「そうだな。じゃあみんな、行ってくるよ。姉さんを頼んだよ」


 地下道へ戻り、地上へ繋がる通路を進む間にも、数多くの人とすれ違った。

 彼らは地上に出ても価値がない。だからこそ地下にいる。

 そんな彼らを、いつか地上へと戻してやりたい。

 人並みの生活、人としての尊厳を取り戻させてやりたい。

 道中、ルイはずっとそんな話を語ってくれた。

 ウェイルも同感で、是非ルイの力になってやりたいと、そう思えた。

 ルイは地下スラムへ堕ちた人間達にとって、最後の希望なのだ。

 地下住人とすれ違う度に、ルイは彼らから激励の言葉を貰っていた。

 嬉しいことだとは思うが、反面凄まじいプレッシャーに違いない。

 誰だって、過剰に人から期待されたくはないものだ。

 それでもルイはその役目を一身に引き受けている。

 自らの地位を捨て、自分の命を顧みず、独裁者に楯突いた。

 ウェイル、そしてフレスは気が付いていた。

 ルイの基本的な性格は、ウェイル達にそっくりであると。


 そう、それは彼が無駄に――正義感が強いこと。



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