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龍と鑑定士 ~ 絵から出てきた美少女は実はドラゴンで、鑑定士の弟子にしてくれと頼んでくるんだが ~  作者: ふっしー
第二部 第六章 為替都市ハンダウクルクス編 『親切すぎる都市の裏の顔』
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美味しいお話


 というわけでマリアステル中央部へと遊びにきたフレス。

 幸い遊ぶためのお金はたんまりとある。

 好きな服を買い、好きな物を食べることが出来る。

 熊の丸焼きを求めていくつか店舗を回り、どこも門前払いされてしまったこと以外は、どこの店舗も大金を持っているフレスを激烈に歓迎した。

 流行のドレス、靴、鞄。

 宝石に貴金属まで。

 買おうと思えば何でも買えるフレスの財布の厚さを見て、皆手を揉み媚びてくる。

 普通の感覚であれば、媚びて近寄ってくる人間を煩わしいと感じるところであるが、生憎フレスは普通の感覚を持ち合わせていない。


「マリアステルの人達って、みんな親切なんだ!」


 欲に目を輝かせた人々を見て、フレスは何故か感激していたのだ。

 先日まで滞在していたリグラスラム住人とのギャップが、フレスの感覚を麻痺させたのかも知れない。

 そんなわけで、フレスは寄ってくる人は皆善意で動いてくれているものだと信じきってしまっていた。

 そんな時、一人の男がフレスに近寄ってくる。


「ねぇ、お嬢ちゃん? 絶対に儲かる話があるんだけど、聞きたくない?」

「ええ!? 絶対に儲かるの!? そんなに美味しい話なら聞きたいに決まってるよ!!」


 後から判ったことなのだが、この男、治安局に指名手配までされている有名な詐欺師であった。

 そんなことなど露ほども知らないフレスは、またも親切な人が来たと思い込んでいる。

 詐欺師の男はそんなフレスの素直さを見逃さない。


「あのね、株式や為替って知ってる?」

「株? 為替……? ……あ! 知ってるよ!!」


 これも以前ウェイルに無理やり勉強させられた時に、本に書いてあったこと。


「会社の株を買って、その会社が利益を出したら配当とかもらえるんでしょ?」

「おお~、お嬢ちゃん! よく知ってるね! だったら話は早いよ! 実はね、最近勢いに乗っている会社があるんだよ。それが『リベアブラザーズ』って会社なんだけどね。主に他大陸との貿易で利益を上げている会社なんだよ」

「へぇ~~~!! ……それってすごいの?」

「そりゃもちろん! 何せ去年の売上金額は何と780億ハクロアだと聞いたよ!」

「780億!? そ、それは凄いね……!! 想像すらつかない金額だよ!!」

「でしょ? そんな大儲けしているリベア社の株式が、偶然大量に手に入ってね!」

「そうなの!? じゃあおじさんはたくさん儲かったの!?」

「いやあ、大きい声じゃ言えないけど、それはそれは凄かったよ。儲かりすぎちゃってさ。他の大陸に別荘を買ってしまったくらいなんだ!」

「別荘!? いいなぁ!」

「でもね……、この株ってアレクアテナ大陸内に住んでいないと配当金が入ってこないんだ。おじさん、実は明日にでもアレクアテナを去らなければならなくてね。この株、どうしようか悩んでいるんだよ……。捨てるのももったいないし」

「……ゴクリ……」

「それで、誰かにあげちゃおうかなって、そう思ってたところに君と出会ったんだよ! これはもう運命だとしか言いようがない! 是非君に差し上げたいんだ!」

「ほ、本当なの!? いいの!?」

「もちろんさ。……でも、ただであげるってのも、ちょっと勿体無いと思ってるんだよね。何せこの株、毎年1億ハクロアは儲かるから」

「そんなに!?」

「だって僕が持っている株は、リベア全部のなんと30%もあるからね! その程度の配当、当然だよ」

「……す、すごい……」

「どうだい? 君、欲しくはないかい?」

「欲しい!」

「本当はタダであげたいんだけど……、それじゃ他の人に不公平だろ? だからさ、売ってあげるってことでどうだい?」


 男の目が怪しく光る。

 だが、フレスは今聞いた話で頭が一杯で、そんなことに気付く余裕すらない。


「い、いくら……?」

「41万ハクロアくらいでどう?」

「41万!? たったそれだけでいいの!?」

「いいんだよ。おじさん、もうお金はたっぷり稼いだからね。その41万は妻と旅行にでも行こうかと思っているんだよ」

「うん! それで買うよ! 買っちゃう!!」

「本当かい!? 君は本当に運がいいよ! だって来年には億万長者になっているんだからさ!」

「うん! 奥さんとの旅行、楽しんできてね!」


 フレスは即決。

 当然、男もだ。

 すぐに契約書が発行され、現金を男に、そしてフレスは膨大な量の株式を手に入れた。

 株は一旦銀行に預けられ、明日にもプロ鑑定士協会本部へと届く手筈となった。

 それらの手続きも全て男がやり、フレスはただ漠然と、目の前の男は良い人だと決めつけて全ての契約を任せていたのだった。



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