波乱の第1ゲーム
★第1ゲーム★
「それではカードをお配りします」
ディーラーから配られたギルパーニャの、それは――。
(♦の4、♣のJ、か。手札としてはまあまあかな?)
メガネがSB(スモールブラインド:最初の賭け金のこと)、入れ墨がBB(ビッグブラインド:最初の賭け金の2倍の賭け金)をポット(勝った人が全取り出来るチップ置き場)に置く。
このホールではSBは3枚、BBは6枚である。
最初に行動宣言するのはギルパーニャ。
「コール」
ギルパーニャはノータイムでコールを宣言。
コールは前の人と同じ額を提示する宣言のことで、ギルパーニャは前の人(入れ墨)と同じ6枚のチップをポットへと加えた。
「俺もコールだ」
続いてスキンヘッドもコールを宣言。
続くコートもコールを宣言した。
(皆ここは様子見というわけね……)
ディーラーもコールを宣言。
この時点でポットには33枚のチップが集まった。
続くのはメガネ。
「……フォールドします」
しばらく考えたメガネはフォールドを宣言。
ゲームを降り、様子を見ることに徹するようだ。
全員が同じ金額を賭けたことで、次のフェイズに移行する。
「それではコミュニティーカード、開けます」
ディーラーは慣れた手つきで3枚のカードを開いた。
開かれたカードは♥のA、♥の4、♣の10。
(この時点でワンペアか……なら……!!)
「チェック」
入れ墨がチェックを宣言。
このゲーム、入れ墨はどうしても人の調子を見る気らしい。
(ならこうすれば降りるだろうね……!!)
「レイズ! チップ8枚!」
ギルパーニャはすかさずレイズを宣言。勝負に出た。
(これで隣は……?)
「……フォールド」
スキンヘッドはフォールドを宣言しゲームを降りる。
「コール」
それに対しコートは勝負に出てきた。
「申し訳ありませんが、私もフォールドさせていただきます」
ディーラーもフォールドを宣言。
これでギルパーニャとコート以外がゲームを降り、ゲームは二人の一騎打ちとなる。
(他の入れ墨、スキンヘッドはおそらく慎重型。第一ベットラウンドでは多少の額ならコールしてくる……!! でも逆をすれば必ず降りる……!! 問題はメガネとディーラー、そしてこの女、コート。果たしてどんなタイプなんだろうか……?)
ギルパーニャは少しずつだが相手のタイプ、思考、癖を読み取っていく。
(まだ断定は出来ないけど……、あのメガネ、フォールドする寸前、考え込みながら左手で耳を触っていた。もしかすると癖なのかも……? いや、まだ確定させるのは早い。あの行動だって罠の可能性もある……!!)
目の前の勝負と同時に、様々なことを思考できるマルチタスク。
それが出来るのがギルパーニャなのだ。
「ベット、チップ8枚!」
ギルパーニャはベットを宣言。またもチップは8枚。
(どうする……?)
「レイズ! チップ12枚!!」
コートは少し悩んだ末そう宣言した。
(…………やるじゃない……!!)
「コール!」
ギルパーニャも負けじと追加4枚をポットに加える。
すでにポットには73枚のチップがある。
ギルパーニャの残りチップ、73枚。
このゲームに勝てば持ちチップは2倍となるわけだ。負けるわけにはいかない。
「ターン、4枚目です」
ディーラーの開いた4枚目のカードは……♠のJ。
(……来た、ツーペアだ!! よし、ここで揺さぶりを掛けてみるよ。果たしてコートのしつこさが、本物の勝負師なのか、それとも偽物なのか……!!)
「チェックするよ」
ギルパーニャはチップの賭けを行わないチェックを宣言。
「ベット! チップ12枚」
コートの女はさらにレイズを宣言。
(本当の勝負師か、見させてもらうよ!!)
「――オールイン!!」
ギルパーニャはなんとオールインを宣言する。
オールインとは、自分の残りチップ全てを賭ける宣言。
すでに降りたプレイヤーは、ギルパーニャのオールイン宣言に思わず目を丸くしていた。
それはコートの女だって例外じゃない。
「……どうしたの? オールインって言ったんだけど?」
ギルパーニャの残りチップは73枚。これに勝負してくるのかどうか。
後ろで見ていたフレスも思わず息を呑む。
いや、それどころかギルパーニャのオールイン宣言を耳にした者が次々と見物に来ていた。
「どうするの? コール、する?」
「クッ……、フォールドよ……!!」
周囲の雰囲気に呑みこまれてしまったコートはついにフォールドを宣言。
全員がゲームを降りたということで、ギルパーニャはポットの貯まった85枚を獲得し、残りチップは158枚となった。




